父親の「死にざま」を娘が演出して本人が演じる。独創的で心温まるドキュメンタリー/『ディック・ジョンソンの死』 10月2日~Netflixで配信
ドキュメンタリー作家である娘が、父の最期を発想豊かに演出し、本人に演じさせて撮影するという一風変わったドキュメンタリー作品。父であるディック・ジョンソンはシアトルに住む精神科医でしたが、認知症であることがわかり、仕事を辞めて娘の住むマンハッタンのアパートに移り住みます。娘であり本作の監督であるキルステン・ジョンソンは、いつか訪れる父の死と向き合うため、またその現実から逃避するため、父のさまざまな「死にざま」を撮影することにします。その「死にざま」とは階段から落ちたり、頭上から物が落ちてきたり、角材が首に刺さったり。さらにはファンタジー風なセットを用いて死後の世界を作り出したり、生きている父の「葬式」も行います。
悪い冗談にも思えるシチュエーションをコミカルに演出していく娘は、父の死という避けられない、訪れてほしくない現実を映画の力でできる限り先延ばしにしようとしていると同時に、受け入れる心構えを作ろうとしているようにも映り、企画に協力的な父の姿からは、そんな娘への深い愛情を感じます。死ぬということ、大切な人を失うということ。死は誰にとっても等しく訪れ、誰にとっても未知なもの。独創的でありながら、温かい余韻を残す不思議な90分間です。
NYの黒人女性劇作家がラッパーに転身? 40歳を前に自分の声を模索する/『40歳の解釈: ラダの場合』 10月9日〜Netflixで配信
ラダ・ブランクの監督デビュー作で、ブランクが監督、脚本、主演を務めています。主人公は40歳を目前にしたニューヨークの劇作家ラダ。かつては注目の劇作家としてスポットライトを浴びていたものの、現在は若者相手に演劇を教える仕事でハーレムにあるアパートの家賃を払っています。演劇の世界での成功のラストチャンスと思われたタイミングで困難に直面した彼女は、ふとしたきっかけでフリースタイルラップを始めることに。ヒップホップと演劇の間で揺れるラダが、自身の内なる声を模索する姿が描かれます。
本作はもともとウェブシリーズとして企画されていて、ブランクがアーティストとしての自分自身を表現できる場所がないと感じたフラストレーションが原動力になっているそう。物語は彼女自身の体験に大まかに基づいていおり、ハーレムのジェントリフィケーションを題材にしたラダの脚本に注文をつけてくる白人プロデューサーの存在など、黒人の物語を都合よく消費しようとする白人たちへの痛烈な皮肉も込められています。モノクロの35mmフィルムで撮影されたニューヨークの街並みは、スパイク・リーの『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』を彷彿とさせるという声も。今年の『サンダンス映画祭』では監督賞を受賞しました。
そのほか、リアーナがプロデュースするランジェリーブランド「SAVAGE X FENTY」の最新コレクションとその舞台裏、そこに込められた想いに触れることのできる『サヴェージXフェンティ・ショー Vol.2』がAmazon Prime Videoで10月2日から配信。リアーナ本人だけでなく、トラヴィス・スコット、リゾなど豪華ミュージシャンやモデルたちが多数出演しています。また今秋はソフィア・コッポラ監督の新作映画『オン・ザ・ロック』が封切りに。10月2日から劇場公開されている本作は、10月23日からApple TV+でも配信されます。Netflixでは上述の作品に加え、名探偵シャーロック・ホームズの妹エノーラ・ホームズを主人公にした、ミリー・ボビー・ブラウン主演作『エノーラ・ホームズの事件簿』(9月23日配信)、『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』の製作陣が贈る全編リモート制作のシリーズ『ソーシャルディスタンス』(10月15日配信)、BLACKPINKのドキュメンタリー『BLACKPINK ~ライトアップ・ザ・スカイ~』(10月14日配信)、アーロン・ソーキン監督・脚本、1968年にベトナム反戦デモで起きた暴動を煽動した容疑で起訴された7人の裁判を描く実話映画『シカゴ7裁判』(10月16日から配信)といった作品にも注目です。
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