紗倉まなが肯定する気持ちいい生き方「ときには逃げることも大事」

紗倉まなが肯定する気持ちいい生き方
「ときには逃げることも大事」

誰のために生きているわけではなくて、自分の人生を生きている

2017年11月 特集:ははとむすめ
インタビュー・テキスト:羽佐田瑶子 撮影:森山将人 編集:野村由芽
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私はAV女優になりたかったわけだし、正しい道ってなんだろう? と思う。

─『最低。』では、AV女優の道を選んだ女性とその母の葛藤が物語の大きなテーマとして描かれています。親との確執を抱えている人がいることを踏まえてのエピソードだと思うのですが、紗倉さんご自身が、この仕事を始めたときのお母さまの反応は?

紗倉:高専のときにAVデビューしたんですけど、東京に行った電車の領収書とかを見て、こっそりなにかしていることは察していたと思います。母に最初に打ち明けたときは否定も応援もなく、ひたすら驚いていましたけどね。ただ、AVメーカーへの所属が決まってから、後戻りができない状況で打ち明けたので、「まなが決めたなら応援する」と結果的には認めてくれて。

母にAV出演を問い詰められる綾乃(佐々木心音)。『最低。』には、自分の人生を変える3人の女性が出てくる / 『最低。』 ©2017 KADOKAWA

─反対されていたら、今とまったく同じように仕事はできていなかったかもしれませんよね。

紗倉:できていないと思います。AV女優を始めた頃、学校にバレてしまって大変なことになったんですけど、そのときも母が一緒に嘘を貫いてくれて。最初は反対されると思っていたので親の反応には驚きましたけど、いろいろ考えた末に認めてくれたことを考えると、私以上に気持ちの強い人というか、愛情が深い人なんだと思います。

AV女優には「身バレ」という問題があって、それでやめてしまう人もいるのですが、「バレるくらい有名になれたらいいし、バレたなら仕事として向いているんじゃない」って言ってくれたこともありました。私はお金を稼ぐことも好きだし(笑)、根は暗いんだけど、いざ外に出ると活発になれるタイプ。そのあたりも理解して背中をおしてくれたんじゃないかな。

─強力な味方になってくれたんですね。紗倉さんのことを理解していらっしゃるお母さまですが、これまでどんなコミュニケーションをとってきたんですか?

紗倉:反抗期が長くて小4から中3ぐらいまでケンカばかりしていたし、私からはあんまり相談したりしないんですけど、悩んでいるときには察して話しかけてくれる。母親はネットストーカーで私のエゴサーチをいつもしているので、私より私に詳しいんですよ(笑)。グラビアで出ている雑誌は必ず買って、スクラップブックにしてくれていて。さすがにAVとか行為中の裸の写真は入っていないと思うんですけど、集めるのが楽しいって言っていました。そのせいで近所のコンビニでは、いつもエロ本を買うおばさんって言われているみたいです(笑)。

─紗倉さんのことをよく見ているのかもしれませんね。お母さまから言われた言葉で、心に残っていることはありますか?

紗倉:銭湯やお風呂場に行くと、「(身体の)線がいいわねえ。綺麗ねえ。」って。もともと自信がないタイプだった娘に、褒めて自信をつける言葉をたくさんかけてくれたのは大きかったと思います。母親のような存在がいなかったら悩みごとももっと多かったし、今みたいなかたちで仕事を続けられているかもわからないですし。

─素敵なお母さまですね。

紗倉:……そう言ってもらえると嬉しいです。「紗倉まなの母親はおかしい」「母親なんだから正しい道へ導くべき」みたいに、母親がAV女優という仕事に肯定的なことに対して否定的な意見を言われることも多くて。でも、私はAV女優になりたかったわけだし、じゃあ正しい道ってなんだろう? と思いますね。

自分の心を守るためには、ときに逃げることも大事だと思います。

─AV女優にかぎらず、仕事やプライベートで親との関係がうまくいかないと、自己肯定感が生まれにくいですよね。今まさに家族に自分の選択を反対されている人に対して、紗倉さんの意見をお聞かせいただけたら。

紗倉:具体的な解決策は、関係性によりけりなので難しいんですけど……。母親もひとりの女性だし、父親もひとりの男性だというふうに、自分と親を切り離して親もひとりの人間だと考えてみるといいんじゃないかなと思います。私も両親が離婚したときに、子どもながら、「ああ、父親と母親も男女なんだな」と思ったんですよね。母親は女性として自分の道を選ぶし、私もひとりの女性としてやりたいことを選択する。

AVにかぎらず表に出る職業の子で、メジャーになっても親が認めてくれず、勘当されている子もいるとよく聞きます。好きな仕事なのに、自己肯定感が生まれずに苦しく続けるのは切ないじゃないですか。たしかに、自分は親があっての存在だけれども、親に肯定してもらうために生きているわけではないと思うんですよね。

─『最低。』の原作に、「親の思い通りに生きるために子どもだって生まれてくるわけじゃないっつうに。立派な大学を出ろ、安定した職につけ、結婚してよき妻になれ、早めに子どもを産めだとか、散々や。それがゴールじゃないなんてまったくわかっていない──親なのに悪霊のようにとり憑いて、子どもは一生苦しむんや。やりたいこと、思う存分やったらええんちゃう?」というセリフがありましたね。

紗倉まな『最低。』(Amazonで見る

紗倉:そもそもやりたいことを探すのって難しいと思うし、せっかく好きな仕事が見つかったのに、それをがんばっていることを認めてもらえないのは悲しいですよね。母親も私もひとりの女性として、自分の価値は自分で肯定するという考え方に、振り切るしかないかなと思います。

もちろん、親と自分を切り離したくても、それこそ悪霊のようにしつこくつきまとわれることもあると思います。でも逆に親だったら、とことん逃げてもいいのかな、とも思うんですよね。血はつながっていても、やっぱり別々の人間。自分を全部理解されなくてもいいし、理解できないことが親不孝でもないと思うんです。親のために生きているわけではなくて、自分の人生を生きているんだから、自分の心を守るためには、ときに逃げることも大事だと思います。

PROFILE

紗倉まな
紗倉まな

1993年生まれ、千葉県出身。工業高等専門学校在学中の2012年にSODクリエイトの専属女優としてAVデビュー。2015年にはスカパー!アダルト放送大賞で史上初の三冠を達成する。テレビ出演や雑誌グラビアでも活躍し、『週刊プレイボーイ』(集英社)、『messy』(サイゾー)でコラム連載。著書に『最低。』『凹凸』(KADOKAWA)、エッセイ集『高専生だった私が出会った世界でたった一つの天職』(宝島社)、スタイルブック『MANA』(サイゾー)がある。

INFORMATION

作品情報
作品情報
『最低。』

2017年11月25日(土)から角川シネマ新宿ほか全国公開

監督:瀬々敬久
脚本:小川智子、瀬々敬久
原作:紗倉まな『最低。』(KADOKAWA/メディアファクトリー)
主題歌:泉まくら“ふちどり”
出演:
森口彩乃
佐々木心音
山田愛奈
忍成修吾
森岡龍
斉藤陽一郎
江口のりこ
渡辺真起子
根岸季衣
高岡早紀
上映時間:121分
配給:KADOKAWA

映画『最低。』オフィシャルサイト

リリース情報
リリース情報
紗倉まな『最低。』

紗倉まな『最低。』(文庫)
2017年9月23日(土)発売
価格:605円(税込)
発行:KADOKAWA

Amazon

紗倉まな『凹凸』

2017年3月18日(土)発売
価格:1,296円(税込)
発行:KADOKAWA/メディアファクトリー

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