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能町みね子とジェーン・スーが語る「結婚と恋愛は切り離して考える」

能町みね子とジェーン・スーが語る「結婚と恋愛は切り離して考える」

結婚のシステムを「型にはまる」という視点で考察

2020年1・2月 特集:これからのルール
テキスト:阿部洋子 撮影:中里虎鉄 編集:野村由芽
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ふたり暮らしは奥が深い。(ジェーン・スー)

能町:スーさんは以前会ったときから、変化はありましたか?

スー:大変化があったんです。いままでは私が外で働いて、彼が家事担当、いわゆる専業主夫という形の同棲をしていたんですけど、彼が仕事をはじめまして。ふたりの関係性として、第一形態がお互いバラバラに住んでいて、第二形態がふたり暮らしになって彼が完全専業主夫。それがここにきて、第三形態に入ったんです。

能町:そうなんですか! パートナーはお忙しいんですか?

スー:予想以上にいきなり忙しくなっちゃって。今は私がメインで家事をやってるかな。ふたり暮らしは奥が深い。

能町:その変化によって、仲が悪くなったり、喧嘩したりはしないですか?

スー:私がひとりで暴れていますね。相手に対しての愛情って、諸刃の剣だなとも改めて思いました。というのも、相手への不満を非常に細かく噛み砕いていくと、結局ぜんぶ「かまってよ」になるわけです。「かまってよ」にいろんな理由をつけて、別の言葉で伝えようとするわけですけど、向こうが今本当にかまっていられない状態なのは分かるので、いつまで菩薩モードを続ければいいんだろうと……。

能町:じわじわと不満が溜まっていきそうな気がしちゃいますね。

スー:相手の商売が軌道に乗って、毎日ほとんど顔を合わせない状態が続いたとしたら、「あれ、これ一緒に住んでる意味がないのでは?」ってなりそうで、危ないと思っていて。

もともと彼はほとんど野心がない人なんですけど、誰かに求められたら頑張るタイプの人ではあるんですよ。仕事で必要とされたら、意識の多くがそっちに持っていかれることは、全然あるわけです。そうなったときに、二人が一緒に住む意味というのをまた新たに問い直さなくちゃいけなくなるんですよね。

能町:ふたりのなかでなにかしら求めあえる関係性がないと一緒にいる意味がないですよね。それにしてもすごい変化ですね……。

スー:びっくりしました。どちらかが体調を崩すとか、私の仕事がなくなるということはイメージしてたけれど、相手の仕事が私以上に忙しくなって、同じ家に住みながらお互いの助けがほとんど要らなくなる状態は想定外でした。世間的に見れば単なる共稼ぎなんですけどね。

能町:私も病気のことは考えますが、それ以外で今の自分たちの形態がどう変わっていくかをあまり想像してないんですよ。でもスーさんたちの場合、経済状況は格段によくなるわけじゃないですか。いい影響はないですか?

スー:子供でもいればお金の使い道もあるんでしょうけど、今の状況だと向こうは仕事場の近くにセカンドハウスを借りたいっていうふうになるんじゃないかなあ。そうすると、そこでやっぱり試されるよね。「愛」みたいなことが。

能町:愛か……。

スー:愛っていうかね、なんかね……。

能町:絆?(笑)

恋愛というものが結婚に向いてない。(能町)

能町:でも、恋愛というものが結婚に向いてないというのはすごく思うんですよね。

スー:わかります。結婚と恋愛は切り離して考えてもいいものだと、中年になってから思うようになりました。

能町:結婚において「相手のことが好きだからずっと一緒にいたい」っていうことが持ち上げられすぎてるなと思うんです。それが当たり前で、あたかもみんな実現できているかのように見えているけど、人口比でいったらそれをやっている人っていうのは2%くらいじゃないかなって思うんですよ。

スー:惚れた腫れたの恋愛はレジャーですもんねえ。

能町:結婚はシステム。型ですねえ。

スー:今回、パートナーと関係性の変化があって思ったのは、生活は変わっていくということ。だから、逆説的にシステムとしての結婚は有効なんだろうと。やっぱり人の気持ちなんてある程度縛っておかないと簡単にひっくり返るんじゃないでしょうか。

能町:便利だからシステムがあるのかなあ。

スー:今のシステムは不備だらけだけど、ただ、公的に人の前で「この人と家族をやっていきます」と宣言することによって生まれるストッパーだったり、支援だったりは、ある程度あるんだろうと思いますね。

人には自分の人生に節目を付けたい欲というのがあるんじゃないか。(能町)

能町:最近、そもそも人はなんで子供を産みたいんだろうということをよく考えるんです。「産みたい」や「産めない」の前の話として、「なんで欲しいのか?」という部分ですね。本能だと言う方もいますが、だとしたら弱すぎるんじゃないかと思うんですよ。もしそれが本当だとしたら、みんな産みたくてしょうがないわけじゃないですか。

スー:盛りまくりですよね。相手なんか誰でもいい! ってことになっちゃう(笑)。

能町:そうそう。本来そうなるはずなんだけど、全然そんなことないし、産んでない人はたくさんいる。だから、結局なんで子供が欲しいのかというと、自分の歴史の中にバン! ってインパクトを与えるためなんじゃないかと思うんですよ。人には自分の人生に節目を付けたい欲というのがあるんじゃないかな。

スー:いつもの生活に少し飽きてきたところに子供ができると、また人生が変わった、みたいなことになるんですかね。子供がいると、学校の新学期や季節の行事を通して親の人生も区切られますしね。そうするとメリハリが出そう。

能町:そう考えると、私にとっては猫も結婚も同じような効果があることなんですよね。大人になると無理やりにでも自分で区切りをつけないと、誰も区切ってくれないから。多くの人が不自由を求めてるんだろうなって思います。

PROFILE

能町みね子
能町みね子

北海道出身。近著「雑誌の人格」「雑誌の人格2冊目」(共に文化出版局)、「ほじくりストリートビュー」(交通新聞社)、「逃北」「言葉尻とらえ隊」(文春文庫)、「ときめかない日記」(幻冬舎文庫)など。ほか雑誌連載多数、テレビ・ラジオにも出演。

ジェーン・スー
ジェーン・スー

コラムニスト/ラジオ・パーソナリティ/作詞家
東京生まれ、東京育ちの日本人。現在、TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」(月~金11:00~)のパーソナリティを担当。2013年に発売された初の書籍『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)は発売されると同時にたちまちベストセラーとなり、La La TVにてドラマ化された。2014年に発売された2作目の著書『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』は第31回講談社エッセイ賞を受賞。毎日新聞やAERAなどで数多くの連載を持つ。最新著書『これでもいいのだ』(中央公論新社)が発売中。

INFORMATION

書籍情報
書籍情報
『結婚の奴』

著者:能町みね子
2019年12月23日(月)発売
価格:1,650円(税込)
発行:平凡社
平凡社サイト:『結婚の奴』

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