後閑麻里奈:自然に触れる、自分だけの小さな儀式を行う、動物と過ごす
癒やすことはあるものを元どおりに戻すことだと思う。
壊れかけた心、疲れ果てた身体、離れかけた心と身体を繋ぎ和らげていくように。
遠くの世界の輝くビーチや異国間漂う熱帯雨林には行けなくても、リビングに一輪の花を添えたり、窓から見える木を眺めたり、近所の散歩の中に、小さな奇跡は潜んでいて、そこから癒やしへの扉は続いている。
自然はいつのときも、わたしにとって必要不可欠な癒やしの源だ。
家の中に新しく迎えたアレカヤシ、
小さなベランダでゆっくり育つホワイトセージ、
春から始めた畑には、何種類も野菜やハーブが共存している。
植物の恵みとその力には、幾つ年を重ねても与えてもらってばかりいる。
土を触り、砂浜を歩くだけで身体と心の淀みが流れていく。
昔ある人に、「泣くときは木の近くや海で泣きなさい、そうしたら大地や海へと還ってゆくから」と言われ、それから私は涙や心が溢れてしまいそうなとき時、自然の中へと駆けてゆく。
大きな手をいつも差し伸べ、包み込んでくれるあの安心感。
混乱した世界の中で、誰にも見えない未来の中で、唯一絶対的な存在のように感じるくらい、大きくてあたたかい。
自分だけの小さな儀式やお守りも役に立つ。
瞑想・満月の日の月光浴・貝殻の祭壇・ハーブ。
自分だけの祭壇を作ったら、ロウソクに火を灯し、お気に入りの音楽をかけて、瞑想をする。心臓と子宮の間の流れを感じながら、今この瞬間に意識を集めていく。神や宇宙と繋がるなんて、大げさなことは好きじゃない。ただ、リラックスして心地よさに身を委ねるだけでいい。いくつかハーブが手元にあれば、心と身体の乱れや不調(例えば冷え・PMS・頭痛・不眠・ストレスなど)への不安が和らぐし、気分に合わせて好きな香りでマッサージをしたり、スチームやお風呂に入れれば、あっという間に自分だけの至福の空間ができあがる。
誰にも会いたくなくて話したくないときもある。そんなときは動物たちの出番だ。わたしは近くにあるロバ牧場に通ってお世話をしながら、ヒトには言えないことをたくさん話した。今はひとりぼっちだった小さな黒猫と暮らしている。動物と一緒に暮らせなくても、動物がいる場所に行って、時間を過ごすだけでいい。動物たちはヒトとのコミュニケーションでは生み出せないモノをくれる。手を触れたら命のあたたかさを、耳を近づければ心臓の鼓動を聴かせてくれる。この世界は、想像以上に何層もの鼓動が重なっている、と気づいた瞬間、目の前の景色が一変する。ただ眺めているだけではなく、その場所に存在していると実感したとき、生きていることに気づけるように。
癒やしは循環している。
大地や植物から受け取った分だけ、返していきたい。
毎月やってくる、あの憂鬱な月経で流れる血も何処かからやってきては還ってゆく。自分の体の中で毎月起こっている生と死のサイクルは、自然界そのものだ。外界が汚染されれば私たちの身体も汚染されるだろう。内側と外側は表裏一体だから、自分への癒やしは、大地の癒やしにも繋がっているんだと思う。
さあ、めくるめく思考を休ませて、ただその瞬間を味わおう。
それが癒やしへの扉の鍵だ。
扉を開けたら、たとえ異次元にトリップしなくても、足元に転がっているたくさんの奇跡が残した欠片を拾い集めれば、自分だけの癒やしへと導かれていくだろう。
- NEXT PAGE砂糖シヲリ(チーム未完成):薄暗い中、首と背中にあったかシャワーで深呼吸