消費税の増税は財務省が主導。経済学者と、政治家や省庁との繋がりは強くないので、専門家が十分に議論を尽くしているわけではない。
かん:経済政策って考えてみたこともなかったけど、他の説も知りたくなった!
あんな:でも、自分でいろんな説を理解して判断するのはハードルが高い気もする……。だからこそまつお先生をはじめとして、いろんな学者さんが日々経済について真剣に考えられてると思うんですけど、現場の政治家にはどうやって届くんですか?
まつお:本に書いたり、政治家にいっぱい手紙書いて送ったり、一生懸命発信し続ける感じですね。とある党に「なぜあなたたちが負けたのか」なんてレポートを送りつけたりもしました(笑)。
かん:オタクが推しの運営にご意見メール送るのと、やってることは近い(笑)。
あんな:意外と地道……。てっきり、経済学者と政治家の間には太いパイプがあるものかと思ってました。
まつお:いや、そんなことはないですね。僕も色んな人に何年も経済政策の提案をしつづけていますが相手にされなくて。2016年になって、唯一話を聞いてくれたのが山本太郎さんでした。
かん:ある日突然DMがきたのかな……ドキドキ。
まつお:NHKの『日曜討論』っていう番組を見てたら、やけに自分と意見の合うやつがいるなと。ホームページに「山本太郎は悪い本(松尾匡著『この経済政策が民主主義を救う 安倍政権に勝てる対案』大月書店、2016年)でも読んだんでしょうか」って書き込んだら本人からメールがきたんですよ。「悪い本読みました」と。
かん:ヒュ~相思相愛。
まつお:そもそも僕みたいに経済政策を提案する経済学者もあまりいません。今の経済学は蛸壺化、専門化が進んでいて、ちょっと自分の専門を離れると最新の学説なんか全然わからない。例えば工学部だって、機械系から遺伝子工学までさまざまでしょう。あれに近いですね。
あんな:自分の専門から離れた領域には口を出しづらいんですね。まつお先生みたいに広い話をする方がレアなんだ。
まつお:それこそ専門ではないのでよくわかりませんが、消費税の増税は、財務省や党の税制調査会が主導して筋書きをしていると聞きます。それで行政や省庁、党から、たまたま専門と合致した質問がくれば答える。政治家だけでなく官僚も日々特定の分野における経済政策を考える中で、困った時に僕たちみたいな経済学者に聞きに来るんです。
かん:『シン・ゴジラ』のアレみたい。
まつお:有識者会議ね(笑)。
あんな:経済学者さんというと、どうしても「御用学者」を想像しちゃう。
まつお:もちろん御用学者もいますよ。政治家とお友達みたいな感じで、都合のいいことばっかり言う人も中にはいる。
あんな:権威づけ係。かっこわる!
まつお:一応賛成派と反対派をそれぞれ呼んで意見を聞いていると思いますが、僕なんかは呼ばれるはずがない。官庁にとって都合が悪いので(笑)。
かん:この前、有識者会議で政府に異論を述べた人の発言が議事録から削除されてたニュース(KYODO/政府への異論、議事録から削除)読んだ!
あんな:奇跡的に呼ばれても、発言を削除されちゃいそう。「都合の悪い経済学者」ってプロフィールに書いときましょう。でもさ、都合のいい御用学者しか呼ばれないなら、財務省には、学者に頼らなくても経済のことは俺がいちばんわかってらぁ! みたいなエキスパートがいるってこと?
まつお:どうなんでしょう。でも財務省には法学部出身者も多く、必ずしも経済の専門家ばかりではないと思います。
かん:国を運営してる人たち、てっきり各分野のエキスパート揃いだと思い込んでた……。自分の先入観が怖い。
まつお:さっき山本太郎さんの話ができましたけど、『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう』(ブレイディみかこ、北田暁大との共著、2018年、亜紀書房)という本を出したらそれまでにない反響があって、政治家から連絡をもらうことも増えているんです。うれしいです。
あんな:本が話題になったりすると、政治家に声が届くことがあるんですね。本を読むことも応援につながるのか。
かん:世の中の経済学者さんを全面的に応援したくなってきた。頑張れー!!
<ポイント>
Q.経済政策って誰がどこで決めてるの?(かん)
A.消費税の増税は財務省が主導。経済学者と政治家や省庁との繋がりは強くない。専門性を持った人が十分に議論できているわけではない(まつお)
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