あっこゴリラ×super-KIKI×宮越里子 自分を取り戻した君は無敵

あっこゴリラ×super-KIKI×宮越里子
自分を取り戻した君は無敵

ラップやファッション、ZINEで自分の声を発信する三者

2018年5月 特集:生活をつくる
インタビュー・テキスト:松井友里 撮影:山本佳代子 企画:砂糖シヲリ 編集:野村由芽
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自分だけが幸せでも世の中はよくならないし、声をあげられなくて泣いている人を見るのは辛い。だったら、一緒に考えたいなって。(里子)

—“余裕”でも歌われている「空気を読まない」ことについては、KIKIさんと里子さんがつくっている『NEW ERA Ladies』(以下、『NEL』)の巻頭言でも書かれていますね。

KIKI:そうですね。

『NEW ERA Ladies』/1号目はフェミニズムは詳しくないけど、声をあげてみようという人たちが中心。2号目はフェミニズムは異性愛の女性だけのものじゃなく、性別関係なく性の格差や偏見をなくしたいという価値観の人たちと制作。

—立ち上げのきっかけは痴漢被害だったということですが、改めて教えていただけますか?

里子:クラブへ遊びに行ったときに、後ろを通るフリをしてお尻を掴んで揉まれて。昔は痴漢にあっても怖かったり、怒っても「お前なんか触らねえよ」と言われるんじゃないかと思って黙ってたのですが、東日本大震災以降、デモに行ったり人にインタビューをしたり、声を上げる作業をずっと続けていたから、嫌なことを嫌だと口に出すことができるように自分自身が変わっていたんです。だから、その場で犯人の胸ぐらを掴んで壁のほうに連れて行って……。

あっこ:勇気を出したんだね。

里子:そのときの周りの反応はさまざまでした。ニヤニヤしながら見学している人たちもいたし、「大丈夫ですか」って声をかけてくれた男の子も一人だけいて。私の女友達がその状況についてツイートしてくれたのですが、それがプチ炎上みたいになって、Twitterであらゆる人から「ほんとかよ」とか「パーティー台無しじゃん」といったことも言われました。

そういう反応が多いことに苛立ったし、世の中まったく変わってないって改めて感じて。これは私だけの問題じゃないなと思い、同じように考えてる人たちを集めてZINEをつくろうと始めたのが『NEL』です。自分だけが幸せでも世の中はよくならないし、声をあげられなくて泣いている人を見るのは辛い。だったら、一緒に考えたいなって。

『NEL』の「Dear Ladies」のページ。企画・デザインは里子さんが中心に手がける。

あっこ:そういう反応があったんですね。でもだからこそZINEをつくった。自分とは異なる意見や、時には心ない意見が飛んでくることもあるけど、それでもSNSで個人が発信しやすくなったのは本当にいいことですよね。希望がある。

里子:あっこちゃんは、自分の意見に対して、批判的なコメントが飛んできたときどうしてる?

あっこ:私、こないだ生理についてのツイートをして。そうしたら、尋常じゃない数のリプライが届いたんです。

あっこ:そのなかには、「私は女ですけど、あっこゴリラが言ってることはおかしいよ」という意見の人もいて。でもそれはもしかしたら、過去の自分みたいに違和感に気づかない状態のまま内面化してしまっている人なのかもしれない。だから平熱の感じで、自然に言っていきたいの。

「みんな」を主語にすると、やっぱり嘘くさく聞こえちゃうんですよね。(あっこゴリラ)

—特別なことじゃなくて、あくまでも「これが自然じゃない?」という温度感で発信されているんですね。そうすることで、どんどん当たり前の基準がアップデートされていく。

あっこ:そうそう。だから私は二人のことを超最先端だなって。たぶん20年後、30年後には世のなかが変わっていると思うから。今は伝わらなくても、時代が変われば、いつかわかる。だから「変えていこうぜ」っていうのも大事だけど、まずは自分が自分を取り戻すことが一番大事。「みんな」を主語にすると、やっぱり嘘くさく聞こえちゃうんですよね。私は、何か違和感に気づいたときには、それを昔の自分に対して伝えようって思ってるの。

里子:アーティストは文化と社会を変える力を持っているから、こうやって発信してくれる人がいることが私たちには希望だし、響き合っていきたい。

あっこ:響き合っていきたい!

KIKI:私は身を置いている環境とかで声を出せる特権をある意味持ってると思っていてこうやって発信しているけど、私は誰かを代表することはできないし、リーダー的なものの素質もないしできない。でも普段から周りにいる子と話していると、私なんかよりずっとパワーある言葉や思いをすでに持っている子たちがたくさんいて。それをなんとか語りやすくできるようにしていきたいなと思っているんです。

里子:『NEL』はZINEだからこそデザインや編集も自由で一人一人の声を個々に拾っていくことができたと思っていて。この間、「#私は黙らない0428」っていうセクシズムに反対する街宣をやったんですけど、「She is」が単数形なのと同じで、何かメッセージを発しているときの主語は「私たち」じゃないんですよね。「私」は性別を縛られない一人称でもあるので、女性だけの話をしているわけでもないですし。

KIKIさんがつくったドールの作品。多様な人たちのあり方が表現されている。

あっこ:わかる! 「女性の価値を上げていこうとしてるんですよね」って言われるとすごく違和感があります。「自分は個人である」ということを言っているだけで、それはジェンダー問わず、「男だから」とか「女だから」とかひとくくりにされたら違和感があるんじゃないかな。だから主語が単数形なことはすごく重要。

里子:誰かが声をあげると、黙らせようとする人たちがいつもいるけれど、なぜ声をあげた人がいるのかを感じようとするほうが、めぐりめぐって、「黙れ」と言った人も生きやすい社会になるんじゃないかなと思うんですよね。

—一人の人が、どの場面においても多数派でいられるわけじゃないですしね。時と場合によって、誰しもが少数派になり得るのだから、できるだけ多くの視点を持っていたいですよね。

KIKI:たとえば服の話で言うと、私は洋服をつくっているから、男性はある側面ですごく抑圧されているんじゃないかなと感じるんです。なかなかスカートを履けないとか、メイクができないとか。でもそれってすごくもったいないと思うし、そういう不自然な価値観も、もはや取っ払ったらいいのになって。

PROFILE

あっこゴリラ
あっこゴリラ

レペゼン地球のラッパー。リズムで会話する動物、ゴリラに魅了され、ドラマー時代に「あっこゴリラ」と名乗りはじめる。ラップ・トラックメイクを自身が行い、また元々ドラマーという異色な経歴から自由に生み出されるラップスタイルは、唯一無二の形を提示している。様々なジャンルのイベントに参加するが、彼女がステージに立てばどんな場所でも其処はBack to the Jungleと化す。2017年には、日本初の女性のみのMCバトル「CINDERELLA MCBATTLE」にて優勝。「ゲリラ」がSpotifyのCMに抜擢され、楽曲も高い評価を得る。2018年4月、バンド時代に在籍したソニー・ミュージックからラッパーとして「余裕」で再メジャーデビューを果たす。

宮越里子
宮越里子

フリーランス・デザイナー。
神奈川県川崎区生まれ。デザイン事務所1社、((STUDIO))、YUMORE.を経て独立。『ミュージック・マガジン』『AERA』など、エディトリアルデザイン、グラフィックデザインを中心に手がける。
共同制作として、フェミニズムZINE『NEW ERA Ladies』企画・デザイン担当。文化と政治と日常を繋ぐ、セレクトポップアップ・ストア『CUSMOS(カルチャーに政治を持ち込んですいません)』発起人。〈人権と平等〉ヴィジョンを大衆文化と繋げるべく、思想、デザインともに提案・制作中。

super-KIKI
super-KIKI

「路上と日常と文化を切り離さない」をテーマに、2011年よりデモや抗議活動に参加しながら自分の身の周りに起きている問題から感じたメッセージを、主にシルクスクリーンやステンシル等DIYツールを使ってアパレルグッズなど人が身につけられるものに落とし込んだアイテムを中心に制作。路上のプラカードやスピーチを引用することも多い。
フェミニズムZINE『NEW ERA Ladies』ではイラスト、ファッション、漫画レビューを担当。個の自由と尊厳を尊重する事の難しさと戦いつつ地道に切り拓く表現に挑戦中。

INFORMATION

リリース情報
リリース情報
あっこゴリラ
『余裕』

2018年4月28日(土)配信リリース
あっこゴリラ「余裕」

イベント情報
イベント情報
『THE M/ALL』

2018年5月26日(土)
会場:東京都 渋谷 WWW、WWWX、WWWβ、GALLERY X BY PARCO

WWW、WWWX、WWWβ出演:
コムアイ
BudaMunk
MOMENT JOON
odd eyes
行松陽介
1017 Muney
Gotch
Awich
田我流
Yellow Fang
テンテンコ
Maika Loubté
Bullsxxt
GALLERY X BY PARCO出演:
野村由芽(She is)
桑原亮子(NeoL)
村田実莉
ヌケメ
歌代ニーナ
JUN(Be inspired!)
UMMMI.
五野井郁夫
奥田愛基
中川えりな(Making-Love Club)
haru.(HIGH(er)magazine)
『THE M/ALL』

あっこゴリラ presents『ドンキーコング vol.4』

2018年6月30日(土)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:東京都 六本木 Varit
料金:前売2,500円 / 当3,000円(ドリンク別)
出演:
あっこゴリラ&BNNZ、Tempalay、PARKGOLF
展示:
super-KIKI

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