01-2_ハーバルライフスタイリスト・植物療法士の村田美沙さん

生活の中で楽しくハーブを取り入れるブランド「Verseau」

連載:秦レンナの「彼女たちのセンスオブワンダー」
インタビュー・テキスト・撮影:秦レンナ 編集:竹中万季
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自粛生活が始まってから、庭いじりを始めたり山や海に出かけたり、自然に触れ合う機会を求めるようになった秦レンナさんの連載、「彼女たちのセンスオブワンダー」。自然の持つ力ってなんなんだろう。ずっと前から植物や自然の力に気づいていた人たちに聞きに行く。前回に引き続き、ハーバルライフスタイリスト・植物療法士の村田美沙さんがハーブブランド「Verseau」を立ち上げるまでのストーリーをお届けします。

はじまったVerseauの旅

5か月半のヨーロッパの旅を終え、帰国した村田美沙ちゃん(以降ミサちゃん)。植物療法士の資格を取ったばかりの頃、何度かハーブを紹介するワークショップを開いたことはあったけれど、自分のやりたいことはこれなのか、ピンときていなかったという。だけど、旅から帰ってきた今、自分のすべきこと、伝えたいことが明確になっていた。

デンマークの半島でハーブを収穫。そのハーブは近くのレストランで使われた
Photo:Verseau

「ハーブって、めちゃくちゃ楽しい! って思って。ヨーロッパでは、それまで机の上でしか学べなかったことを、実際に目で見て、触れて、そして感じることで理解することができた。生活の中に楽しくハーブを取り入れて、それで健康になって、幸せになって……そういうヨーロッパにあるマインドを、日本で伝えられたらと思ったの。そしたら、自分の仕事の道筋が見えてきた」

それまでは、ハーブは療法・セラピーとして用いるものという考え方で勉強をしていたという。
「でも、セラピーってなると、何かすでに悩みや不調を抱えている状態の人を治すため、という感じがするんだよね。できればそうなる前の段階で、自分自身の健康状態に気づいてほしい。そうすれば、私が体を壊してしまったときのようなことにはならないと思って。
ヨーロッパで、みんながごく当たり前に生活の中にハーブを取り入れているのを見て、こんなふうに生活に寄り添うものを提案したいんだってことがはっきりした。それはハーブだけに限らず、食もそう。それぞれがそれぞれにあったやり方で、健康に生きる、心地よく生きるっていうことを提案していきたいって思ったんだ」
「ハーバルライフスタイリスト」という肩書きは、こうして生まれた。

そして2019年、名古屋から東京へと拠点を移したミサちゃんは、「素直なわたしになる」をコンセプトに掲げたブランド、「Verseau(ヴェルソー)」の活動を本格的にスタートさせる。

日本のハーブ農家とともに作った「Akeru」と「Kureru」

ミサちゃんは、まず、「Verseau」のオリジナルハーブティーを作ることにした。
「生活の中にハーブを取り入れてもらうのに、やっぱりお茶が一番馴染み深いし抵抗が少ないと思ったの。だけど、これまでの日本のハーブティーのイメージは、自分の伝えたいものとはあまりにもかけ離れていた。
日本でハーブティーというと、あんまり美味しくないとか、積極的に飲みたいとは思わないっていう声が多いと思うんだよね。カフェのメニューでも絶対うしろの方にあるし、コーヒーとか日本茶みたいに日常的に飲むお茶とは別のものとして捉えている感じが、ずっと気にかかっていたの。

だからまずは、“ハーブティー=美味しくない”っていうイメージを変えたかった。あとは、ハーブティーにはお茶として飲むだけじゃなく、いろんな用途があるってことも伝えたくて。例えば、茶葉をお砂糖と煮詰めればシロップにもなるの! それをソーダや、お酒で割るととってもおいしい。あとね、お茶の出がらしはお風呂に入れてもいいんだよ。そういういろんな使い方から、ハーブの可能性をみんなが気付いてくれたらいいな。だから、Verseauでは、ハーブティーと言わずに『ハーバルドリンク』って言ってるんだ」

「Akeru」と「Kureru」(Photo:Verseau)

「Verseau」のハーバルドリンクには、「Akeru」と「Kureru」の2種類があり、外国のお菓子のような素敵なパッケージには、きっと誰もがうっとりしてしまうはず。まるで「Verseau」という物語へ誘う、秘密の扉みたいだ。

「はじめは、いつでも飲めるお茶にしたいと思って、2種類のブレンドを作ろうとただ漠然と考えていたんだけど、あるとき、『明ける』と『暮れる』という言葉にピンときたんだよね。1日は『明ける』と『暮れる』で完結するじゃない? それがすごく素敵なことに思えたのと、なんだか言葉の響きも気に入って。この名前をつけたことによって茶葉のブレンドの内容も明確になって、味のイメージが形作られていったんだ」

「Akeru」と「Kureru」に使われているのは、すべて国産のハーブ。ミサちゃんがこれまでに知り合った国内の農家から取り寄せているもので、実際にファームへと足を運び、味や香り、特徴を見てブレンドしている。
「最初は輸入ハーブを使おうかなとも考えていたんだけど、私が一番追求したかったのは、 “美味しさ”。そこで研究を重ねたんだけど、結局のところ一番重要なのは、ハーブのフレッシュさなんだってことに気がついたの」

ワークショップでの様子
Photo:Verseau

Photo:Verseau

「海外では、ハーブを大量生産できるから安く作ることができて、そのぶん価格も安い。ただ、それを日本に輸入するまでに、ハーブのフレッシュさは失われてしまう。それに、ものづくりをする上で輸送による環境負荷も気になった。
一方、日本では海外のようには大量生産できないし、手摘みで収穫している農家さんでは、より労力もコストもかかってしまうから、価格も高い。だけど、どっちのハーブを使うべき? と考えたら、やっぱりフレッシュな国産のものがいい。しかも、品質も信頼できる。
あとはね、こうやって日本のハーブのおいしさを伝えていくことで、ハーブ農家さんがもっとたくさん量を生産できるようになったり、人をたくさん雇えるようになったり、日本のハーブの市場の基盤を底上げしていくみたいなことが一緒にできた方がいいと思ったの」

ミサちゃんは、各地のハーブ農家さんを訪ねては、Verseauのコンセプトや目指していることを説明してまわったそうだ。そんな中で、Verseauに共感してくれるいくつかの農家さんに出会い、「Akeru」と「Kureru」が誕生した。

「HARB STAND」のハーブ(Photo:Verseau)

「HARB STAND」のハーブ(Photo:Verseau)

人間と植物が近づくことでわかること

最後に、今、私たちが求めている“植物の力”って一体なんなのかということについて、ミサちゃんに尋ねてみた。

「やっぱり植物とか自然の力って、人間に影響するものだと思うんだよね。それをコロナ禍で実感した人は多いんじゃないかな。急に植物を育て始めたり、散歩をするようになったりした友だちが周りにもたくさんいたから。
私たちは、こういう時期を自然の力に助けられて乗り越えていくような気がする。

ステイホームって、家から動くことができない、いわば人間が植物になったみたいな状態じゃない? それで気がついたのが、動けない状況になると私たちは『自分でどうにか生きよう』っていう感覚が強くなるような気がする。これって、植物たちは既に知っていることなんだよ」

Photo:Verseau

「植物は、日を浴びたいから葉っぱを太陽に向けるし、水を吸いたいから根を伸ばす。太陽が沈んだら疲れるから葉っぱを閉じる、なんてちょっと人間みたいだよね。そんなふうに一方では植物にも人間的な部分があって、私たちは結構似ている存在なのかもしれないね。
私は自然ともっと共生していきたいって思っているから、これからはハーブに限らず、植物について学んでいきたい。植物の持つ可能性をもっと研究したい」

「私たちは自然に癒しを求めながらも、ものすごく脅威に感じるときもある。本当に不思議な関係性だよね」

PROFILE

秦レンナ
秦レンナ

ライター・編集者。選書、文筆、zineの発行なども行っている。

村田美沙
村田美沙

自身の体質の改善をきっかけに植物療法士の資格を取得。その後植物療法の本場である渡欧し、欧州に根付くハーブの文化や食の大切さを体感する。帰国後はその経験を生かし、 Herbal life stylist として、植物療法をベースとした衣食住を提案するVerseau(ヴェルソー) を立ち上げる。「植物を通して、心や身体が豊かになり、素直で優しい気持ちでじぶんと向き合える日々」を目指し活動している。
Diploma 一般社団法人フィトテラピー協会認定 フィトテラピスト
(写真:Verseau)

INFORMATION

連載:秦レンナの「彼女たちのセンスオブワンダー」
連載:秦レンナの「彼女たちのセンスオブワンダー」
自然の持つ力って、なんだろう。植物や自然の力に気づいている人たちに聞きに行く

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