自分を取り戻すためにはときには逃げていいし、全てを破壊して、解体して、リセットしてから一つ一つ組み直せばいい/『雨の日は会えない、晴れの日は君を想う』
ジェイク・ギレンホールが演じるデイビスが主人公の映画です。妻が突然死んでしまい、悲しいはずなのに涙すら流すことができない。お互いに関心がない結婚生活を送っていたことに気付き、無感情の冷たい人間だと妻の家族から罵られてしまいます。
やがて心は限界に近づき、突然狂ったかのように時計を壊し、冷蔵庫を壊し、身の回りのありとあらゆるものを解体し始めます。
通りがかった家の解体にも勝手に参加し、妻と暮らした自分の家まで破壊しようとする。ジェイクの狂気的な演技が痛々しいほどに胸を締め付けます。
主人公は愛する人の大切さを失ってからはじめて気付く。忙しさにかまけて、感じることも、楽しむことも哀しむことも忘れていた。日常生活で気をとめなかったひとつひとつの出来事、まっすぐ感じることを、休むことで受け止めることができるようになる。
そうして、日々の中に妻の痕跡を見つけた彼は、ラストに重大なことに気付きます。
自分を取り戻すためにはときには逃げていいし、全てを破壊して、解体して、リセットしてから一つ一つ組み直せばいいんだ。心にグッと突き刺さり、ずっと余韻に浸っていたくなる、破壊と再生と愛の映画です。
セックス・ドラッグ依存症のミッキーと、愛に飢えているけど自分を格好良く見せたいガス。スマートフォンを通じて描かれる、現代らしい恋愛模様/『LOVE ラブ』
元カレが忘れられないセックス・ドラッグ依存症のミッキーと、愛に飢えているけど自分を格好良く見せたいガス。
自分自身の悩みを抱えているふたりはとても傷付きやすく、失敗を繰り返してきた過去の恋愛経験や、自分自身のコンプレックスなどの問題に頭を悩ませていて、「好き」という感情だけでは恋人同士にはなれない男女の姿、現代らしい恋がとてもリアルに描かれています。
ミッキーは自分の問題に向き合うためにグループセラピーに参加し、ガスと連絡を取り合わないことを決意します。
だけど、メッセージが来ないことが分かっていてもひたすらスマートフォンを見つめるし、話題を探してしまうし、相手のSNSを頻繁にチェックする。不器用なふたりだからこそ、スマートフォンが重要なコミュニケーションツールになっています。
多くの共感がこのドラマには詰まっていて、ガスとミッキー以外の登場人物たちもみんな問題や苦しみを抱えています。
どんなにがむしゃらでも、美しくなくても、劣等感を抱えていても、誰かを愛したい、大切にしたいと思う気持ちは同じだし、甘い体温に触れることで心が癒されることもある。それは悪いことじゃない。
自分の問題に向き合ったり、正直に生きることで同じ苦しみを抱えた相手と出会えることもある。そして、誰かと痛みを分かち合って、幸せを掴むこともできる。
お互いが未熟であっても、弱さを見せつけあいながらも手を取り合って道を歩んでいけるし、支え合うことが愛なんだと、誰かを愛することの真実を伝えているドラマです。
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