時代が変われば、価値観も変わる。だけどやっぱり、目の前に立ちはだかる「世間の常識」や「こうあるべき姿」にぶつかり、立ち止まってしまうことがあります。そんななかで「私は私、あなたはあなた」という考えを、生き生きと、のびのびと、体現し発信しているニュージェネレーションたちが、これまでの正しさにしばられない「メディア」をつくり始めています。
ニューヨークに拠点を置く『HEAPS Magazine』の編集長・さこさん、現役大学生を中心としたインディペンデントマガジン『HIGH(er)magazine』の編集長・haru.さん、女の子たちのためのオンラインマガジン『Sister Magazine』を立ち上げたScarlet & Juneのつかささんとほのかさんは、全員がミレニアル世代とよばれる、20代の女性たち。「こうあるべき」にしばられずにメディアを牽引し、意見を表明する彼女らが、これからの時代の気持ちいい生き方、働き方、コミュニティづくりをアップデートする座談会。ニューヨーク、フランス、日本をスカイプでつなげば、新しい扉が開きます。ハロー、ニューワールド!
ひとりひとりがおもしろおかしく人生を生き抜くアイデアを届けたい。私たちの世代の目線で。(さこ)
─今日は集まっていただいた3組のメディアのみなさんは、既存のシステムやメディアの「こうあるべき」という価値観をアップデートして、考えを深めたり対話したりする場所をつくっていますよね。まずは、それぞれのメディアについてお話しいただけますか?
さこ(『HEAPS Magazine』):『HEAPS Magazine』(以下、『HEAPS』)はニューヨークに拠点があって、世界中のカウンターカルチャーをいち早く取材して、日本に紹介するウェブメディアです。カルチャーの語源は「土を耕す」という意味。一から土を耕して種をまいて育てるように、社会の当たり前に対して抗い、アイデアでチャレンジしている新しい取り組みを取り上げています。
『HEAPS』のメッセージは「時代と社会の、決まり文句にとらわれない」。具体的には、世界各地の同世代はいま何をしていて、どう生きているのか? 新しいライフスタイルは? 親世代までの常識を疑って、どんなことに挑戦するのか? 常識を覆してきた先人たちは? ……といったことを扱います。私たちの世代の目線で、自分たちが知るべきカウンターカルチャーのストーリーを伝えて、ひとりひとりがおもしろおかしく人生を生き抜くアイデアを届けたいなと思っています。
さこ(『HEAPS Magazine』編集長)のInstagramより
haru.(『HIGH(er)magazine』):わあ、すごく共感します。『HIGH(er)magazine』もメッセージが似ていて、多様な生き方や考え方を伝えることで、自分の生き方を見直したり、こんな自由な考え方があるんだと知ってもらいたい。そんなきっかけをつくるマガジンになったらいいなと思って、始めました。
取り上げる内容は、自分の身体に起きていることから社会の動きまで、いま私たちが伝えたいことだけを伝えます。たとえば、前回の号では「どの生理用ナプキンが心地よいか」というレビューをまとめたり。
haru.(『HIGH(er)magazine』編集長)のInstagramより
さこ:最高ー! おもしろそうな企画ですね。
haru.:意外とみんな、自分にとって一番心地よい生理用品を知らないんです。あとは、『BIGISSUE』を立ち上げた方にインタビューしたり、毎号テーマは広いです。ビジュアルも大事にしていて、衣装から撮影まで周りのクリエイターに協力してもらって、ファッションもカルチャーもごちゃまぜの雑誌ですね。
ほのか(Scerlet & June):私たちもみなさんと同じで、自分たちが書きたいことを書ける場所にしたいと思って、『Sister Magazine』をつくりました。きっかけは、子どもの頃から女の子がつくったブログやメディアがとても好きで。日本の大きなメディアには大人が書かせたいこと、言わせたいことを特集している空気を感じていたので、子供の頃初めてネットに触れたとき、同世代の子たちだけで自由に話す場があることに感動したんです。
haru.:わかる! 日本のメディアは、自分たちが本当にやりたいことを特集しているというよりも、他の事情によって、やらされている感があるものが多いですよね。
ほのか:そうなんです。それで『ROOKIE YEARBOOK ONE』(11歳で立ち上げたファッションブログが世界の注目を集めたタヴィ・ゲヴィンソン。彼女が15歳で立ち上げたオンラインメディア『Rookie』を自ら再編集したビジュアルブック)の翻訳インターンでつかさと知り合って、楽しいことや悲しいこと、「女の子が姉妹のように語り合える場所をつくりたい」という思いで『Sister Magazine』をスタートして。自分の好きな映画や音楽について語りたかったり、部活をがんばっていたり夢があったり、家や学校で嫌なことがあったりとか、みんなに何かを話したいと思っている子たちに集まってもらって、それぞれの個人的な話を書いてもらっていました。
自分たちが正直になれる居場所をつくっているだけ。(haru.)
─「社会変革」のような大きな言葉ではなくて、モチベーションとしては、自分とその周りのコミュニティに発信している感じですね。自分たちのリアリティを大事にしながら、身近な違和感や気づきに向き合っている。
haru.:そうですね。結構意見をはっきりと言うので、よく「世界を変えたいんですか?」と聞かれるんですけど、そんなことは思っていないんです。ただ、自分たちが伝えたいことを伝えられる、正直になれる居場所をつくっているだけ。読んでくれた人たちが、社会と自分を少しずつ楽しんでもらえるようになったらいいな、くらいの願望はあるのですが。
さこ:『HEAPS』も世界中のおもしろい取り組みを取り上げているから、変革者のように思われがちだけど、全然そんな大きなモチベーションじゃないんです。どちらかといえば、個人それぞれが自分が納得のできる選択をしていけば結果的に社会は変わる、と思っています。haru.さんとおんなじ気持ち。
haru.:大人から「こういう若者がいて心強い」とかも言われるけど、自分たちのためにやっているんだから安心されても困る(笑)。どのジェネレーションも、それぞれ不安を抱えているんだから、それぞれのやり方で頑張ったうえでアイデアをシェアするのがいいんじゃないかと思っています。
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