世界各国のCOVID-19への向き合い方。混沌した世界を生き抜くために/菅原万有

世界各国のCOVID-19への向き合い方。
混沌した世界を生き抜くために/菅原万有

韓国、台湾、ニュージーランド、ドイツの共通点

テキスト:菅原万有 編集:竹中万季
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対応のスピードとリーダーの決断力、女性のリーダーの活躍。これらの国に共通することは?

WHOはパンデミックの抑え込みには、都市封鎖などに加えて徹底した感染者の発見が必要だとしていますが、パンデミックの対策のお手本とされる各国に共通するのは、対応のスピードとリーダーの決断力、そして、女性のリーダーの活躍が圧倒的に目立つことが挙げられます。

もちろん、感染者数の抑え込みに成功した国のリーダーと性別に因果関係はありません。しかし、今女性が世界で圧倒的なリーダーシップを発揮しているという事実が示唆するのは、一般的に女性がリーダーになるためには男性よりもはるかに高い基準を求められる場合が多いという現実です。

日本でも、東京医科大を含む複数の大学の医学部医学科の一般入試で女子受験者を一律減点し、合格者数を抑えていたことが発覚しましたが、まだ世界中の女性がトップの立場に上り詰めるためには男性の何倍もの努力をしなければいけなく、過剰な資格を持っていなければいけないという過酷な現実があります。

各国のリーダーが指導力を発揮するなか、日本政府はどうでしょうか。今、私たちが立ち向かっている脅威はウイルスですが、インバウンド消費欲しさに観光客を招き入れ、週末のみの外出自粛呼びかけなど厳然と予想された事態に対して判断を先送りし、適切な対策を取らなかった日本政府の行動の結果の延長線上に現在の状況があります。

「感染=自己責任」ではない。相手の状況への想像力を働かせることが必要

日本政府の取り組みについて、「どうして日本は『人命が最優先』とならないのか。どうして経済が優先されてしまうのか。衛星放送のニュースを見ると、企業の決算期が終わってから非常事態宣言を出すほうがいいだとか、論点がものすごくずれているように感じます」と米国で感染症専門医として勤務する斎藤孝氏が述べていますが、他国と比較しても論点がかなりずれていることは明らかです。

この疑問に対して、香港メディア「アジア・タイムズ」は、日本は初動からしてまずく、2月に起きたクルーズ船ダイアモンド・プリンセス号でのクラスター発生は世界中の人々に強烈な悪印象を残したと述べています。日本政府はなかなか有効な対策を打ち出さず、船内の感染者数が増加し、さらに下船した乗客を公共交通機関で帰宅させ、市井にまで感染が広がるという致命的なミスをおかし、ワシントン・ポスト紙は「新型コロナウイルスに対する日本政府の対応は、スローモーションで起こりつつある電車の衝突事故を目撃しているようなものだ」と厳しく非難しました。

「アジア・タイムズ」ははずさんな対応を重ねる政府とそれを静観する国民という構図を見て、2011年に起きた福島第一原子力発電所の事故を思い出したと指摘し、周辺国が日本の状況を見てパニックに陥っているにもかかわらず、大きな声をあげない国民に対して、世界中の人々が違和感を覚えたとも述べています。日本で「若者の政治離れ」と言われて久しいですが、今回のパンデミック対応の他国とのズレは、若者に限られたことではなく、日本社会に蔓延する政治的無関心の産物だと言えるでしょう。

日本はまた、先進国の中でも格段に国民に感染の「自己責任」を押し付けているように見え、安倍首相は今回の新型コロナウイルスの対応で、「国に頼らず自分で何とかしなさい」という新自由主義的な考え方をより明らかにしています。

今、イギリス保守党のボリス・ジョンソン首相でさえ、サッチャー式の新自由主義改革が間違っていたと認め、徐々に「コロナウイルス自営業収入支援スキーム」と名付けられた支援対象を拡大し、賃金や所得の8割を補償し、社会の連帯に舵を切っています。米国も申請手続きなしで政府が対象者に小切手を郵送していますが、安倍政権は東京オリンピック開催の一点張りに賭け続け、検査体制も治療体制も整備せずに「お肉券」の導入や、週末のみの不要不急の外出自粛の呼びかけ、布マスク配布に莫大な補正予算を掛けるなど的外れな施策を検討し、国民の生活を守るための現実的な施策が考えられないまま、無為のうちに2か月も空費しました。

日本政府の家計支援の手薄さ、そして国家予算の使い方が捨て金にされるのを見て、世論は当然ながら(*1)、自民党からも批判が噴出しています。これから日本に疲弊し困窮する人があふれるとしたら、それは人々の「軽率」な行動のせいではなく、公金という認識がない為政者と未熟な政治の責任です。

今、外出自粛などの協力が求められていますが、一方で「家の中にいたくてもいられない人」もいます。私たちは個人に目くじらをたてる前に、「感染=自己責任」という新自由主義的理解を飲まずに、相手の状況への想像力を働かせることが必要とされます。それは今の政権に欠けていますが、本来何よりも大事なものなのではないでしょうか。

*1:各国の世論調査機関が加盟する「ギャラップ・インターナショナル」が実施した調査で、新型コロナウイルス感染拡大に「自国政府はうまく対処していると思うか」との質問に「思わない」「全く思わない」と答えた日本人は合わせて62%に上った。「とても思う」「思う」は23%にとどまり、回答した29か国・地域中28位だった。

PROFILE

菅原万有
菅原万有

トロント在住のアーティスト。1994年東京生まれ。10代を英国で過ごし、早稲田大学国際学部卒業後、カナダに移住。現在オンタリオカレッジオブアートアンドデザイン美術学修士課程に在籍し、アジア系ディアスポラとトランスナショナリズムに関する作品制作と研究を行う。同大学で教員助手を務める傍ら、翻訳者、雑誌『Japan In Canada』の編集長兼ライター、レポーター、写真家、ビデオグラファーとして多義に渡り活動している。

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