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林央子とエレン・フライスのParallel Diaries(2020年6月)

友人との口論と満月の関係、緑色のカエルの夢

連載:林央子とエレン・フライスのParallel Diaries
テキスト・撮影:林央子、エレン・フライス 翻訳:林央子 編集:竹中万季
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2020年6月7日(日)

エレン  6月7日(日) 14:30

昨夜はほとんど眠れず、今朝はマーケットに行ったのでひどく疲れた。11時から友人たち数人が家に来るので、急がなければならなかった。

今日は村の広場に木製パレットでつくった家具を持っていって、市が計画しているプロジェクトに反対の意思表示をしなければならなかった。この家具は、私の友人である建築家のキャロラインの監修のもと、約40人でつくったもので、私の中庭にきのう、運ばれてきた。

キャロラインが到着すると、私がドアを開けるのが遅かったというのでキャロラインに怒られ、私は驚いて返事をしたので、口論になった。そのあと、私は広場のみんなと合流し、2年前に仲良くしていたヴィクトリアに会った。彼女は私を見て言った。「だから、私たちはもう会わなくなったのよ。実際、私はあなたに腹が立っているわ。2年前のことで」と言った。私たちはそのことについて話し合って、彼女は 「もう終わったこと」だと言った。信じられないことばかりだった。この時点では私はコップ一杯の水すら飲まず、食事もしていなかったのだ。家に帰ってきて、月のアプリでチェックしてみたら、昨夜は満月で、人間関係に「嵐」を巻き起こす特別な一日だった(いつもの不眠症に加えて)!

ナカコ  6月7日(日)19:30

ジョージ・フロイドの死後、反レイシズムの書き手として注目を集めているレイラ・F・サードのポッドキャストを聴いていた。彼女の本『Me and White Supremacy(私と白人至上主義)』のポスターを目にしたのは今年3月の初めの日曜日、東ロンドンのマーケットに行こうと歩いていたときだった。ロンドンに引っ越してきてからは、なかなか自由になる時間がなくて、訪れたい場所にも出掛けられずにいたので、限られた機会の中での外出だった。路上で、とても強く訴えかけてくるポスターが視野に入った。私はそれまで「white supremacy」という言葉を知らなかったが、それが何を意味するのかは、すぐ理解できた。異文化が出会い、ぶつかり合うロンドンに、自分が引っ越してきたことを、この時強く実感した。

「Black Lives Matter」運動の中、この時撮った写真を思い出し、著者について調べてみた。彼女はポッドキャストの中で、予想される読者が白人なので、より無難に受け入れてもらえるために、本のタイトルを変えてほしいと頼まれたことがある、と話していた。しかし彼女はその、大手出版社からの要求を拒否したという。誰にとっても重要なこと、人ごとではない問題なので、あえてこの、強くつき刺さるタイトルを書名にする必要があったのだ。

PROFILE

林央子
林央子

編集者。1966年生まれ。同時代を生きるアーティストとの対話から紡ぎ出す個人雑誌『here and there』を企画・編集・執筆する。2002年に同誌を創刊し、現在までに14冊制作。資生堂『花椿』編集部に所属(1988~2001)の後フリーランスに。自身の琴線にふれたアーティストの活動を、新聞、雑誌、webマガジンなど各種媒体への執筆により継続的にレポートする。2014年の「拡張するファッション」展に続き、東京都写真美術館で行われた「写真とファッション 1990年代からの関係性を探る」展(~7/19)の監修を勤めた。同展にはエレン・フライスも招聘。現在『She is』『まほら』ほかにて連載執筆中。
Parallel Diaries

エレン・フライス

1968年、フランス生まれ。1992年から2000年代初頭にかけて、インディペンデントな編集方針によるファッション・カルチャー誌『Purple』を刊行。その後も個人的な視点にもとづくジャーナリズム誌『HÉLÈNE』『The Purple Journal』を手掛ける。また、1994年の「L’Hiver de L’Amour」をはじめ世界各国の美術館で展覧会を企画。現在はフランス南西部の町サン・タントナン・ノーブル・ヴァルで娘と暮らしながら、写真家としても活躍している。編著に『Les Chroniques Purple』(VACANT、2014年)、著書に『エレンの日記』(林央子訳 アダチプレス 2020年)。東京都写真美術館の「写真とファッション」展では新作スライドショー《Ici-Bas》を発表。

INFORMATION

連載:林央子とエレン・フライスのParallel Diaries
連載:林央子とエレン・フライスのParallel Diaries
『Purple』『here and there』の編集者が
離れた場所で綴り合う並行日記

vol.1 林央子とエレン・フライスのParallel Diaries(2020年5月)
vol.2 林央子とエレン・フライスのParallel Diaries(2020年6月)

林央子とエレン・フライスのParallel Diaries(2020年6月)

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