葛西臨海公園(東京都江戸川区):国内最大級のペンギン展示施設、鳥類園ゾーン、BBQエリア、カニ釣り。一日中寛ぐことができる閑静な楽園
私は東京に住んでいる。
そして窮屈になるとすぐさま海へ向かう。
とはいっても、私が向かうのはビーチではなくて
海浜公園や臨海公園……私は海に面している公園が好きだ。
河川とは違う、湿った潮のにおい、そこに混じる青々と茂った草木のにおい。
すうっと伸びていく水平線。ただただ寄せては返すさざなみはいつまでも眺めていられる。
都心にいても車を少し走らせると、案外すぐに海浜公園にありつける。
しかし、徒歩で向かうには、その多くが駅から更にバス移動が必要だったりと、少し距離があるのが難点だ。
今回はそのなかでも、駅から徒歩1分、サクッと足を運べる「葛西臨海公園」を紹介しよう。
東京駅から、ディズニーリゾート方向へ伸びていく京葉線。
舞浜に存在する日本一有名な夢の国へ向かうその路線の乗車経験があったとしても、
おそらくほとんどの乗客の意識からこぼれ落ちていると思うが、「葛西臨海公園駅」はそのひとつ手前の駅に位置している。
そう、クラブイベントageHaやライブでお馴染みのSTUDIO COASTを構えている新木場と、舞浜に挟まれている駅なのだ。
(ちなみに新木場からバスで移動すると若洲海浜公園があり、ここは都内有数の海釣りスポットでもある)。
さて、新木場や舞浜には足を踏み込んだことがあったり、仮にその名を耳にしたことはあったとしても、
長らく都民として馴染み深い訳でもない限り、
実際に葛西臨海公園に降り立ったことがある人はどれだけいるのだろうか。
都会の喧騒から一時離脱して、ぎゅうっとパワーチャージしたいときに
ここはおひとりさま、友達や恋人、ファミリー連れでもおすすめできるオアシスだ。
敷地面積が80万平米以上と、都心で最大級の広さを誇る「葛西臨海公園」。
ひとつひとつ語るのが難しいほど、豊富な見どころを軽く紹介しておこう。
まず一番有名なのはマグロの大水槽でも知られる「葛西臨海水族園」をはじめとした水族園ゾーンだろう。
都管轄ということもあり、手頃な入園料だがその見応えは侮ることなかれ。国内最大級のペンギン展示施設だってここに存在している。
根強いファンをたくさん抱えている点も、この水族園の魅力を証明していると言えるだろう。
その次に知られているのが「鳥類園ゾーン」。都内では唯一ラムサール条約登録地に該当している葛西臨海公園は、水鳥も含めて春夏秋冬、一年を通じて百数十種の探鳥を楽しめる。至るところから聞こえてくる、多様な鳥たちのさえずりに心が躍る。なかには絶滅危惧種の野鳥もこの公園を訪ねていたりと、鳥類園に限らず園全体に様々な鳥を目にすることが出来るので双眼鏡を持参していくことをおすすめしたい。東京駅から約15分の距離で、こんなに豊かな自然に触れられる場所は類を見ないだろう。
国内で2番目に大きな観覧車を有する芝生エリアには宿泊施設が存在し、その他にも東京湾を望む展望施設、BBQエリア、人工渚など、一日中公園で寛ぐことができる。
先日、そのすべてをスルーして、別の目的を抱いて私は葛西臨海公園に向かった。
「カニ釣りが、したい……」
カニ釣り。葛西臨海公園では数十種類のカニがいるそうで、護岸や渚の近くで楽しむことができる。
専用の道具は必要なく、さきいかを結んだタコ糸を割り箸の先に括り付け、岩場の隙間に垂らしていると、
獲物を嗅ぎつけたカニたちが姿を現し、ちいさなハサミでさきいかを掴みながら懸命に口へ運ぼうとする。
そんなカニをすうっと引き揚げて、小さなバケツに移動させる。
事態が把握できず、しばし呆然とするカニ。しばらくすると状況を把握し、両手のはさみを突き上げ威嚇する。
その姿の愛おしさたるや。じっくり観察してみると、カニはとっても表情豊かだ。
同行してくれた友人と会話を楽しみつつ、それぞれ夢中になりながらカニを釣り上げる。
ときどき休憩を挟み、東京湾を眺めていると、海の向こうでぽちゃん、ぽちゃんと魚が跳ねている。
これはトビウオならぬ、ボラだ。台湾珍味でよく土産物として売られているカラスミは、ボラの卵巣が原材料だったりする。
波の音と水鳥のさえずりを聞きながら、そんなウンチクを思い出したり、様々な出来事についてあれこれと思いを巡らす時間は、静かで健やかで、私のお気に入りの時間だ。あっという間に辺りは暗くなり、東の方向へ目をやると、向こう岸の先から夢の国の光がきらめいている。
釣り上げたカニたちにお礼とお別れを告げ岩場へ返し、ゆっくり散策しながら帰路についた。
煌びやかな夢の国も好きだし、この閑静な楽園も好きだ。
せわしない東京にも、目を配ると、いろんな“休息所”がある。
この大きな大きな公園の楽しみかたはきっと人それぞれ。貴方ならではのとびきりの楽しみかたを見つけて欲しい。