「女友達」という言葉には、どんなイメージがあるでしょう? ポジティブなものもあれば、ネガティブな声もあるかもしれません。「女性」というものが単一ではなくさまざまなグラデーションとして存在するなかで、「女」と冠をつける必要もなければ、その言葉の不完全さも否めないかもしれません。でもいまだに「女性同士が集まるとこわい」とか「女の敵は女」とか「ライフステージの違いで女性同士が分断される」という言葉や状況があって、それが時に分断の原因となり、胸を痛める理由になるならば、立ち止まって考えてみたいと思いました。
2004年から1ページ漫画『センネン画報』をブログで開始して以来、「大人になる寸前の少女」や「少女と戦争」を描き続ける漫画家の今日マチ子さんと、女子校研究や女性の生き方、業をテーマに作品を発表する漫画家・コラムニストの辛酸なめ子さん。少女から大人へとたゆたう内面のグラデーションと社会の関係を鋭く見つめてきた二人と話して見えてきたのは、「女性」「女友達」「ライフステージ」という言葉でひとくくりにされることも分断される必要もなかった、距離や立場や変化にとらわれず、友達も自分も「そのまま」受け入れるということでした。
※掲載後、文章の表現を一部修正いたしました。
「人はどうやって、心のなかに少女を持ち続けられるのか?」ということをずっと追っています。(今日)
ーお二人とも、女性たちをテーマに作品を書かれることが多いですね。
辛酸:私は女子校育ちでまわりに男性が少なかったし、男性の兄弟もいないので、あまり男性の気持ちがわからなかったんです。もともと女性アイドルが好きだったのもあるし、女性の生き方や業みたいなものについていろいろ考えているのが面白くて。
辛酸なめ子
ー自分が感情移入できたり想像できる対象としてテーマにされていたんですね。
辛酸:中学生の頃は南野陽子、そのあとは中森明菜やユーミン。ちょっと大人になってSPEEDが好きになって、そのあと海外セレブも好きになりました。あっ、あと宮様とか。佳子さまも好きですよ。男性について書くこともありますけど、それは取材しないとまったくわからなくて。それが面白さでもあるんですけどね。
今日:私は少女をテーマにずっと書いてきているんですけど、自分が少女だった頃から、大人が考える理想の少女像と、自分がいま生きている実体が合ってないということがすごく不思議でした。
大人が女の子を描くときって、すごくキラキラした感じの少女を描くじゃないですか。それを見たときに、「これは全然、自分じゃない」っていう、モヤモヤがあって。表面的な純粋さばかりが求められて、少女が内面に持っているダークサイドはあまり描かれていないなとか。そういうことが気になったまま、大人になってしまって。
今日マチ子『センネン画報 +10 years』(Amazonで見る)
ーズレを感じていたんですね。
今日:年齢を重ねていくにつれて、自分はわりと少女の延長線上で生きていると思っているんですけど、はたから見ていると昔からの友達もどんどん……ガツンガツンと、「大人」になっていく。早めに結婚して、将来を見越したうえで、ここで子どもを産んで、家買って、出世して……といったことを、スパスパと決めていくように見える同級生を見て、結構な衝撃を受けたんです。
ただ、会って話してみると実はあんまり変わっていなかったりもして、「人はどうやって、心のなかに少女を持ち続けるのか?」みたいなことがすごく気になって、作品をつくりながらずっと追っている感じです。
今日マチ子「修学旅行の夜」(作品用のラフスケッチより)
今日マチ子「冬の花火」(作品用のラフスケッチより)
辛酸:知り合いに聞くと、会社で働いていると、「子どもを産みたいんだったら何歳までに出世しないと体力的に辛いよ」と言われることもあるみたいです。組織のなかでそういうふうに言われると、まわりに合わせていつの間にか同じ道をたどっていることもあるのかも。
ータイミングはいまじゃないんじゃないかとか、そもそも結婚制度ってなんだろう? なんのために結婚するんだろう? とかいろいろ問い始めるとなかなか決められなかったりしますよね。「まわりはどんどん大人になっていく」という感覚、歳を重ねていくなかで、感じている人も多いんじゃないかなと思います。
今日:私のなかで「大人」的な考え方というのは、大きな疑問は持たないで一応きちっとみんなに合わせて社会生活を送ることができている状態のこと。一方で、「心のなかに少女を持つ」というのも少女趣味とは別のもので、「子ども時代の一番最後」のような感覚をずっと持ち続けることだと考えています。
きちんと生活を送るのはもちろん大切なことだけど、少女の心を持ち続けることもきっと大切なことです。そうすることで、社会や「大人」の考え方の矛盾に気づくことができるんじゃないかと思っているし、その気持ちを創作活動にも役立てていますね。
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