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生きやすくいられるはずの生活を求めるために、わたしは政治を語る。
(惣田紗希さん)

自分のなかから出てきた「怒りポイント」から情報にアクセスしていく

連載:わたしたちのコトバで、政治を語る。
インタビュー・テキスト: NO YOUTH NO JAPAN(吉井紗香、宮坂奈津)  編集:竹中万季
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日本の政治には女性がいない。どんどん世界に置いていかれる。

もも:最近気になっている政治や社会のトピックはありますか? 先日菅さんが総理大臣になりましたが。

惣田:いろいろおかしなことになりすぎてて、なるべく全部に関心を持って考えていかないといけない状況だけど、でも個人的にやっぱり一番はジェンダー問題。新しい内閣の中にも女性は2人だけ。全く期待が抱けないです。自民党だけじゃなく、新しい立憲民主党も女性が少ないとか。総裁選でも岸田(文雄・政調会長)さんが「出産費用ゼロに」と言っていたけど、そこじゃなくて、賃金格差とか女性の社会的地位を守るっていう根本的なところを考えてくれないと意味がない。やっぱり政治は男性優位の世界で、内閣もそう。女性のことを考えてくれる隙間がなさそう。

でも、こうした問題の元をたどると教育の問題があるなと思います。その中でも性教育が圧倒的に足りていないという壁に当たることが多いです。学校で性教育の知識をもつ先生がいて教えようとしても、教えることをやめさせられたりしていますよね(2018年、足立区の中学校で行われた性教育の授業が都議が問題視し東京都教育委員会による指導を受け、区教委が反論した)。最近だと緊急避妊薬をオンライン診療で処方できるようにする案が出たときに「若い女性が乱用する」と言った人の発言には怒りを覚えました。海外と比べると、時間が止まったままのことが多くて驚きます。結果的にジェンダーギャップ指数でも下から数えた方が早い。どんどん世界に置いていかれますね。

惣田さんがジェンダーのことや、なかでも緊急避妊薬について参考になったという『エトセトラ VOL.3 私の私による私のための身体 長田杏奈 責任編集』(Amazonで見る

もも:女性が政治の世界に少ないという問題意識って、わたしたちの間では共有されていても、政治の世界ではまだまだ認識されてない。重要だと思われてないんだなって思うことがわたしも多いです。

身近なものから知っていけたらいい。自分のなかにあった「怒りポイント」にアクセス。

もも:惣田さんは普段から政治について発言をされていると思うのですが、実際に政治について語るときはどこから考えてみるのが良いでしょうか? また、政治に関するニュースを得るときに具体的に実践していることって何かありますか?

惣田:政治に関するニュースの全部を拾うことは難しいから、自分により身近なものから知っていけたらいいかなと思っています。さっきの緊急避妊薬も、自分自身の女性性の身体に繋がる問題で、これはおかしいんじゃないかっていう明確な「怒りポイント」が自分のなかにあったから、その情報にアクセスしやすくなったり、歴史を調べたり、言葉にしやすくなったりしていました。Black Lives Matterとか入国管理局など日常的に起きてる人種差別、社会保障、環境問題とか、知らなきゃいけないけど、報道が偏向していることもあるし、拾いきれない問題がいっぱいあります。そのなかでも自分と繋がるものや、おかしいと思ったことを書き留めておくことができたら、「考え続ける」ことに繋がっていくのではないかなと思います。例えば、Twitterで気になったニュースを自分のタイムラインに投稿しておく。そこからそのニュースが進んだらリプライするかたちでタイムラインを更新していくってことをやっています。表に出さなくても、お気に入りにしておくだけでもいい。Instagramでは、ストーリーズでNO YOUTH NO JAPAN をシェアしたりハイライトにまとめたり。SNSに記録していくと後で振り返ることができるのがすごくいいなと思います。

惣田紗希さんのInstagram。「BLM」「社会の動き」「参院選2019」などがハイライトでまとめられている

「生きやすくいられるはずの生活を求めること」は贅沢でも我儘なことでもなんでもなく、誰もがしていいはずの、大事なこと。

もも:惣田さんにとって、「政治を語ること」とはどんなことでしょうか。

惣田:うーん、なんだろう。ニュースや政治家の発言を見てると、悲観的かもしれないけど絶望しかない。どんどん自分が切り捨てられる側に押しやられているんじゃないかと思うこともある。でも、もっと困っている人がいっぱいいるはずで。何がおかしいか分からない状態でも、そういう漠然とした怖さや不安も、もっと言葉にしていいのではないかと思ってます。ふと言葉にして「そうだよね」とか一言でも返ってきたら、ほっとすることもある。そしてそれが実は政治で取り決められていることに繋がっている、ということが結構多いのではないかな。それに気づけたら、解決していくための道筋が見つけやすくなると思う。いちばんの理想は、政治がきちんと生活に向き合ってくれる状態なのだけど。

「自分が困っているのに、あの人は不自由なく生活している」と思い込んで「あの人」を攻撃してしまうことが増えている気がするのだけど、どちらも同じ社会のなかにいて、その差とか構造を作っているのが今の政治なので、文句を言う方向が違うよって思うことがあります。自分のつらさとかかなしさとか不安は誰かに言わないと伝わらない、だけどこんなことに困っているのは自分だけかなと思って言葉にするのも勇気がいる、政治に文句を言ってはいけないムードを感じることもある。でも言葉にできる人がひとりずつでも増えたら、それに後押しされる人もひとりずつ増えていくはず。「生きやすくいられるはずの生活を求めること」は贅沢でも我儘なことでもなんでもなく、誰もがしていいはずの、大事なことだと思います。

「これおかしくない?」も「弱っていてつらい」も言える空気を共有できる場がもっと増えたら。

もも:She isはたくさんの女性の読者さんがいます。でもさっきのお話にもあったように、政治の世界で女性はまだまだマイノリティです。惣田さんが思う「女性が政治について話しやすい世の中」ってどんな世界でしょうか。

惣田:困っているのは自分だけじゃないこと、例えばShe isの記事でも書いたのですが、「これおかしくない?」とか「弱っていてつらい」とか、そういうことを言える空気を共有できる場がもっと増えたらいいなとは思います。

もも:政治を話す人ってみんな強そうに見えますよね。

惣田:困っていたり怒っているポイントを辿ると、政治につながる。信頼できる一人にでも困っていることを伝える勇気が持てたら、そしてそこに共感できるポイントがあれば、安心できると思う。こういう発言をしているわたしも強く見えるかもしれないけど、She isで極個人的な弱音も含めて書いたことで、当時のどうしようもない不安をたくさんの人と共有できたような反響があった。政治のニュースを追うばかりだと疲れてしまうけど、Instagramだったら見られる人もいる。NO YOUTH NO JAPANのインスタも、政治のトピックの合間に質問箱の回答をシェアするなど人の気持ちを汲み取る試みがあって、すごくいいと思った。これからも続けてほしいなと思います。

もも:ありがとうございます! 嬉しいです。「何かモヤモヤがあれば、政治に繋がっている」ってことがもっと広まればいいなと思いますね。

NO YOUTH NO JAPAN 代表・もものインタビュー後記
「わたしたちのコトバで、政治を語る。」

この連載タイトルは、NO YOUTH NO JAPANが連載を始めるにあたりShe is編集部の方とお話をしていたときに、政治の話はメディアも政界も男性中心で、女性の言葉で語られることがまだまだ少ないという現状に対するむずがゆさを一つずつ克服したいという気持ちで付けさせていただきました。

今回、惣田さんとお話をして、「怒りポイント」が分かってくると政治をジブンゴトにしやすいという言葉が印象に残りました。NO YOUTH NO JAPANでも、日頃から「モヤモヤ」を政治に繋げようという話をしていますが、そこに通じる部分があるなと感じました。

政治って何だか難しい感じがするかもしれませんが、実は「もっとこういう社会だったらいいのに」「こういうことが自分は許せないな」という気持ちを実現するツールが政治だったりします。一人ひとりが「怒りポイント」に気づいたり感じるようになって、コトバにして、行動する先に、もっと生きやすい社会があるような気がしました。

また、内閣や政党役員の女性比率などジェンダーの話も共感する部分が多かったです。NO YOUTH NO JAPANは現在60名ほどのメンバーで活動していますが、メンバーの約9割が女性。これは政治に関する団体ではかなり珍しく、話すたびに驚かれます。

団体内でよく話題に上がる日本の政治におけるジェンダーバランスの悪さは、もっと真剣に取り組まれるべきだし、それを言っても良いんだなということを今回のお話で改めて実感しました。

PROFILE

NO YOUTH NO JAPAN
NO YOUTH NO JAPAN

「参加型デモクラシーをカルチャーに」をビジョンに掲げ、U30世代が政治や社会について知ってスタンスを持って行動するための入り口づくりを行う。U30のための政治や社会の教科書メディアをInstagramなどで運営するほか、イベントや記事の執筆を行っている。

惣田紗希
惣田紗希

グラフィックデザイナー/イラストレーター。1986年栃木県生まれ。2008年桑沢デザイン研究所卒業。デザイン会社にてブックデザインに従事したのち、2010年よりフリーランス。インディーズ音楽関連のデザインや装丁を手掛けるほか、イラストレーターとして雑誌や書籍を中心に国内外で活動中。

INFORMATION

連載:わたしたちのコトバで、政治を語る。
連載:わたしたちのコトバで、政治を語る。
NO YOUTH NO JAPANと話す。わたしたちのことは、政治的なこと

vol.1 生きやすくいられるはずの生活を求めるために、わたしは政治を語る。(デザイナー・惣田紗希さん)

イベント情報
イベント情報
オンライントーク「表現と政治」

グラフィックデザイナー 平山みな美、惣田紗希、編集者 岡あゆみの同世代3人で企画した、表現と政治のつながりを考え対話するオンライントーク。次回のテーマは「政治とイラストレーション」。2020年11月頃開催予定。
表現と政治|note

生きやすくいられるはずの生活を求めるために、わたしは政治を語る。(惣田紗希さん)

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(惣田紗希さん)

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