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能町みね子×植本一子 「こうあるべき」を壊す二人のパートナー観

能町みね子×植本一子
「こうあるべき」を壊す二人のパートナー観

「恋愛」も「結婚」も、決して一言ではくくれない

2017年12月 特集:だれと生きる?
インタビュー・テキスト:野村由芽 撮影:西田香織
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私は、自己肯定感の低さを埋めるために誰かを求めてしまっていたのかもしれない。(植本)

─能町さんとサムソンさんの関係はいわゆる「恋愛」ではないけど、人間的な好意や柔らかい愛みたいなものはありますよね。能町さんがおっしゃっているのは、恋愛を否定することではなくて、恋愛の形をひとくくりにしてしまうことや、恋愛をなによりも一番重要なものと捉えるような感覚に違和感を提示されている、ということなのかなと思いました。「恋愛」も「結婚」や「パートナー」同様、いろんな形があっていいし、それが当然というか。

能町:そうですね、否定はまったくしていないです。強制されるのが嫌なだけで。

植本:私は今、恋愛に関して本当にわからなくなってしまっていて。心理学の本を読んだりして、めちゃめちゃ勉強しているんです。カウンセリングに行くようになって、自分のことを分析するようになったのですが、今は精神的に苦しいので、誰かを好きになっても、これは相手を好きなわけじゃなくて自分の傷や穴を埋めたいだけであって、本当に相手を好きだとは言えないんじゃないかということになって。

そう考えると、今まで付き合ってきた人も、好きじゃなかった、というところに行き着いてしまって……。「あれ、人を好きになったことなんてないのかな?」と、すっごく「ガーン」ってなっています。難しい。

能町:それは、ガーンですね。

植本:私は、自己肯定感の低さを埋めるために誰かを求めてしまっていたのかもしれないと思い返しているんです。だから、恋愛めいたものは繰り返してきたし、数は多いけれど、結局親からもらえなかったものを、一線を超えた恋人みたいな対象に全部求めがちで、それで毎回相手を疲れさせてしまう。

─カウンセリングの結果、それを恋愛と言えるのかというと、もしかしたらちょっと違うんじゃないかということになったと。

植本:そう。そもそも恋愛というものの定義が何かもわからないけど、少なくとも、私がしてきたのは人を好きになるということじゃないのでは、ということに今行き着いているんです。ガーンですよ。

能町:カウンセリング受けたくなってきましたね。

植本:カウンセリングはすごいですよ。

人に頼っちゃだめということではないんですよね。周りの人と必要なときに助け合って、心のバランスを取ろうと思って。(植本)

能町:私、恋愛に関してはすごく複雑な思いがあって、簡単に言っちゃうと、あまり人を好きにならないんですよね。そしてそれは、さっき話したように、「常識的」には生きられないという自分のコンプレックスが相当強いからなんですよ。

だから「ちょっとこの人好きかもな」という予感がしても、「どうせうまくいかない」という気持ちが先にきてしまって、バーンとシャットアウトしてしまう。

植本:ああ、傷つきたくないんですね。

能町:傷つきたくないし、その人との未来が全く想像できないんですよ。この人と付き合って楽しそう、幸せそう、というのがひとつも思い浮かばない。かと言って、好きだと言われた人と付き合っても、長く続かないし。

植本:そうやって考えていくと、最近は大切な友達と仲良くしているのが本当に一番だなあと思うようになってきて。これまでは、友達は友達、恋人は恋人って別物に思っていたんですけど、友達のほうがずっと長く付き合えるし仲良くできるから、友達と結婚したり付き合ったりすることもあり得るんだな、ってやっと考えられるようになってきました。それはやっぱり、感情的に一線を超えないことが大切なのかなと思うのですが。

能町:今の人とはまさにそういうシステムですね。サムソンさんは、友達で、友達と結婚しようとしている。自分に合った形を模索してそういう考えに至ったわけですが、少し前に思ったのが、お店でかわいいものを見つけたときに「これ、友達が好きそうだから、あげたいな」とは自然に思うけど、恋愛対象になりえる男の人に対してはそう思ったことがなくて。それで、友達と一緒にいたほうが私にとっては自然なんだなと気づいたんですよね。

サムソンさんには、「これあげよう」とか「これ教えてあげよう」とか思うんですよ。この前も「この人、絶対にタイプでしょう」ってメールで太ったおじさんの写真を送って、すごく喜ばれました。どういう関係なんだろう? って自分でも思うんですけど(笑)。

植本:いい関係ですね。私は、今は石田さんの看病があって気持ち的にも体力的にもやっぱり弱気になっているから、男の人に頼りたくなってしまうこともあるんですけど、それは相手を本当に好きだということではないよな、と立ち止まるようになりました。でも、人に頼っちゃだめということではないんですよね。いいなと思う人とは友達のように接したり、男女問わず、本当に仲が良い友達がいっぱいいるから、周りのそういう人たちと必要なときに助け合って、心のバランスを取ろうと思って。

PROFILE

能町みね子
能町みね子

北海道出身。近著「雑誌の人格」「雑誌の人格2冊目」(共に文化出版局)、「ほじくりストリートビュー」(交通新聞社)、「逃北」「言葉尻とらえ隊」(文春文庫)、「ときめかない日記」(幻冬舎文庫)など。ほか雑誌連載多数、テレビ・ラジオにも出演。

植本一子
植本一子

1984年、広島県生まれ。2003年、キヤノン写真新世紀で荒木経惟氏より優秀賞を受賞し写真家としてのキャリアをスタートさせる。広告、雑誌、CDジャケット、PV等幅広く活動中。13年より下北沢に自然光を使った写真館「天然スタジオ」を立ち上げ、一般家庭の記念撮影をライフワークとしている。著書に『働けECD わたしの育児混沌記』『かなわない』『家族最後の日』、共著に『ホームシック 生活(2〜3人分)』(ECDとの共著)がある。

INFORMATION

リリース情報
リリース情報
能町みね子
『雑誌の人格 2冊目』

2017年12月22日(金)発売
価格:1,620円(税込)
発行:文化出版局
Amazon

リリース情報
リリース情報
植本一子
『降伏の記録』

2017年10月26日(木)
価格:1,944円(税込)
発行:河出書房新社
Amazon

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