石神井公園(東京都練馬区):悠々と飛ぶアオサギ、細やかな葉の流れがここちよいメタセコイヤと落雨松。自然の風景に圧倒される公園
一人の時間は好きだけれど、仕事は一人ですることが多いので、息抜きの時間は、大抵誰かと過ごす時間だ。それをどれだけ楽しいものにするかが、私の生きている理由のように思う。玉川上水わきの砂利道は、恋人とか初対面の人とか、誰かと話をしたいときによく歩くけれど、公園で言えば石神井公園かなと思う。この公園は道路で東西に分断されていて、駅に近い東側はなんということもない公園なのだけれど、西側の三宝寺池の方を目指すとみるみる東京とは思えない自然の風景に圧倒されることになる。ここを発見したときの驚きと喜びはとても大きかった。信州の湖畔にたたずんでいるような静けさの中をアオサギが悠々と飛んでいく。池の南側から北側にまわるとメタセコイヤと落雨松が林立し、細やかな葉の流れがここちよい。メタセコイヤは私が幼少期に何度となく木登りをした木でもあるので、格別な思い入れがある。間違いなく30年以上生きてきた中でダントツ一位の東京の公園だった。このあたりは、後に“たよりないもののために”という曲のMVでも撮影をした。
井の頭公園もそうだが、池には大抵蛇や竜の神様が絡んでいる。公園の近くには、ふるさと文化館なるものがあって、そこにふらりと入ってみつけた『ねりまの昔ばなし』という本を買って帰ると、三宝寺池の大蛇が、石神井川を泳いで北区や板橋区、埼玉の方にまで遊びに行っていたという話があった。雨の後は水量が増すが、帰るころには水が引いてしまうので、若い女の姿になって車夫の車で池に帰ったという話もあるという。4月に引っ越してみると、近所に流れのとぎれがちな冴えない川が流れていて、これが石神井川だった。引っ越しを考えた時は、石神井公園のそばに住めたらなと思っていたが、実家から少し遠くなるので、もう少し吉祥寺寄りにした。結果、思いがけず石神井川のそばに住むことができた。普段は水がとぼしく、鯉もあまり見かけないが、雨が降るとみるみる水量があがり、橋の上でたたずむと、濁流の中、いつも三宝寺の池の主の姿が一瞬見えるような気がする。