ミレニアル世代の登場によって、ポルノ業界も世代交代を迎えています。
―確かに、自分のしたいことや想いを妨げているものがあるとしたら、それは取り除いたほうがいいですよね。
「セックス」にもいろいろあると思うのですが、MLNPはその名称の由来の通り、ポルノと個人的なセックスを区別することを打ち出しています。その区別がついていない人が多いという認識があったということですか?
シンディ:立ち上げのきっかけとしてはそうでした。でも実は、MLNPを立ち上げて継続していくにあたって、一見競合とも思えるポルノ業界がサポートに入ってくれました。今は20代のいわゆるミレニアル世代の人たちが監督または主演女優や男優をしていて、ポルノ業界も世代交代を迎えているんですよね。彼らがMLNPに共感してくれたのは嬉しかったです。
―どんな部分に共感されたのですか?
シンディ:彼らにとっても、仕事として行うセックスと、プライベートで愛する人と行うセックスはまったく違うもの。MLNPには、ポルノ女優、あるいは男優たちが自分たちのプライベートのセックスを撮影した動画もアップロードされています。
「ポルノ作品で演技をしている自分」と、そうではない「生身の人間としての自分」の2つの側面を区別してもらうために、または自身の人間的な側面を普段のセックスを通して知ってもらうために。ポルノを観ている側も、それによって演じている俳優や女優を自分たちと同じような一人の人間として見ることができるようになっていきます。
平等であるということは、どのジェンダーにとってもいいことのはずだから。
―作品の発信者と受け手の関係性において、それはすごく想像力のある、進歩的なコミュニケーションですね。
シンディ:あとは出演者だけではなく、作り手や視聴者すべての男女比が半分ずつになったとき、ポルノ産業で働く人たち、それを観る人たちがもっと健全になるかもしれません。もともとポルノ業界自体が男性によってつくられた産業であり、内容もほとんどが男性目線だから。
―スウェーデン出身のエリカ・ラストさんなど、最近は女性監督が従来のポルノに違和感のある人に向けて多様なセックス観を提示する作品づくりの動きがありますが、もっとそれが広がっていくといいですよね。
シンディ:私自身もポルノ業界を変えていく代弁者になっていかなければいけないと感じていますし、他の業界においても男女比をできる限り同程度にしていくことが、これからの社会を変える一つの指標になると思っているんです。
―どのジェンダーだからいいとかだめではなくて、多様な視点を持った意見や感性を入れていくことが大切ということですよね。
それがポルノで言うと、男性目線でつくられている作品が多いことで、女性の意見や感性が作品に反映されずに、ある種のストレスや違和感、あるいはもっと深刻な社会的影響につながっていく状況がある。だからこそ、積極的に多様な視点を入れていくことで、従来のやり方に違和感を持っている人たちの生きづらさが助けられるというか。
シンディ:そうですね。だからまずは、普段感じている生きづらさがあるならば、何がそうさせているのかをリストアップして、どんなに小さいことでもいいから、それをポジティブに変えていく工夫をしてみるのがいいと思います。女性の話で言えば、今世界的に女性が抱えている問題って、ビジネスに直結する可能性が高いものが多いと思うんです。たとえば保育園の問題だったり、もしくは介護だったり。
―たしかにそうですね。
シンディ:女性たちが自らビジネスを立ち上げたり、より稼ぎ始めると、男性が女性を見る目や関係性、社会のありかたがさらに変わっていくと感じます。たとえば家庭において家事や育児を主に担ってきた女性の社長が増えたら、長時間労働の問題なども今よりきっと改善されると思いますし。それはけして男性がおびやかされるということではなく、ジェンダーを問わず、知らなかった幸せに気づく機会が増えることになるのではないでしょうか。平等であるということは、誰にとってもいいことのはずだから。