移住の誘いに対するネジュマの答え。込められた監督の思い
劇中では、ネジュマが恋人から結婚してフランスに移住することを提案され、「私はここに満足している。闘う必要があるだけ」と答えるシーンがあります。恋人は「この国にいても殺される」と話し、申し出を断るネジュマに対して「チャンスをやると言っているんだ」と怒りを表します。
移住すれば今よりも自由を得られるかもしれないし、命の危険にもさらされないかもしれない。でもネジュマが「私の国はここ。家族も友達もいる」と話すように、ネジュマにとって大切なものがあるのはアルジェリアです。彼女の答えについて、アウファさんは「状況は全く違いますが、私は国籍はインドネシアで、人口の約90%をムスリムが占めるインドネシアの方が住みやすいと思うんです。それでも日本に住み続けるのは、自分がいま日本で行なっている活動に価値を見出しているというのと、自分の価値観が日本だから見出せたから、自分を信じてやっているというのはあります」と自身の経験と重ねて話しました。
さらに「彼女はここで暴力を受けていて、ヒジャブはつけたくないし、ミニスカートを履きたい。でも自分の国にいたい、それは絶対で。『ヒジャブをつけずに暮らせる国に行けたら良いじゃないか』というような話ではないんだなと。困難を選んだ彼女をすごく尊敬しました」と話してくれた参加者もいました。
本作の配給会社クロックワークスの担当者によれば、このネジュマの言葉には、監督自身の体験と意思が反映されているのだそう。ムニア・メドゥール監督は、自身も90年代をアルジェリアで過ごしていましたが、映画監督であった父親の撮影現場でテロが起き、身の危険を感じたことからフランスに移住したという過去があります。監督自身は当時アルジェリアにとどまりたかったという思いが強く、フランスに移住後も、新しく触れる文化の国で人生を一から築いていくことに苦労を経験したといいます。また当時は外の世界を知らず、何があるかわからなかったし、自分の大切にしたいものは全部アルジェリアにあった、とも話していたそう。監督のそんな思いが、この作品とネジュマの物語には込められています。
最後に、10月に夢だったという自身のアパレルブランドを立ち上げたアウファさんからコメントをいただきました。アウファさんのブランド「RAFI'E by aufatokyo」は、肌やボディラインの露出を控えた「モデストファッション」のアイテムを揃えています。「自分の目標は服のブランドを出すということだけでなく、その服を通して自分が生きてるんだよっていうメッセージを伝えたい。少しずつ頑張れたらなと思います」と話してくれました。
2020年10月より、ZOZOTOWNによる「YOUR BRAND PROJECT」にて自身のブランド「RAFI'E by aufatokyo(ローフィエ バイ アウファトーキョー)」を立ち上げたアウファさん。宗教や信条、年齢、体型、あらゆる価値観を越境する、肌やボディラインの露出を控えた、モデストファッションを提案。
なおShe isでは2020年9~12月の特集「自分らしく?」にあわせて、本作を見た牧村朝子さんにお話を伺ったインタビュー「牧村朝子が語る。上から目線の『してあげる』にわたしたちは戦う」も公開中。こちらもぜひあわせてご覧ください。
映画『パピチャ 未来へのランウェイ』予告編
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