友達に寄りかかりすぎなくても大丈夫なようにまずは自分を大切にして。
anccoさんの高校時代のクラスメイトのように、昔は共通の感情や認識を覚え、何時間でも楽しく話していられたような友人も、それぞれの状況や環境の変化によって、徐々に噛み合わなくなってきてしまうこともある。あの時、笑い合えていたはずなのに、互いが少し遠くに行ってしまったような気になってしまう人も少なくはないはずです。
ancco:そういうのってさみしいですよね。たまに地元の友達と会うと、小中学時代の楽しい話をするっていうテンプレートがあるじゃないですか。でも、そこにも温度差があって、今も地元にいる人しか分かり得ない話があがったりすることもあって。相手も私に対して「東京風吹かせやがって」ってどこかで思っている部分があるだろうし、私も私で「こっちがわからない話をあえてしてるのかな」ってちょっと嫌な気持ちになることもあります。
そんな中、「『元気かなあ』と思い出して連絡するし、未だに時々会っている友達です」と、長い付き合いの大切な友人がひとりだけいるそう。
ancco:その子は小学生の時から気の合う子で、自転車で40分くらいかけて家に遊びに行って、一緒に『CUTiE』や『Zipper』を読んだりしていました。高校は別々になったんですけど、今でも私のやっている活動を結構気にかけてくれていて。やっぱり気にかけてくれるのは嬉しいですよね。
既婚か独身か、子供がいるかいないか、仕事をしているかしていないか……そういった違いで、それぞれの生活そのものが変わったり、好奇心の先が変わったり。自分の話もしたいけど、興味を持ってもらえないし、提供できる話題もない、そんなとき、どうしたらいいのでしょう?
ancco:友達とうまく付き合っていくには、やっぱりある程度距離を置くことが大事だと思います。家族も恋人もそうですけど、あまり寄りかかりすぎると関係がダメになってしまう。打ち明けることは打ち明けていいけれど、いつも泣きついていると相手の負担になりすぎちゃうから。
これは私もやってしまった失敗なんですけどね。距離感があるからこその友達だから、寄りかかりすぎなくても大丈夫なようにまずは自分を大切にして、その距離感を崩さないようにしたいですよね。
「知りたい!」っていう興味が発展すると、仲良くなりたいなっていう気持ちになりますよね。
厳しい高校生活を経て、美術系の大学に進学したanccoさん。意外な交友関係を教えてくれました。
ancco:大学の時もあまり友達がいなかったんですけど、交流があった友達も就職する人が多くて、唯一作家をしている友達は少年アヤちゃん。研究室もずっと一緒で。anccoっていうのは大学時代のあだ名なんですけど、これもアヤちゃんがつけてくれたんですよ。
講談社『ハツキス』で連載している少年アヤさんの「ロマンチック・ア・サンデー」の挿絵はanccoさんが手がける
少年アヤさんの『果てしのない世界め』の特別寄稿企画にも作品を寄稿
卒業してからは、年に数回仕事で会うそうですが、いつもネットでお互いの活動に目を配っているそう。anccoさんは大学時代からイラストレーターとしての活動をされていますが、就職せずにイラストレーターとして歩む道には苦難も多かったと話します。
ancco:大学時代からイラストレーターとしての活動はしていたのですが、研究室の先生に「絵で食っていきなさい」と言われたのがきっかけで、イラストで食っていこうと決意したんです。
当時はネットに作品をアップしたりしていても、今のように仕事が来るわけじゃなかった。だから古着屋さんでバイトして、フリーターっぽい生活をしながら絵を描いていました。でも、その古着屋がすごく素敵な店だったからこそ、「ここにいて満足していたらだめだな」って思ったんですよ。そこで一度きちんと働こうと思ってOLをしたりもしました。
そんな中、大人になってからはネットだけでなくリアルの場所でも絵が人との繋がりを作ってくれたとanccoさんは語ります。
ancco:イラストレーターを初めてからは、仕事で関わった人とか、展示会に来てくれた人とか、絵で友人関係が広がっていくことが多いです。知り合った人はやはり、共通の話題が多いし、その人のことを知りたいと思う人が多いです。「知りたい!」っていう興味が発展すると、仲良くなりたいなっていう気持ちになりますよね。
みんな個々で抱えている問題も違うけど、お互いのダメなところも言い合って、「最高!」って思う。
She isでは今回、6月の特集「おんなともだち」をテーマにanccoさんと2枚のハンカチを制作。「girl Friend cloth」と名づけられたこのハンカチは大切な友人へプレゼントできるよう、タイプの違うペアになっています。「girlFriend」「buddy」など、友情を表す言葉たちと、ペアのモチーフたちが散りばめられたこのハンカチに、anccoさんはどういう思いを込めたのでしょうか?
ancco:単純にペアのモチーフがかわいいなって感じているのもあるんですけど、私も好きな女友達とは一対一で会うことが多いんです。もともと遊びの予定を立てるのが苦手で、この日にみんなで集まろうって声をかけられても「あー、その日は行けるかも~」って曖昧になってしまって。
だから自分から声をかけることもあまりないんです。そんな中で、自分から声をかける時は、今ちゃんとその人の話を聞きたいなとか、話を聞いてほしいなって感じなので、一対一で会うことが多いんですよね。
女の子のペアや犬のペア、そして、蝶々と女性の手など、いろいろなかたちの友達が描かれたハンカチ。子供の頃のように無邪気に一緒にいたり、一方でつかず離れずの関係性だったり、友達の自由なかたちをこのハンカチは教えてくれます。「おんなともだち」というテーマを聞いて、anccoさんは「女の友情は強い」と感じたそう。
ancco:女の友情って強いですよね。『Sex and the City』を見て改めてそう思ったんですが、みんな個々で抱えている問題は違うけど、お互いのダメなところもちゃんと言い合って、みんな強烈だけど仲が良い。ああいう友情って「最高!」って思いました。
She isは大人の女性に向けた場所だと思うんですけど、ハンカチにあえてキッズっぽいモチーフも入れたのは、「あの頃と心は変わらないよ」ということを表せたらなと思って。
大人になったらまるまる一緒のお揃いを持つのはちょっと気恥ずかしいけど、モチーフが同じという隠れたお揃い感なら、anccoさんがおっしゃっていたとおり、良い距離感を保ちながら繋がりを感じることができるでしょう。「anccoさんだったらどういう人にどちらのハンカチをプレゼントしますか?」という質問には、悩みながらも素敵なプレゼントの仕方を教えてくれました。
ancco:どうしよう、誕生日が近い友達とか(笑)。私は刺繍のハンカチがいいんですけど……あ、でも自分がいいなと思うほうをあげたい気持ちもあるし悩みますね(笑)。
そういえば、昨日会った友達にネイルをもらったんですよ。最近とても忙しくてすごく疲れていたんですけど、その友達が「このネイル、anccoちゃんっぽい。これ塗るたびにanccoちゃんのこと思い出すから」って言ってくれて。不意なプレゼントの嬉しさをすごく実感したので、そういう感じでこのハンカチも不意にプレゼントするのがいいかもしれないですね。
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