いつも体だけが日々に合わせて無限に働いて、心だけがずっと前から同じ場所に置きっ放しの感じだ。
「もっと、もっと休みたい」。
どんなに時間があってもその気持ちは拭えない。ときどき、周りとか、社会のペースについていけなくなる、けれど、人に迷惑はかけたくない。だから休める時にしっかり休む、やる時はちゃんとやる、そのバランスが大事。頭では分かってる。
人は知らず知らずのうちに自分なりの対処法を見つけていく。それでも、しんどさ、痛み、悩みはどうしても心を静かに蝕んでいく。
映画やドラマには、心がぽっきりと折れた主人公が自分を見つめなおすことで素直になれたり、自分らしく生きるためにしっかりと休むことを選択したり、他人と悩みを打ち明けあうことで成長するような作品が多くあります。
そこで、自分らしく生きるために一息つくことや、立ち止まって自分や周りを見つめることの大切さなどを教えてくれた、わたしを助けてくれた作品を今回は紹介したいと思います。
※2019年10月8日(火)現在、Amazon Prime Video、Netflixで配信されているものを掲載しているため、配信が終了する可能性がございます。
生きていく上で誰しも感じたことがあるような孤独。自分自身がフリーバッグになったかのようにその痛みが伝わってくる/『Fleabag フリーバッグ』
ムダ毛処理とセックスの話を主人公がカメラに語り掛けることで始まるオープニングの約1分後、ベッドシーンに突入して過激な台詞を吐き、ドラマは幕を開けます。
皮肉屋で自由奔放、自分自身を冷静に観察して自虐をする独身女性のフリーバッグが主人公。演じるのは本作の製作・脚本も務める女優のフィービー・ウォーラー=ブリッジです。
切なさ、疎外感、染み付いてしまって取れない家族との確執など、フリーバッグの問題や苦しい過去にフォーカスしながらも、エッジの効いた台詞、巧みなストーリー進行、イギリスらしいダークでシニカルな笑いなども効いていて、目が離せなくなる面白いドラマです。
「誰にも理解されない寂しさ」「周囲の人たちが自分を置いてどんどん先に進んでいく」「不器用な人間は器用な人間に苦しめられる」
生きていく上で誰しも感じたことがあるような孤独。まるで自分自身がフリーバッグになったかのようにその痛みが伝わってくる。
頼りたい家族もなんか狂ってるし、もう自虐してどうにか笑うしかない。
それでも不思議なことに、このドラマから感じるのは絶望ではなくて、センス抜群の毒舌、自由奔放さ、美しさを持ったフリーバッグに羨ましさすら感じます。
「幸せな生活を願うほどうまくいかない! それでも、自分の意思で人生を進めていかなきゃいけないのって面倒くさい!」
だったらもう、とことん生きることに疑問を持っていいし、遠回りしてもいい。頑張るための理由を探さなくてもいい。そう思えるドラマです。
夢で成功すること、現実的な決断をすること。ジレンマの中でも自分を貫いているフランシスの姿が輝いて見える/『フランシス・ハ』
ニューヨークが舞台。とにかく不器用で大雑把、親友に依存してる27歳のフランシスのモラトリアムを描いた映画です。
ルームメイトの親友ソフィーと夢を語り合うけれど、お互いに何者にもなれずに地に足が着いてない。安心できる誰かにしがみついてばかりで、変化を受け入れられない状況。そしてある日、ソフィーが家を出ていってしまいます。
フランシスは家賃も払えずに様々な場所を転々としますが、そのどれも身の丈に合っていない、夢を捨てられない、やっぱり大人になれない。
それでも、いろんな人に出逢い、自分はどのようにこの世界に身を置くか、これから何をしたいのかを考えながら、不器用で、鈍感で、何をしても中途半端だったフランシスが、自分なりの居場所を見つけ出すことになります。
そして、ソフィーも理想的で絵に描いたような幸せいっぱいの生活を送っているわけではないと気付く出来事が起こります。
『フランシス・ハ』という映画の名前の由来は彼女の生き方を表しているので、気になった方は是非この映画のラストを観てほしいです。人に認められるようなことを成し遂げたいし、夢で成功したい。けれど、人は誰だって現実的な決断をしたり、妥協をしなくてはならない。そんなジレンマの中でも自分を貫いているフランシスの姿は輝いて見えます。
「夢を見ることを忘れないでいたい」。そう思える映画です。
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