政治1年生のための消費税。長田杏奈&かん(劇団雌猫)が経済学者に取材

政治1年生のための消費税。長田杏奈&かん(劇団雌猫)が経済学者に取材

消費税10%、今から止められないんですか?

インタビュー・テキスト:かん 撮影:疋田千里 編集:守屋佳奈子、野村由芽
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ジワジワ上げる作戦で、まんまと消費税慣れ!?

あんな:今回の10%増税にも反対の声は多少あったけど、そもそも初めて日本に消費税が導入されたときって、もっと反対の声が大きくなかった? 消費税反対のハチマキ巻いた人が激怒している様子を、ニュースで見た。

かん:私は記憶ないです。

まつお:消費税法は1988年に成立しましたね。

かん:生まれてなかった。

まつお:10%になるまでに3%、5%、8%と騙し騙し上げてきました。1988年の消費税法成立前には大きな反対運動がおこったんですが、当然徐々に反発の声は小さくなっていく。

あんな:じわじわ慣れさせられてる!

かん:そもそも10%増税の話、いつから本格的に話してたのか私は全然知らなかった。夏の参院選で慌てて調べ始めたら、野党は増税反対って言ってるけど、与党支持者の中には「増税を決めたのは(現野党である)旧民主党政権じゃないか!」って言う人もいて混乱した。

まつお:確かに、8%および10%への増税は2012年6月、当時政権を担っていた民主党と、自由民主党・公明党との三党合意で決まりました。高齢化を支えるための社会保障の財源をまかなうため、という名目です。

かん:当時選挙でその辺の内容は国民に問われたのかな? 私はまだその頃政治に関心を持っていなかったので全くわからない……。後悔先に立たずってこういうことか~。悔しい……。

まつお:実は民主党は、2009年の衆議院総選挙のときに「4年間消費税を増税しない」ことをマニフェストにして、選挙に勝ったんですよ。

かん:えっ、じゃあ増税を決めたらだめじゃないですか。民意伝えたのに裏切られた……。

あんな:あれ……ということは、民主党から分裂した立憲民主党や国民民主党の中には当時増税を押し進めた人たちがまだいらっしゃる……?

まつお:そうですね。若手議員など一部は反対しているかもしれませんが、例えば立憲民主党なんかにも、当時合意に立ち会った責任者が残っている。人によっては煮え切らない状態、党の中でも一枚岩じゃないですよね。

あんな:そもそも三党合意から増税実施まで7年も時差があって、状況も変わってるよね。どうしてすぐに増税しなかったんですか?

まつお:そのころは、2008年に起きたリーマンショック(*3)の余波もあり本当に景気が最悪で。

*3……アメリカの大手証券会社・投資銀行リーマン・ブラザーズの破綻が引き金となった世界的な金融危機と世界同時不況のこと。

そんな時に増税したら世論の反発は必至、ということでさすがに10%にするのは控えていたんです。8%への増税は、2014年に実施しましたね。

かん:たしかに、景気が悪い時に増税をすると、買い控えが起こってさらに景気が悪くなるって聞いた。

まつお:はい、「悪景気の時は増税しない」が経済政策の定石です。じゃあなんで日本は、公約を破ってまで2012年に増税を決めたのか。いろんな説があるんですが、ここでは2008年のリーマンショックから2012年の三党合意(増税決定)までをもう少し詳しく説明しましょうか。

まつお:リーマンショックによって発生した恐慌に対し、世界各国で国のお金を出して景気をよくしようとしたんですね。その結果として財政赤字が膨らむ。すると今度は「財政赤字はよくない、問題だ」と世界中で言われはじめました。例えばギリシャなんかは、国際ブルジョワジー(世界銀行・IMF)に圧力をかけられて、年金や医療費をカットしてまで財政赤字削減に躍起になっていました。

あんな:あれ、ギリシャってその後?

まつお:はい。無理な緊縮財政がたたって、経済破綻しましたね。自殺者もいっぱい出ました。

かん:言うこと聞いたのになんなんだ! IMFの代わりに謝るわ、ギリシャごめん……。

あんな:つい最近も、IMFの専任理事が来日して「2030年までに消費税を15%に引き上げるべし」とか圧かけてきたし! 当時の日本も、国際ブルジョアジーにシメられて、増税路線に踏み切ったんですか?

まつお:日本が三党合意に踏み切ったのもちょうどその頃で、社会保障費の確保とかもっともらしい理由をつけられていますが、実際は国際ブルジョワジーの圧力に屈した部分も大きかったと思います。

日本国内でもその頃、財政破綻を心配する声が大きくなっていましたが、そもそも、日本政府の借金は返さないと国が破綻するようなものではありません。国債の4割以上は今、日本銀行(日銀)が持っていますが、日銀の株の55%は政府のもので、いわば日銀は政府の子会社のようなものです。つまり日本政府が自分で自分から借金をしているようなものですから、ほぼ返す必要がない。中央銀行の持っている国債は中央銀行の出したおカネの裏付けみたいなものだから、むやみに返すとその分おカネが消えてしまうので、返さないのが原則なのです。国の銀行をもっていないギリシャの状況と比較しても意味がないんです。

詳しくは記事(マガジン9/【薔薇マークキャンペーン×マガジン9】考えよう、経済のこと。松尾匡さんに聞く「反緊縮」ってなんですか?(その2)日本の「財政危機」論は本当か?)や『左派・リベラル派が勝つための経済政策作戦会議』(青灯社)などに書いています。

かん:そして三党合意から7年後のいま、ついに消費税が10%に上がった……。

あんな:でも今だって景気はそんなによくないですよね? 肌感としてはおまんま食べるのに精一杯って感じる。

まつお:実は数値上は7年前のあの頃よりはマシになってるんですよ。就業者数は史上最高ですし。

あんな:そうなの!?

まつお:あの頃よりはマシというだけですけどね。とはいえ2018年の厚労省の調査(*4)では、生活が苦しいと答える人はまだ約6割になっています。その中で今消費税を上げることが適切なのか、ということですよね。

*4……厚生労働省「平成30年 国民生活基礎調査」より

<ポイント>
Q.「消費税10%にするっていつから決まってたの?」(あんな)
A. 「2012年、民主・自民・公明の三党合意で決まりましたが、旧民主党は“増税しない”という公約に違反して三党合意したので、民意は問われていないとも言えます」(まつお)

PROFILE

長田杏奈
長田杏奈

ライター。美容をメインに、インタビューや海外セレブなどの記事を手がける。趣味は花鳥風月。モットーは「美容は自尊心の筋トレ」。

かん

1989年、兵庫県生まれ。書籍『浪費図鑑』等を制作するオタク女子4人組「劇団雌猫」メンバー。11/6発売の新刊は『誰になんと言われようと、これが私の恋愛です』(双葉社)。K-POPアイドルSEVENTEENのジョシュアと宝塚歌劇団の芹香斗亜を応援中。消費税のない世界で生活をしたことがないので正直0%はピンとこない。それでも10%は多いと思う。

松尾匡

1964年、石川県生まれ。立命館大学経済学部教授。専門は理論経済学。著書に『この経済政策が民主主義を救う』(大月書店)、『ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼』(PHP新書)、『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう』(共著、亜紀書房)など。「反緊縮」の経済政策を公約に掲げた候補者を認定する「薔薇マーク」キャンペーン(Twitter: ‎@the_rose_mark)を実施。

INFORMATION

書籍情報
『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう』

著者:ブレイディみかこ、松尾匡、北田暁大
2018年4月25日(水)発売
価格:1,870円(税込)
発行:亜紀書房
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