こんにちは。グラフィックデザイナー・イラストレーターの惣田紗希です。栃木県の南部に住んでいます。町を囲む山々は美しくて眩しいツヤツヤの新緑であふれていて、ものすごい勢いと密度で咲いているツツジやモッコウバラを見かけると、身を埋めたい衝動に駆られます。社会がどれだけ混乱していても、自分の過ごしている時間が伸びたり縮んだりしているように感じても、きちんと季節は巡っている。そういうことを忘れないでいたい。

みなさん調子はいかがでしょうか。わたしは4月頭ごろまで正直うつに近い状態でした。ウイルスや政治がもたらす混乱や不安に、個人的なかなしいことが相乗して参っていました。日々刻々と変化はしているけど国民の生活や医療の現状への想像力が足りていないと感じる政府の対応や、大きな進展が見られない会見に振り回されたり、情報を追うのもしんどい。仕事は世に出ることなく延期になる案件が続き、仕事や金銭面の不安が増して生きていく自信も気力も擦り減る。頑張ろうと言われても頑張れない。前向きでいた方がいいことは分かるけど自分の内面が体裁に追いつかない。見えない敵、戦い、打ち勝つ、といった表現は応戦しないといけない雰囲気がちょっともう無理。後ろ向きなことばかりじゃなくて前向きに楽しいことを考えようと言われても、ここまでいろんな人が追い込まれたり環境を変えざるを得ない危機的状況において、本来国が守るべきわたしたちの生活が、補償もないまま自助努力頼りにされてしまう根本的な問題に向き合わないのは違うのではないかと思ったり。

根本的ないちばんの脅威はウイルスだけど、その影響で揺れる社会の軋みとかズレによって、想定していたのとまったく違う方向から受ける打撃は、この状況が続く限り誰にでも何かしらのかたちで訪れるのではないかと思う。個人的なことになればなるほど表面化しづらくなるだけで、すでにあらゆる問題が各所で起きているのかもしれないし。

そういう打撃から受けたかなしさや不安ややるせなさや弱さは、自分のものとして一旦受け入れていいと思うのです。わたしはしばらく寝るしかできない自分をゆるしたり、カップラーメンを食べるだけでもめちゃくちゃ偉いなあと生活のハードルを下げまくったり、周囲から受ける様々な声のボリュームを一旦下げて、外側じゃなくて自分の内側にだけ向き合って、気力が戻ってくるまでじっとしてました。

弱ってくると自分のかなしさはどういう類のかなしさなのか、誰にどう伝えればいいのか、はたまた誰かに伝えていいものなのか、自分でもよくわからなくなります。わたしがそうなってしまった当事者なのですが、可能であれば、つらいとかしんどいとか疲れたとか一言でもいいので吐き出しておいてください。それを誰かに伝えることができたら、それだけでも、詰まっていた穴から風が抜けるような救いになる気がします。She isさんが様々な声を集めるために作ってくれたこの場に甘えてもいいし、SNSでもLINEでもいいし、自分しか読まない日記でもなんでも。前向きでいられなくてもいいから、弱さを表明する勇気と、それを肯定する強さをないがしろにしないように。

わたしはそのじっとしていた時間、ebookjapanで10巻まで無料公開されてた漫画『フルーツバスケット』をたまたま読んだのですが、登場人物の弱さを弱いまま受け入れそれぞれが救われていく物語に、自分の弱さまでも救われる気持ちになり、そのまま全23巻まで買って読んでやや元気になりました。

なんでこんなすごい漫画読んでなかったんだ！　と思い猛烈検索したのですが、14年も前にすでにこの漫画に救われてた人はたくさんいたのですね。しかも世界中に。ていうか今まさに再びアニメ化されてるし。知りませんでした。猛省。ebookjapanさん、高屋奈月先生、ありがとうございます。

とはいえ化粧もせず睡眠しまくっていると肌のハリがよくなるというボーナスステージに突入したり、かと思いきや、食料品の買い物に出かけて店の入口にあるアルコールで手を消毒するたびに紙やすりで削ったかのように荒れる手を見てはまたどうしようもない気持ちがぶり返したり、へろへろの一喜一憂を繰り返しています。