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あっこゴリラ×super-KIKI×宮越里子 自分を取り戻した君は無敵

あっこゴリラ×super-KIKI×宮越里子
自分を取り戻した君は無敵

ラップやファッション、ZINEで自分の声を発信する三者

2018年5月 特集:生活をつくる
インタビュー・テキスト:松井友里 撮影:山本佳代子 企画:砂糖シヲリ 編集:野村由芽
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居心地が悪くなったら、その場所から身軽に出ていくことができる状態でいられるといい。(里子)

里子:今回の特集のテーマは「生活をつくる」ですよね。それで思ったのは、人は固定された「居場所」をつくると内部批判がしづらくなって息苦しさも生まれていくなと。ほっとする場所を持ちながら、同時に「私」というものを確立することで、居心地が悪くなったら身軽に出ていくことができる状態でいられるといいなって。

あっこ:たしかに。正しいかどうかはわからないですけど、この間とある編集の女性の方と話していて、日本って無宗教の人が多いから、罪の意識じゃなくて、恥の意識でものごとをジャッジするのかもって話になって。うちのお母さんが、そういうしきたりやルールから外れちゃうと「石投げられるよ」とか言うんですよ……(笑)。だけど、もう2018年なんだから、外れている人が石を投げられるんじゃなくて、「個人を持っているほうがかっこいいぞ」っていうくらいになっていったほうがいいと思う。

—共同体のしきたりから外れたり、空気を読まないと、居場所がなくなってしまうんじゃないかと恐れてしまったりもしますけど、今の時代はインターネットもありますし、個性を出していったほうがかえって自分らしくいられる場所が見つかるかもしれないですよね。

KIKI:たとえば雑誌で「モテコーディネート」として取り上げられるような服装を誰しもが好きだとは限らないですし、知らない人から「変な人」という目で見られても自分の興味ある人や好きな人が寄ってきてくれたりする。

あっこ:前に「女性のラッパーって本当すごいと思います。絶対モテないし、尊敬してます」って言われたことがあって、「それ褒めてないよー!」って思った(笑)。それってその人の主観的な見方であって、なんなら私ラッパーになってからのほうがモテてるしね!(笑) しかも誰かに合わせてモテるんじゃなくて、自分らしくいながらモテると、納得がいくし気持ちよさの度合いが違うの。

KIKI:そうそう、強い発言をすると「男らしくていい」とか言われるけど、別に男性になりたいわけじゃないんだよね。そういう意味で言ってない人も多いっていうのはわかるんだけど。「強さ」が当然のように男性のものだっていうのが言葉に染み付いてるなって。

あっこ:何か強いメッセージを発していると、「強い女」だと思われてしまいがちだけど、どの人にも強い瞬間と弱い瞬間があって、それは全然矛盾じゃないんだよね。当たり前のこと。

いろんな目で世界を見てみることが豊かに生きていくことなのかなって。(あっこゴリラ)

—固定的な男や女といったモデルを背負わずに、それぞれが玉虫色の個人として存在できるあり方は素敵ですよね。最後に、今日のお話のなかにたくさんヒントがあったと思うのですが、一人一人が個人としての自分を保って暮らしていくにはどんな実践が必要でしょうか。

あっこ:こういう話ができる場をもっともっと増やすことかな。2年前くらいには「今は女性が元気じゃないですか」と言われることがあったけど、最近は「(女性ラッパーに対して、あえて)フィメールラッパーってあえて言いたくないんですけど」って前置きされたりして、「おお!」と思ったり、どんどん状況がよくなっていると感じます。

里子:あっこちゃんの曲を100回聴くとかもどうですか?

あっこ:嬉しい! あと私は敷居を下げたい。「フェミニズム」っていうワード自体もまだ腫れ物感があると思うんですけど、お二人が別のインタビューで「違和感を持って活動したり、そう思ってること自体がフェミニストなんだ」って言っているのを読んで、「間違いないな!」と思って。だから、「人を殺しちゃいけないんだよ」とか「朝ご飯は食べたほうが調子よくない?」っていうようなことと同じぐらい、当たり前のことになるといいな。

里子:引きで見ることと、寄りで見ることを繰り返すのは、自分が何を考えているのかを確認する作業として大切だと思う。私は、生活のなかで何かわからないことがあったときに人に聞きに行くっていうことをおすすめしたくて。原発事故があったときに、怒ったり、怖いと感じてる人たちにインタビューをしに行ってそれをZINEにまとめたんです。その人たちも周りから見ると1個の集団に見えるかもしれないけど、実際は考えてることがほとんどバラバラだった。KIKIちゃんからデモに誘われたときも、最初「私は無理」と思ってて。

KIKI:すごい怪しんでたよね。

里子:「何かに勧誘されるわ」とか思って(笑)。でも、行って会話したら、共感する部分もたくさんあった。「そのプラカードは私持てないな」と思ったときは、自分でつくったりもした。そうやって会話を重ねて、一人になることとみんなといることを繰り返していたら、いつのまにか「声をあげたいのは私だけ?」っていう不安も解消されて、かといって流されることもなく意見が言えるようになってきたかな。でも、人によって環境が違うから難しい人もいるし、バランスは人それぞれでいいと思います。

KIKI:一人になることって大事だよね。私は、こうやって誰かと発信できる機会があったりこのあいだのパレードみたいにワイワイやっていたりすると、それを見て「私は声を上げられない、弱い人間だし、孤独だ」と感じてしまう人もいるんじゃないかなって思う。でも声を上げられないことが弱さではないと思うし、特にセクシズムの問題は社会が黙らせていることが多いから。

KIKI:それに私は家で一人でずっと絵を描いているようなジメジメした子だったけどそれが自分の軸になったし仕事になった。孤独最高! SNSや路上で声を上げる勇気がなくても、気持ちを吐き出したり、自分を肯定していく方法はいろいろあるってことを伝えていきたい。無理してコミュニケーションをとらなくても、文や絵を描いたりZINEにしたり、あっこちゃんみたいにラップしてみたりね!

あっこ:一人でも考え続けながら、他者とも話し合って、考える対象に近づいたり離れたり、いろんな目で世界を見てみることが豊かに生きていくことなのかなって。あくまでも気楽にね。

PROFILE

あっこゴリラ
あっこゴリラ

レペゼン地球のラッパー。リズムで会話する動物、ゴリラに魅了され、ドラマー時代に「あっこゴリラ」と名乗りはじめる。ラップ・トラックメイクを自身が行い、また元々ドラマーという異色な経歴から自由に生み出されるラップスタイルは、唯一無二の形を提示している。様々なジャンルのイベントに参加するが、彼女がステージに立てばどんな場所でも其処はBack to the Jungleと化す。2017年には、日本初の女性のみのMCバトル「CINDERELLA MCBATTLE」にて優勝。「ゲリラ」がSpotifyのCMに抜擢され、楽曲も高い評価を得る。2018年4月、バンド時代に在籍したソニー・ミュージックからラッパーとして「余裕」で再メジャーデビューを果たす。

宮越里子
宮越里子

フリーランス・デザイナー。
神奈川県川崎区生まれ。デザイン事務所1社、((STUDIO))、YUMORE.を経て独立。『ミュージック・マガジン』『AERA』など、エディトリアルデザイン、グラフィックデザインを中心に手がける。
共同制作として、フェミニズムZINE『NEW ERA Ladies』企画・デザイン担当。文化と政治と日常を繋ぐ、セレクトポップアップ・ストア『CUSMOS(カルチャーに政治を持ち込んですいません)』発起人。〈人権と平等〉ヴィジョンを大衆文化と繋げるべく、思想、デザインともに提案・制作中。

super-KIKI
super-KIKI

「路上と日常と文化を切り離さない」をテーマに、2011年よりデモや抗議活動に参加しながら自分の身の周りに起きている問題から感じたメッセージを、主にシルクスクリーンやステンシル等DIYツールを使ってアパレルグッズなど人が身につけられるものに落とし込んだアイテムを中心に制作。路上のプラカードやスピーチを引用することも多い。
フェミニズムZINE『NEW ERA Ladies』ではイラスト、ファッション、漫画レビューを担当。個の自由と尊厳を尊重する事の難しさと戦いつつ地道に切り拓く表現に挑戦中。

INFORMATION

リリース情報
リリース情報
あっこゴリラ
『余裕』

2018年4月28日(土)配信リリース
あっこゴリラ「余裕」

イベント情報
イベント情報
『THE M/ALL』

2018年5月26日(土)
会場:東京都 渋谷 WWW、WWWX、WWWβ、GALLERY X BY PARCO

WWW、WWWX、WWWβ出演:
コムアイ
BudaMunk
MOMENT JOON
odd eyes
行松陽介
1017 Muney
Gotch
Awich
田我流
Yellow Fang
テンテンコ
Maika Loubté
Bullsxxt
GALLERY X BY PARCO出演:
野村由芽(She is)
桑原亮子(NeoL)
村田実莉
ヌケメ
歌代ニーナ
JUN(Be inspired!)
UMMMI.
五野井郁夫
奥田愛基
中川えりな(Making-Love Club)
haru.(HIGH(er)magazine)
『THE M/ALL』

あっこゴリラ presents『ドンキーコング vol.4』

2018年6月30日(土)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:東京都 六本木 Varit
料金:前売2,500円 / 当3,000円(ドリンク別)
出演:
あっこゴリラ&BNNZ、Tempalay、PARKGOLF
展示:
super-KIKI

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