あっこゴリラ×super-KIKI×宮越里子 自分を取り戻した君は無敵

あっこゴリラ×super-KIKI×宮越里子
自分を取り戻した君は無敵

ラップやファッション、ZINEで自分の声を発信する三者

2018年5月 特集:生活をつくる
インタビュー・テキスト:松井友里 撮影:山本佳代子 企画:砂糖シヲリ 編集:野村由芽
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ラップをしながら、「これは思い込みや刷り込みなんじゃないか」っていう自分のクエスチョンにひとつひとつ答えを出していった。(あっこゴリラ)

—あっこさんが以前に別のインタビューで「ラップをすることで自分の自尊心を取り戻すことができた」とお話しされているのを読んで、受け身ではなく発信することが自分の尊厳を回復する手立てになったという点が、先ほどのKIKIさんのお洋服のお話と重なるように思いました。

あっこ:そうかもしれないです。自分も言いたいことが言えなかった時期は、付き合ってる男の人に合わせたりしていましたからね。そのときの自分は、すごく死んだ顔をしていました。

一同:(笑)。

里子:前にライブのMCで「愛想笑いを止めた」ってお話ししてましたよね。自分がくだらないと思う自分を、ひとつずつ破壊していったって。

あっこ:私は小5で初めて女友達ができたんです。それまでの私はかけっこで1位なのが当たり前で、全員蹴落として当たり前くらいの気持ちでマイペースにやっていたんですけど、そこから空気を読むことを知って、「こういうルールがあるんだ」とか「このグループにはこういうヒエラルキーがあるからこういう発言は控えなきゃ」みたいなことを学んで。最初は何も知らなかったから「なるほどな」みたいな感覚だったんですけど。

—未知のことを吸収していったんですね。

あっこ:でも、それがいきすぎちゃったんですよね。具体的に言うと、自分は周りの人より生理になるのが遅かったんですよ。だから「あっこまだなの?」みたいにバカにされたことがすごく嫌だったんだけど、生理になったときに「おめでとう、うちらの仲間入りじゃん」みたいに言われたのも、めちゃくちゃ違和感があって。なんでそんなに簡単に性を受け入れられるの? って。だけど、周りの空気を読むのが当たり前とされてる空間のなかで、そういう思考は生きづらいだけで無駄だと思い、捨ててしまったんです。

でもその違和感を封印し続けるうちに、ダムが決壊するタイミングがきてしまった。それでラップをしながら、「これは思い込みや刷り込みなんじゃないか」っていう自分のクエスチョンにひとつひとつ答えを出していったら、それまでにたくさんの違和感や疑問をないがしろにしていたことがわかりました。ラップをすることで、一歩一歩、地に足をつける感覚を取り戻していった感じなんです。

—ラップという言語化する行為を通して、自分の違和感や疑問が明確になっていったのでしょうか?

あっこ:そうですね、考えを言葉にして大勢の人の前で発することで、どんどん変わっていきました。最初は、言いたいことを言うといっても、自分の言いたいことが何なのか言葉ではわからなくて。理由よりもまず衝動が勝ってたんですよね。でもとにかくやらざるを得ない状況に追い込んで、言葉にするってことを繰り返してきました。

MCバトルはいろんな面において転機だったし、自分の違和感に気づくきっかけだった。(あっこゴリラ)

里子:前に、あっこちゃんがMCバトルで、相手がけなす言葉のつもりで「レズ」って言ったときに「レズ? 大好き ゲイ? 大好き みんな大好き」って返していて。私やKIKIはたとえばジェンダーの問題などを発信するときに、まずは理論武装しなきゃと思って、つい固くなりがちなんです。もちろん思想や理論も大事だけど、あっこちゃんは理解したうえでロジックを飛び越えた人間愛のようなものをバコーン! と伝えていたから、ああ、これだなって。みんなこれを聴いてほしいって思いましたね。

あっこ:そこ拾ってくれるの嬉しすぎる‼ MCバトルはいろんな面において転機だったし、自分が違和感を抱えていたことに気づくきっかけだったんです。バンド(HAPPY BIRTHDAY)が解散して仕事もゼロだし、誰からも期待されてない状態で、MCバトルに誘われて。そのときはMCバトル自体、知らなかったんですけど、出ることにして。

それで当日行ってみたら、女は私しかいないし、普段は接点がないような人たちばかりで、「これはやばい」と。でもここで帰ったら、私は一生ラッパーって名乗っちゃいけないんじゃないかと思って、無理やり出てブチかましたら、それがきっかけになって、イベントの誘いが来るようになったの。だけどMCバトルをやってみて、驚くことがいっぱいあって。女性がほぼいないのもそうだし、私「ブス」って1000回は言われているんですよね。

里子:私もバトルを見てめっちゃイラっとしちゃったことあるもん。

あっこ:そこだけすくい取ると、まるで男vs女みたいな構造ですけど、やはりMCバトルはあくまでスタンスvsスタンスなので、個々でムキになるのでなくあえて乗っかって「ブスじゃねえ、中の上だよ」とアンサーするのが、当時の私のスタイルでした。でもその後ラップに向き合っていくうちに、「そもそも中の上とかそういうモノサシすらどうでもよくね?」と考えるようになり、『CINDERELLA MC BATTLE』で優勝をきっかけにバトルに出るのをやめました。

初代優勝を決めた『CINDERELLA MC BATTLE』(2017年)

あっこ:本当にそれは本心からの主張なのかと自分の内側との対峙を繰り返していくうちに、多様性を認め合ってハンドメイドのモノサシで誇りを持ってる自分のほうが大事なんだと気づいて。その考えを濃縮させた曲をつくること、ライブをすること、今はそういうやり方で戦っていますね。

PROFILE

あっこゴリラ
あっこゴリラ

レペゼン地球のラッパー。リズムで会話する動物、ゴリラに魅了され、ドラマー時代に「あっこゴリラ」と名乗りはじめる。ラップ・トラックメイクを自身が行い、また元々ドラマーという異色な経歴から自由に生み出されるラップスタイルは、唯一無二の形を提示している。様々なジャンルのイベントに参加するが、彼女がステージに立てばどんな場所でも其処はBack to the Jungleと化す。2017年には、日本初の女性のみのMCバトル「CINDERELLA MCBATTLE」にて優勝。「ゲリラ」がSpotifyのCMに抜擢され、楽曲も高い評価を得る。2018年4月、バンド時代に在籍したソニー・ミュージックからラッパーとして「余裕」で再メジャーデビューを果たす。

宮越里子
宮越里子

フリーランス・デザイナー。
神奈川県川崎区生まれ。デザイン事務所1社、((STUDIO))、YUMORE.を経て独立。『ミュージック・マガジン』『AERA』など、エディトリアルデザイン、グラフィックデザインを中心に手がける。
共同制作として、フェミニズムZINE『NEW ERA Ladies』企画・デザイン担当。文化と政治と日常を繋ぐ、セレクトポップアップ・ストア『CUSMOS(カルチャーに政治を持ち込んですいません)』発起人。〈人権と平等〉ヴィジョンを大衆文化と繋げるべく、思想、デザインともに提案・制作中。

super-KIKI
super-KIKI

「路上と日常と文化を切り離さない」をテーマに、2011年よりデモや抗議活動に参加しながら自分の身の周りに起きている問題から感じたメッセージを、主にシルクスクリーンやステンシル等DIYツールを使ってアパレルグッズなど人が身につけられるものに落とし込んだアイテムを中心に制作。路上のプラカードやスピーチを引用することも多い。
フェミニズムZINE『NEW ERA Ladies』ではイラスト、ファッション、漫画レビューを担当。個の自由と尊厳を尊重する事の難しさと戦いつつ地道に切り拓く表現に挑戦中。

INFORMATION

リリース情報
リリース情報
あっこゴリラ
『余裕』

2018年4月28日(土)配信リリース
あっこゴリラ「余裕」

イベント情報
イベント情報
『THE M/ALL』

2018年5月26日(土)
会場:東京都 渋谷 WWW、WWWX、WWWβ、GALLERY X BY PARCO

WWW、WWWX、WWWβ出演:
コムアイ
BudaMunk
MOMENT JOON
odd eyes
行松陽介
1017 Muney
Gotch
Awich
田我流
Yellow Fang
テンテンコ
Maika Loubté
Bullsxxt
GALLERY X BY PARCO出演:
野村由芽(She is)
桑原亮子(NeoL)
村田実莉
ヌケメ
歌代ニーナ
JUN(Be inspired!)
UMMMI.
五野井郁夫
奥田愛基
中川えりな(Making-Love Club)
haru.(HIGH(er)magazine)
『THE M/ALL』

あっこゴリラ presents『ドンキーコング vol.4』

2018年6月30日(土)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:東京都 六本木 Varit
料金:前売2,500円 / 当3,000円(ドリンク別)
出演:
あっこゴリラ&BNNZ、Tempalay、PARKGOLF
展示:
super-KIKI

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