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お灸、ぬいぐるみ、石探し。7人それぞれの「わたしだけの癒やし方」

お灸、ぬいぐるみ、石探し。7人それぞれの「わたしだけの癒やし方」

植本一子、櫻子、後閑麻里奈、砂糖シヲリ、つめをぬるひと、村田倫子、吉野舞

2020年7・8月 特集:癒やしながら
編集:竹中万季
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吉野舞:石セラピー

人をずっと見ていると疲れませんか。だからもっと自然を見よう。自然の中に行くと気持ちがとても落ち着くってことは知ってるよね。そんな中、私はよく「石」に触れています。

いつのまにか旅先で石を拾ってコレクションすることが人生の醍醐味になっている。最近はなかなか旅をできないけど、以前は友達が上手いこと日本中に散らばってくれたお陰で、一反木綿のようなフットワークの軽さで全国各地へ遊びに行っていた。友人に会うとすぐ、「私を水辺に連れてって」と甘えた口調でお願いし、一緒に海や川など石がたくさん転がっている所に連れて行ってもらい、石拾いを実行させるのだった。

拾う場所には複数人で行っても、石探しの作業は制限時間を決めてひとりで行うのがマイルール。なぜなら初期の頃、夢中で石拾いをしていたら、気づくととっくに日が暮れていた。そして次の旅の予定が白紙になり、それが原因でついつい友達と口喧嘩をしてしまいその後の旅の空気はもう最悪でしただいの大人同士の喧嘩理由が「石拾い」って、恥ずかしいですね。

石を見ていると、「自由」の匂いがプンプンしてなぜか励まされます。「その辺のどこにでも転がっているから?」。違う違う。これがどうしてか本気で考えたところ、石という「自然」の素材と交流できて、自然と人間の間にある「距離間」に気づけるからだと思います。自然って本当に美しいですよね。形には秩序はなく、ただ混沌と存在している。そこには全く意図が見えないからでしょうか。

だけど、私たち人間だって似たようなものだと思うんです。感情には波があるし、何一つとして同じ身体は存在しないし、体調は良くなったり悪くなったりと、身体の中には混乱を抱えていて自然の部分を持っている。その混乱と共に街で普通に生活していると、良い年の取り方とか生活のリズム、感情の対処法などなど、「そこまで決めないとあかん?」と首を傾げるくらい、なんでもかんでも「型」にはめ込みすぎではないと思うんです。
もちろん全ての社会ルールが無意味だと思いませんが、年齢や役柄関係なく、その人本来の力を活かせるチャンスがもっと増えたらいい世の中になっていくと思いませんか。

その点、自然の中にいると男か女かの性別も、何をしている人なんかの肩書きも関係なく、独りきりでいるエクスタシーを思う存分に感じとることができる。身体を動かし、全身全霊でいい石を探すことにアンテナを張って没入していると、すっかり脳みそがぬるま湯につかり、何も考えずにすむので、心身共にすっきりするんです。さっきまで痛いところがなくなっていくみたいに意識と無意識の間でぼんやりとしながら、「ああ私、ありとあらゆるものを身体に詰め込んでたんだな」と痛感します。社会に従って生きるのか、自然に従って生きるのか、世の中この二つのバランスを上手にとっていけたら生物学的な生き物として、口角を上げて生きていけるはずじゃないかな。この方法を私は勝手に「石セラピー」と名付けています。そう、「石セラピー」。名前だけだとうさんくささしかないですね。

集めている石は部屋に置いておいても邪魔にはならないし、洗濯物が干しっぱなしで散らかっている1Rの部屋でも、そこにあるだけで優雅な気持ちになる。ひとつひとつが思い出の地で拾ったものだから、誰と拾ったかとか、この時期にあんなことに悩んでいたなとか、もちろん自分しか知らない個人的な思い出ばかりを、石が意思表示してくれているようでつい話しかけたくなってくる。そうした一つの優しさが、そこに存在していることにも癒されています。

もし今度どこかで「石セラピー」を行う機会があったら、ぜひ感想を聞かせてください。

拾い集めている石のコレクション。愛しすぎます。

PROFILE

植本一子
植本一子

1984年、広島県生まれ。2003年、キヤノン写真新世紀で荒木経惟氏より優秀賞を受賞し写真家としてのキャリアをスタートさせる。広告、雑誌、CDジャケット、PV等幅広く活動中。13年より下北沢に自然光を使った写真館「天然スタジオ」を立ち上げ、一般家庭の記念撮影をライフワークとしている。著書に『働けECD わたしの育児混沌記』『かなわない』『家族最後の日』、共著に『ホームシック 生活(2〜3人分)』(ECDとの共著)がある。

櫻子
櫻子

ekot spectrum works / 檸檬はソワレ ディレクター
1992/05/07 東京都出身
幼少時から東京、深圳、香港での生活を経て、貿易関連の業務に従事しながら、2015年からワックスサシェ・キャンドルの制作をはじめ『檸檬はソワレ』として活動をスタート。2018年3月より、檸檬ソワレを包括し、より裾野を広げた制作・提案を目的とした『ekot spectrum works (エコー・スペクトラム・ワークス)』を立ち上げ展開中。
東京、札幌、大阪など複数の店舗での取り扱いの他、イベント出展も多数。
最近ではMUSIC VIDEOへの作品提供や、手塚治虫生誕90周年アニバーサリーコラボレーション等、活動の幅を広げている。

後閑麻里奈
後閑麻里奈

尾道在住。広島空港内にある、ヴィーガンミルクチョコレートファクトリー「foo CHOCOLATERS」工場長。女性・クィア・トランス・ノンバイナリーに向けたプロジェクト「GRRRDEN」を始動。不定期でzineの発行やDJイベントを開催している。アンダーウェア・プロジェクト「Kiss Your Grrrden」やzineなどの個人制作物を主に扱うミニショップ兼インフォスペース「Virgo Stingray」もマイペースに活動中。

チーム未完成
チーム未完成

しをりん、ゆりしー、ぴっかぱいせん、ゲッツ!の落ち着いた大人の女性4名によるクリエイターごっこ集団。各々が、写真、デザイン、似顔絵、文章、音楽制作、DJ、ガヤなどの一発芸を持ち、2014年夏に渋谷センター街に彗星の如く出現した気でいます。パンと書かれたステッカー、パンのZINE、パンのグッズ、パンの楽曲等を次々と発表し、主にアートイベントの賑やかしとして活躍しています。最近は海外のアートブックフェアに乗り込んだり、CHAIやDJみそしるとMCごはんのMV制作もやらせてもらって恐縮です。

つめをぬるひと
つめをぬるひと

爪作家。CDジャケットやイベントフライヤーのデザインを爪に描きそのイベントに出没する「出没記録」、「身につけるためであり 身につけるためでない 気張らない爪」というコンセプトで爪にも部屋にも飾れるつけ爪の制作、爪を「体の部位で唯一、手軽に描写・書き換えの出来る表現媒体」と定義し、 身体性のあるファンアートとして、DOMMUNEの配信内容を描く「今日のDOMMUME爪」。これら活動を並行しながら年に数回、人に爪を塗る「塗る企画」を TONOFON FESTIVAL2017等の音楽フェスやその他イベントにて実施。

村田倫子
村田倫子

1992年10月23日生まれ、千葉県出身のモデル。ファッション雑誌をはじめ、テレビ・ラジオ・広告・大型ファッションイベントへの出演など幅広く活動している。自身初のスタイルブック「りんこーで」は発売から1週間で緊急増刷となり、各種SNSのフォロワー数も急上昇中。趣味であるカレー屋巡りのWEB連載企画「カレーときどき村田倫子」では自らコラムの執筆も行ない、ファッションだけにとどまらず、そのライフスタイルでも注目を集めている。

吉野舞
吉野舞

1995年生まれ。淡路島生まれ、育ち。
写真を撮ったり、文章を書いたりしています。
座右の銘は「人生の大体の出来事は、自分のせいで人のおかげ」。
今、東京。

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