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あっこゴリラ×super-KIKI×宮越里子 自分を取り戻した君は無敵

あっこゴリラ×super-KIKI×宮越里子
自分を取り戻した君は無敵

ラップやファッション、ZINEで自分の声を発信する三者

2018年5月 特集:生活をつくる
インタビュー・テキスト:松井友里 撮影:山本佳代子 企画:砂糖シヲリ 編集:野村由芽
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<場違い繰り返したら 何年かすれば それが“普通” となっているでしょう>と、再メジャーデビュー作“余裕”のリリックにおいて、あえて空気を読まないことで、「当たり前」とされている価値観を書き換えていくことを歌う、ラッパー・あっこゴリラさん。そして、宮越里子さんとsuper-KIKIさんの姉妹は、同じ志を持つ人たちと制作しているZINE『NEW ERA Ladies』などにおいて、主にジェンダーに関する先入観や固定観念を問い直す活動を行ってきました。

日常のなかで自身が感じてきた違和感や疑問、怒りを、それぞれの手段で実践的に表明し続けてきた3名。一人一人が自分の心を消費せずに、今いる場所から生活をつくっていくにはどうしたらよいのか? 手探りで自身の視界を開いてきた彼女たちの言葉には、たくさんのヒントが詰まっています。初対面にもかかわらず、驚くほど意気投合した三人の鼎談は、super-KIKIさんが制作した、パワフルなお洋服を身につけて始まりました。

生まれ持った属性や社会からかけられた呪いを打ち砕くことができるのも、ファッションの力のひとつ。(super-KIKI)

super-KIKI宮越里子(以下、KIKI・里子):今日はお会いできて嬉しいです!

あっこゴリラ(以下、あっこ):こちらこそ! お会いする前に(super-)KIKIさんのInstagramを見て、「私と一緒だ、間違いない。しっくりくる」と思ったんです。今日の服をスタイリングしてもらったんですけど、赤と青を組み合わせるところにシンパシーを感じて……というのも、私の前の家、カーペットが赤でカーテンが青だったの(笑)。こういうふうに自由で、パワーがもらえるスタイリングってなかなかないから、すごく嬉しい。

KIKI:めちゃくちゃ光栄です……。

左から:宮越里子さん、あっこゴリラさん(ヘアメイク:クジメグミ/LUCK HAIR)、super-KIKIさん

—KIKIさんがお洋服という方法で表現を始めたのはなぜだったのでしょうか?

KIKI:もともと服をリメイクしたりするのは好きでした。私は喋りがうまいほうじゃないので何か伝えたいことがあるときに自分が身につけられるものにメッセージが入っていたらいいなと思って、持っている服にプリントし始めたのがきっかけです。生活に溶け込む(デモに持っていく)プラカードのような、個人の声を伝えやすくするツールのひとつだと思ってます。あとは、生まれ持った属性や社会からかけられた呪いを打ち砕くのも、ファッションの力のひとつだと思っていて。

super-KIKIさんによる手作りの衣装。赤色のつなぎは「脱毛が女子力」という価値観に対して「ツルツルでもボーボーでも選択肢があってよくない?」というメッセージのプリントが施されている。

KIKI:たとえば「太ってる」とか「痩せてる」とか「ババア」とか「若い」とか、中身より先に見た目をジャッジされてその考えを自分でも内面化してしまい「私にはこの服を着る価値がない」とか自信をなくしてしまうことってありますよね。でも自分が好きな服やメイクを選択して街を歩くことは、自分自身の想像力、自分の手で掴み取ったセンスを見せつけること。それが評価されたり、誰も評価しなくても自分自身が思いっきり「かわいい! かっこいい!」と思えればそれが自己肯定につながっていく。

あっこゴリラちゃんを見て、「空気を読まないことを完成させた人がここにいる」と思って。(里子)

—思うままに装うことは自尊心を守ることに繋がるし、なおかつ他者に向けて自己を発信する手段にもなるということですね。

KIKI:この間、『東京レインボープライド』というイベントで、同性愛やいろいろな性の自由とフェミニズムのつながりをテーマにしたフロートを姉がデザインして、私はイラストを描かせてもらって。韓国から来たDJの Seeseaさんが最高の音楽を流すトラックについてみんなで歩きました。そこに参加した人たちに、私のつくった衣装を使って自由にスタイリングしてもらい、歩いてもらったんです。

あっこ:写真見たけど最高だった!

『東京レインボープライド』の様子(撮影:長谷川唯)

super-KIKIさんの服を着てパレードしている様子(撮影:長谷川唯)

KIKI:彼女たちや彼らがこうしてカラフルで思い思いの格好をして先頭に躍り出て、大声で「MY BODY MY CHOICE!」とか「クィアパワー!」「私の人生は私が決める!」といったコールをしている様子に、その場にいる人もエンパワーメントされたんじゃないかな。

『東京レインボープライド』の「虹」とかけて、「ニジマス」に「MY BODY MY CHOICE」と書いてあるタトゥーシール。

里子:普段は服装がおとなしめな感じの子が、スパンコールやド派手な服を身につけたり、クィアでパンツしか履いていなかった子が初めてスカート履いてすごく楽しそうでした。パレードの最中も、見たことないくらいパワフルに踊って叫んだりしているのを見て、私も追いつけないくらいエネルギッシュで驚きました。

実は、そのときフロートに乗ってくれるDJやミュージシャンの人は誰がいいかな? って話していて、あっこゴリラちゃんの名前も出ていたんですけど。

あっこ:ええー!

里子:歌詞も行動もファッションもずっと注目していました。『水曜The NIGHT』っていうライムスター宇多丸さんの番組にあっこゴリラちゃんが出たときに、番組の最後にさらっと「次回は生理の話をしたいと思います」って言ってて、さすがだなって。

私は「空気を読め(KY)」と散々言われてきたので、ラッパーのRUMIさんが「あえて空気読みません」っていう曲を出したときに( “A.K.Y” )、いい意味で「やばいな」と思っていたんだけど、その番組を見て、「空気を読まないことを完成させた人がここにいる」と思って。しかもそれを自虐ネタじゃなくポジティブにやっているところがすごくいいなって。

KIKI:私は自分の活動に対していろいろとネガティブなことを言われることも多いのですが、実は結構打たれ弱いので(笑)、今回のインタビューで自分の顔を出して話をすることに対して、どうしようっていう迷いもあったんです。でもあっこちゃんの新曲(“余裕”)のMVを見て「あ、これは私も堂々とやらなきゃいけないな」って。

あっこ:それは嬉しいなあ。

KIKI:<何度でもたちなおれるんだ>って歌詞があるように、「失敗してもやり直せる」ってあっこちゃんが言ってくれてはっとした。「そうだよね、だったら精一杯やろう」って。

PROFILE

あっこゴリラ
あっこゴリラ

レペゼン地球のラッパー。リズムで会話する動物、ゴリラに魅了され、ドラマー時代に「あっこゴリラ」と名乗りはじめる。ラップ・トラックメイクを自身が行い、また元々ドラマーという異色な経歴から自由に生み出されるラップスタイルは、唯一無二の形を提示している。様々なジャンルのイベントに参加するが、彼女がステージに立てばどんな場所でも其処はBack to the Jungleと化す。2017年には、日本初の女性のみのMCバトル「CINDERELLA MCBATTLE」にて優勝。「ゲリラ」がSpotifyのCMに抜擢され、楽曲も高い評価を得る。2018年4月、バンド時代に在籍したソニー・ミュージックからラッパーとして「余裕」で再メジャーデビューを果たす。

宮越里子
宮越里子

フリーランス・デザイナー。
神奈川県川崎区生まれ。デザイン事務所1社、((STUDIO))、YUMORE.を経て独立。『ミュージック・マガジン』『AERA』など、エディトリアルデザイン、グラフィックデザインを中心に手がける。
共同制作として、フェミニズムZINE『NEW ERA Ladies』企画・デザイン担当。文化と政治と日常を繋ぐ、セレクトポップアップ・ストア『CUSMOS(カルチャーに政治を持ち込んですいません)』発起人。〈人権と平等〉ヴィジョンを大衆文化と繋げるべく、思想、デザインともに提案・制作中。

super-KIKI
super-KIKI

「路上と日常と文化を切り離さない」をテーマに、2011年よりデモや抗議活動に参加しながら自分の身の周りに起きている問題から感じたメッセージを、主にシルクスクリーンやステンシル等DIYツールを使ってアパレルグッズなど人が身につけられるものに落とし込んだアイテムを中心に制作。路上のプラカードやスピーチを引用することも多い。
フェミニズムZINE『NEW ERA Ladies』ではイラスト、ファッション、漫画レビューを担当。個の自由と尊厳を尊重する事の難しさと戦いつつ地道に切り拓く表現に挑戦中。

INFORMATION

リリース情報
リリース情報
あっこゴリラ
『余裕』

2018年4月28日(土)配信リリース
あっこゴリラ「余裕」

イベント情報
イベント情報
『THE M/ALL』

2018年5月26日(土)
会場:東京都 渋谷 WWW、WWWX、WWWβ、GALLERY X BY PARCO

WWW、WWWX、WWWβ出演:
コムアイ
BudaMunk
MOMENT JOON
odd eyes
行松陽介
1017 Muney
Gotch
Awich
田我流
Yellow Fang
テンテンコ
Maika Loubté
Bullsxxt
GALLERY X BY PARCO出演:
野村由芽(She is)
桑原亮子(NeoL)
村田実莉
ヌケメ
歌代ニーナ
JUN(Be inspired!)
UMMMI.
五野井郁夫
奥田愛基
中川えりな(Making-Love Club)
haru.(HIGH(er)magazine)
『THE M/ALL』

あっこゴリラ presents『ドンキーコング vol.4』

2018年6月30日(土)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:東京都 六本木 Varit
料金:前売2,500円 / 当3,000円(ドリンク別)
出演:
あっこゴリラ&BNNZ、Tempalay、PARKGOLF
展示:
super-KIKI

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