いまから約150年前、19世紀アメリカ・マサチューセッツ州に生きる四姉妹の姿をみずみずしく描いたルイーザ・メイ・オルコットの『若草物語』。国や世代を超えて現在も愛される古典小説が、『レディ・バード』のグレタ・ガーウィグによって映画化され、『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』の邦題で6月から日本公開されています。
幸せな結婚を望むメグ、作家を夢見るジョー、ピアノが得意なベス、画家を夢見るエイミーの四姉妹を演じたのは、エマ・ワトソン、シアーシャ・ローナン、エリザ・スカンレン、フローレンス・ピュー。マーミーと呼ばれる姉妹の母親役にローラ・ダーン、マーチ伯母役にメリル・ストリープ。それぞれに異なる、はつらつとした個性を持つ女性たちがガーウィグ監督のもとに集いました。
She isでは、編集部とMembersのみなさまがオンラインで語らう会『She is MEETING』の企画「She is Cinema Club」の取り組みとして、7月1日の夜に本作『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』について語り合うイベントを開催しました。その模様をお届けします。
女性が物書きになることが当たり前でなかった時代。四姉妹の劇に創作の原点を思い出す
原作の『若草物語』は姉妹の子供の頃のエピソードから、次第に彼女たちが成長していく様子が綴られますが、グレタ・ガーウィグの脚本では時系列をあえて一直線にせず、また大人になった登場人物が過去を回想するという構成でもなく、過去と現在のタイムラインを行き来しながらストーリーが展開していきます。
ジョーの作家としての原点は、子供の頃に姉妹で演じたオリジナルのお芝居。ジョーが脚本を書き、姉妹が演じ、近所の子供たちの前で披露していました。マーチ姉妹の少女時代のきらめきを象徴するかのようなこのシーンについて、『She is MEETING』の参加者からは「自分も小さい頃にいとこたちと親や親戚の前で、自作のプログラムを作って出し物をしていたことを思い出した」という声があがりました。
また「全校生徒50人くらいの小学校で、みんなで野菜を育てたり、自作の劇をやったりしていた。その経験があったから、自分の頭で考えたり、想像することができるようになったのだと後から気づいた」と、ジョーのような創作の原体験を思い出す人も。映画では、全てが可能になりそうなエネルギー溢れる少女時代と、その時間が終わりを告げ、それぞれの現実を前に葛藤する現在が交互に映し出され、失ったからこそわかる子供時代の尊さを強調しているようでした。
子供の頃の思い出に関連して、「小さい頃、自由に振る舞えたのは周りの環境のおかげだった」「勉強したり、地元から働きに出ることができたり、自分は恵まれていたと気づいた」というように、家族や周りの人に改めて感謝の気持ちを抱いたという感想もありました。映画では、娘たちの個性を尊重して対等な目線で接する母親であるマーミーが、穏やかな表情の下に怒りや複雑な感情を抱えているという一面も描かれます。
「あの時代に、『女はそんなことをするべきでない』と言われないことがどんなに幸せなのかと思った」とは、『She is MEETING』のある参加者の感想です。女性の権利が制限され、社会通念や仕組み、育った環境などによって、ジョーのような作家の道を進むことはおろか、職業としてその夢を描くことすら簡単ではなかった時代。声なき声を発していた女性たちがいたであろうことも忘れたくありません。
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