ホテルはチルな場所だと思う。日常と非日常の狭間で、旅で興奮した心を生活の営みへと引き戻し、それでいながら旅の演出装置としての側面も強く帯びている。高揚感とくつろぎが並存している状態という意味では、ホテルにはチルアウトという言葉がよく似合う。
今回紹介するのは、そんな都会のオアシスのようなホテルたち。日本にはほとんどない、都市型でありながらリゾート感もあり、それでいてラグジュアリーに寄っていない東南アジアのホテルをご紹介します。
ベトナムの空気感を織り込んだハイセンスなアーバンリゾート
ベトナムの首都、ホーチミンシティに立つホテル「THE MYST DONG KHOI(ザ・ミスト・ドンコイ)」。モダンなデザインの瀟洒な建築で、不規則に並んだ窓から植物が鬱蒼と茂っている外観に表されているように、ベトナムや東南アジアの空気感を現代的で洗練された目線で再構築したホテルです。
ここの一番の醍醐味は、眼下を流れるサイゴン川を眺めることができる、コンクリートジャングルに浮かぶルーフトッププール。デッキチェアで日光浴をするもよし、プールエリアの中にある離れのソファ席でくつろぐもよし。ホスピタリティの行き届いたカフェ&バーのスタッフに見守られながら、太陽が昇ってから暮れるまでをずっと過ごすことができてしまうような時間が流れています。
客室はモダンテイストとオリエンタルなベトナムテイストが混じり合った空間で、ティーセットやバスケットに至るまで小物はどれもベトナムの温かみを感じる気の利いたしつらえ。テラスにはアウトビューバスがあり、サイゴン川を眼下に眺めながらお風呂に入ることができます(ホテル外観の草が生い茂った窓は、実はこのアウトビューバスがあるところ)。
東南アジアの気候に育まれた固有の文化に、中華文明とフレンチコロニアル様式が混じり合い、社会主義の歴史を辿ったミックスカルチャーの国、ベトナム。土地に流れる濃厚な空気感を感じさせながら、洗練された居心地のいい滞在のできるホテルです。
バンコクのユースカルチャーをリミックスした都会のオアシス
タイの首都・バンコクの外れ、のどかながらセンスのいいカフェの散在するアーリー地区にあるのが「JOSH HOTEL(ジョシュ・ホテル)」。ホテルの様式美にのっとっていながら、タイのヒップカルチャーが随所にあしらわれた、躍動するタイの息吹を感じられるホテルです。
郊外らしい光景が広がる中で突如現れるこのホテルでのステイは、ドアマンに迎えられるところから始まります。ラウンジは見事な1970年代様式で、フロントカウンターの脇にはレコードが所狭しとディスプレイ。アイスクリームを舐めながら接客するというフロントスタッフのカジュアルさも新鮮。
一番の醍醐味は「JOSH HOTEL」のロゴの入ったクラシカルなプール。プールの見えるレストランでコンチネンタルの朝食をいただいたり、プールサイドのデッキチェアで日光浴したりと一日中ホテルで楽しむことができます。
このホテルには、プールやシネマの他に、「Marigold」というカフェ&レストラン、「Pool Bar」というBAR、「Hello Summer」というアイスクリームショップ、「SUNBATH」というスイムウェアショップが併設されており、コンテンツが盛りだくさん。
ホテルという様式の中で、タイのトレンドカルチャーを体感することのできる場所でした。
やっぱりプールサイドで過ごしたい
プールサイドって最高だと思う。
海辺、川岸、湖畔、プールサイド。人がくつろぎを感じる場所はなぜかいつも水のそばにあるような気がします。その中でも、プールサイドはホテルでしか楽しめない醍醐味。もちろん、市民プールやプールのレジャー施設などもあるけれど、水に浸かるための空間ではなく、水辺で過ごすための空間として楽しむことができるプールは基本的にはホテルにしかないのではないでしょうか。朝食、日光浴、昼寝、少し水に浸かって、コーヒーを飲んでお酒を飲んで語らって……。プールサイドで過ごす時間はホテルの楽しみを広げて加速させる時間で、プールさえあれば、ホテルがたとえコンクリートジャングルの中にあったとしても都会のオアシスへと生まれ変わります。
旅の刺激でざわついた心を和ませ、何気ない時間を非日常に変えるプールサイド。
子供向けのレジャープールでもなく、スイムキャップ必須のジムのプールでもなく、裸で男女別々で入る温泉でもなく、日光を浴びながら水辺で過ごす時間を生み出してくれるプールのあるホテルが日本でも増えることを願っています。