ベッドサイドに花を。エヒラナナエの劇的に変化しない生活づくり

ベッドサイドに花を。エヒラナナエの劇的に変化しない生活づくり

自身の日記をZINEにする刺繍作家・イラストレーター

2018年5月 特集:生活をつくる
インタビュー・テキスト:飯嶋藍子 撮影:松本雛 編集:竹中万季
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すぐに捨てられるものじゃなくて、受け継がれていくものをつくっていきたい。

今ある生活を決して捨てないまま、変化させていくことを選んだエヒラさんは、生活だけでなく、ものに対しても同じように接しています。

エヒラ:あまりものを捨てないんです。小さい時は流行りにのりたい子どもだったけど、20歳をすぎたくらいから古いものが好きになりました。この間、実家に帰ったら、5歳くらいの時におばあちゃんがつくってくれたカーディガンが出てきて。丈がちょっと短いけどかわいくて、ボタンを付け替えたら今時のデザインになって普通に着られたんです。

それで、すぐに捨てられるものじゃなくて、受け継がれていくものをつくっていきたいと改めて感じるようになって。ちょうどその日にベッドカバーにチョコレートのシミをつけてしまって、洗っても消えないからどうしようと思っていたんですけど、「私には刺繍があった」って気づいて、シミのところに刺繍をしたんです。

ベッドカバーに施したチューリップの刺繍。そこにシミやほころびがあったことも、愛おしく思い出させてくれるよう。

今あるものを慈しみながら少しずつ育て、受け継いでいくこと。発想を転換したり、視点を変えてみたり、柔軟に生活しているように見えるエヒラさんですが、今のご自身の生活には「納得がいっていない」と言います。

エヒラ:今は生活を大切にしているように見えて、あまり大切にしていないんじゃないかと思っていて。たとえば、日記を振り返ってみても、今ある生活を改善するために次の日はこうしよう、みたいなところまではいけていないんです。まさに今、環境を変えたいんですけど、変えられていない状態で。

これからは言葉ではなくもっと抽象的なもので日々の軌跡を残すよう、シフトしていきたいと思っています。さっきのベッドカバーも、実際に窓辺に飾った花を刺繍するようにしていて。直接的に「何時になにをした」と記す形ではない記録のほうが、自分自身を大切にできるのかもしれないと思ったんです。これまでは書くことで消化していて、あったことや感じたことを全部書かないと気が済まなかったけど、今は自分の中にとどめておいても納得できるから、もう全部を誰かに知ってもらわなくてもいいかなって。

2018.3.5 am8:50

エヒラナナエさん(@ehirananae)がシェアした投稿 –

増えていく花の刺繍は、エヒラさんの新しい生活の記憶のかたち。

言葉で事実をはっきり書き残すことで、もしかしたら、そこに漂う空気や温度が薄れてしまうこともあるのかもしれません。言葉にできない感覚を思い返すことのできる余白こそ、自分や誰かの生活を思う、おもしろさのひとつなのでしょう。エヒラさんは、「今後、生活で意識したいことは『自分を大切にする方法を変えること』です」と続けます。

エヒラ:最近まわりで都内から引っ越す人がどんどん増えてきていて、そういう人たちの話を聞いていると、暮らしの中で自分を大切にすることをすごく意識していて。私ももっと自分だけの世界にとどまって、自分を大切にする生活をしたいってすごく憧れます。

花を見たら自分のためになにも考えずに生きていてもいいんだなって思えて。

具体的にどういうところに住みたいか伺うと、「植物に囲まれたテラスにすごく憧れているんです」と教えてくれました。エヒラさんの作品にはもちろん、Instagramの写真にも、植物が多く登場します。なんと、ご自身のiPhoneには街角のアロエを撮りためた「アロエフォルダ」も存在。部屋には常に花を飾っているエヒラさんは、植物にどういう思いを抱いているのでしょうか?

エヒラ:今の職場の向かいが花屋で、花が好きだって話したら、毎日花をくれるようになったんです。人間って生きているだけじゃなく、働かなきゃいけないし、考えることも多いじゃないですか。でも植物は、今日は晴れだ、今日は雨だっていうことがダイレクトに表情に出て、生きるということだけに執着している姿がすごくいいなって思ったんです。

なんのために生きるかずっと考えていたけど、花を見たら自分のためになにも考えずに生きていてもいいんだなって思えて。アロエも、切っても切っても生えてきて、日陰で力強く生きている姿がなんて健気なんだろうって。植物は生きることを教えてくれる存在です。

エヒラナナエさんがiPhoneで街角のアロエを撮りためているという「アロエフォルダ」

植物から生きる意味を学んだエヒラさん。「人の生活は植物に出る」と、街中でも植物に注目するそうです。

エヒラ:人の生活にすごく興味があって、他人の家のベランダを見るのが好きなんです。どんな生活をしているんだろう、どういう人なんだろうっていうのが、家に置いてある植物に出ている場合が多くて。前住んでいた家の近所にはアロエの鉢が10数個置いてある家があったり、とあるおばあちゃんの家のアロエは、全部にかわいいネームプレートがついていたり。「アロエ36歳」みたいな(笑)。

見落としがちな街の風景も、エヒラさんにとっては日々感じるおかしみのひとつ。今の生活になんとなくもやもやしていたり、孤独を抱えている人に、こう助言します。

エヒラ:自分の生活ばかり見ていると落ち込むところまで落ち込んでしまうけど、そんな時は人の生活に目を向けてみるといいですよ。私は、帰り道に知らない路地に入るのが好きで、夕食の匂いやシャンプーの匂いを感じて、さらにそこにあるベランダの鉢を見ながら家に帰っていて。

路地を歩きながら「こんなにたくさんの人の生活がそこに存在しているんだ」という当たり前のことを自覚すると、いろんな人がいるんだから私も私のままでいいかなって思えてきて、少しだけ救われるんです。自分以外の誰かの生活を見てみるクセがつくと、劇的になにかを変えなくても、生活がちょっとおもしろくなる気がします。

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PROFILE

エヒラナナエ
エヒラナナエ

イラストレーター・刺繍作家。日記集「SOMEDAY」を綴る。”いつか人生は透明になってしまうから、だから私は日記を書いた。”

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