映画『パピチャ 未来へのランウェイ』 アウファさんと語り合った会をレポート

映画『パピチャ 未来へのランウェイ』 アウファさんと語り合った会をレポート

社会の抑圧を、日本や台湾に住む読者とムスリムの女性で語る

2020年9〜12月 特集:自分らしく?
SPONSORED:『パピチャ 未来へのランウェイ』
テキスト:後藤美波
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1991年からアルジェリアで始まった内戦を背景にした映画『パピチャ 未来へのランウェイ』が10月30日から公開されています。

本作は、17歳までアルジェリアで暮らし、本作が長編デビュー作となるムニア・メドゥール監督自身の経験から生まれた物語。「暗黒の10年」と呼ばれる内戦の時代、過激派のイスラム主義勢力が台頭するなかで女性に対して行なわれていた弾圧を、ファッションデザインに夢中の大学生ネジュマの視点で描きます。本作は『カンヌ国際映画祭』ある視点部門に出品され、『アカデミー賞』国際長編映画賞アルジェリア代表への選出、『セザール賞』新人監督賞受賞など、高い評価を獲得した一方、本国アルジェリアでは昨年9月に予定されていたプレミア上映が当局により突如中止に。現在も本国での公開見込みは立っていないといいます。

She isでは、編集部とMembersのみなさまがオンラインで語らう会『She is MEETING』にて、映画『パピチャ 未来へのランウェイ』を語り合うイベントを開催しました。当日は、写真や映像、ファッションを通して、イスラム教を信仰する自身の生き様を発信する活動を行なっているアウファ・ヤジッドさんをゲストにお迎えし、日本や台湾に住む読者の方々と意見を交わし合いました。ここではその模様をお届けします。

※本記事は『パピチャ 未来へのランウェイ』のネタバレを含む内容となっております。あらかじめご了承下さい。

日本で「ヒジャブを外して」と言われたアウファさんの体験

『パピチャ 未来へのランウェイ』の舞台は1990年代のアルジェリア。過激派のイスラム主義勢力の台頭によりテロが頻発する首都アルジェでは、ヒジャブの着用など女性の「正しい服装」を強制するポスターが至る所で貼られるように。ナイトクラブで自作のドレスを販売しているファッションデザイナー志望の大学生ネジュマは、ある悲劇的な出来事に見舞われたことをきっかけに、自分たちの自由と未来のため、命がけでファッションショーを行なうことを決意する──。

インドネシア人の両親のもと、東京で生まれ育ったアウファさんは本作を見て「かなり衝撃的だった」と話します。「同じムスリムの子でこういう状況に陥っていた人がいたんだというショックと、彼女たちの戦う姿に勇気づけられたというのが最初の感想でした」

『パピチャ 未来へのランウェイ』 © 2019 HIGH SEA PRODUCTION – THE INK CONNECTION – TAYDA FILM – SCOPE PICTURES – TRIBUS P FILMS - JOUR2FETE – CREAMINAL - CALESON – CADC

さらに日本でムスリムとして暮らす自身の体験からも感じたことを話してくれました。「ネジュマはヒジャブを強制されるというような抑圧から自由になるために行動を起こしていきましたが、私の場合は逆だった。日本の社会においてヒジャブをしていると『外してください』と言われたり、自分にとってはアイデンディティであるものを否定される場面がすごく多くて。そのことに悔しい思いや疑問があったんですが、彼女も同じだなと思ったりしました」

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アウファ・ヤジッドさん

90年代のアルジェリアと現在の日本、状況は違えど個人が自分のアイデンティティとは異なる考えにあわせることを強いられる局面があるという点では共通しています。『She is MEETING』のある参加者は、このアウファさんの感想を受けて「それぞれの国の文化や国家的なアイデンティティに沿わないものは排除しよう、自分のことを変えてでもこちらにあわせてきてね、という思想自体は同じなのかなという気がします。映画の舞台は今の社会とは違うように見えるかもしれないけど、根元にある差別や抑圧みたいなものって私たちの現代の生活にもあてはめることができるのかなと思いました」と話しました。

雨や海、浴場……祝福や清めるイメージを連想させる「水」のシーン

映画で印象に残った場面として参加者の間で意見が交わされたのは、象徴的に登場する「水」のシーンについて。ネジュマをはじめとする少女たちが雨の中でびしょ濡れになりながらサッカーをする場面や、海ではしゃぐ場面など、劇中で「水」が祝福を浴びるような形で使われているのが印象的だったという声がありました。

「雨のシーンが喜びに満ちているのに対して、すごく残酷なシーンの前に太陽が照りつけていた」と指摘したある参加者は、「日本の一般的な感覚で捉えると非日常的な瞬間である雨の時に彼女たちには喜びが訪れていて、逆に晴れという日常的なところはいつも危険に晒されているということなのかなと思いました。海は、海外につながる、自由とつながるという風にも解釈できるのかなと思います」と語りました。

『パピチャ 未来へのランウェイ』 © 2019 HIGH SEA PRODUCTION – THE INK CONNECTION – TAYDA FILM – SCOPE PICTURES – TRIBUS P FILMS - JOUR2FETE – CREAMINAL - CALESON – CADC

上記のシーンに加え、劇中では浴場で少女たちが寄り添い合い、体に水をかける場面もありますが、親戚にクリスチャンが多い環境で育ったというある参加者は、互いを清める、赦しあうというような場面で水のメタファーが登場しているようで印象に残っていると話しました。アウファさんは、この参加者が話してくれた「水」の概念がイスラムの教えとも重なる部分があり、礼拝の前に水で体を清めることや、水は清いものの象徴としてとらえられていることなどを教えてくれました。

PROFILE

アウファ

自撮家。1994年生まれ、インドネシア人の両親のもと、東京で生まれ育つ。写真や映像、ファッションを通して、イスラム教を信仰する自分の生き様を発信している。好きな食べ物はプリンとメロンソーダ。日本に暮らすムスリムの若者を中心とした”真面目にふざける”集まり「ヤングムスリム倶楽部」や、ムスリム青少年の活動支援に取り組む団体「Olive」にも携わっている。

INFORMATION

作品情報
『パピチャ 未来へのランウェイ』

Bunkamura ル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか絶賛公開中
脚本・監督:ムニア・メドゥール
出演:
リナ・クードリ
シリン・ブティラ
アミラ・イルダ・ドゥアウダ
ザーラ・ドゥモンディ
上映時間:109分
配給:クロックワークス

映画『パピチャ 未来へのランウェイ』公式サイト

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