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今日マチ子×辛酸なめ子と考える、女友達、女子校、ライフステージ

今日マチ子×辛酸なめ子と考える、女友達、女子校、ライフステージ

同じ女子校出身の二人。変わる自分と友達の付き合い方

2018年6月 特集:おんなともだち
インタビュー・テキスト:野村由芽 撮影:永峰拓也
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昔からの友達だからといって、全部知っている必要はないんです。(辛酸)

ー大人になるにつれて、人が担う社会的な役割も変わってきます。いわゆる「ライフステージ」と呼ばれるものが変わっていくにつれて、お二人は友達との関係に変化はありましたか?

今日:私は人付き合いがいいほうではないので、付き合いの長い友達はそういう人付き合いでもオッケーだよ、と言ってくれる人が多くて。大人になるとお互いの環境がだんだん違ってくるから、頻繁に会えなくなる。最近思うのは、そういうときに長い目で関係を見られたり、「友達だよね」と確認し合わなくても大丈夫なのが本当の友達なんだろうなって。

小中学校の頃って、なぜかお互いに「私たち友達だよね」と固く約束するのに、突然ケンカして二度と会わない……みたいなことってありませんでしたか(笑)? 私が組織に所属してなくて、親友未満の友達関係に揉まれていないというのもあるかもしれませんが、個人的には大人の関係ってすごく楽だなと思います。

今日マチ子「こぼれ話」(『センネン画報 +10 years』より) (C)Machiko Kyo 2018

辛酸:私も中高時代の友達とはそんなに頻繁に会いませんね。しかも会ってもそんなに嬉しいことを言われないんですよ。「カラコン入れたの?」って、入れてないのに指摘されたり(笑)。

ー入れてないのに(笑)。賭けに出ましたね。

辛酸:学生の頃みたいに、みんなと共通の話題を探したり、仲良しグループと話題を全部共有したりしなくてもいいというのが、大人の友達関係のいいところ。たとえばLINEで、ビットコインの話をするならこの人、オカルトの話をするならこの人……みたいに、盛り上がる話題が相手の負担にならず、楽しんでもらえるように、グループをわけています。だからきっと私の知らないところで、子育ての話題で盛り上がったりもしてるはずだけど、それでいいんですよ。昔からの友達だからといって、全部知っている必要はないんです。

今日:たしかに、漫画の話をする友達、ハンドメイドの話をする友達、映画の話をする友達、珍スポットへ探検しに行く友達……みたいにいろんなグループの友達がいます。

辛酸:一方で、学生の頃は、本当に息苦しいですよね。人の目線を気にしてしまうから、一瞬でも一人でいるのを見られたくない、見られたら死ぬ……(本気)みたいな。

今日:そうならざるを得ないときは、ヘッドホンを被って、大丈夫なフリをしたりして(笑)。

辛酸:大人になってしまえば一人でも全然平気だけど、いま学校が息苦しい10代の子がいたら、SNSなどもあるから、自分の好きなことだけを話せる友達が見つけられたらいいですね。

他の人の人生を歩んだとしても、私は私でしかいられなくて彼女たちにはなれない。(今日)

ー大人になっても、人と違うことで世のなかと軋轢を感じる場面は多いと感じます。特に世のなかのマジョリティの流れに対して、自分が少数派であるときに、「違う」ことと自分自身がどう折り合いをつけたらいいのかなと。

今日:独身であることが、突然「おひとりさま」といってもてはやされたりね(笑)。でも、4、5年前からそういうことがパッと気にならなくなりました。多分、あまりにも気にしすぎた挙句、「もうどうでもいいわ」となったのかもしれません。

どんな人生を歩んだとしても、私は私でしかいられなくて彼女たちにはなれないわけです。それに、たとえばいま子どもがいたとしても、疎遠になっている友達とは、いくら彼女たちに子どもがいたとしても、急に家族ぐるみのお付き合いを始めたりはしないだろうなと。だから、極論を言うと、誰がなにをしていようと、自分も友達との関係性もあんまり変わらないのかなと思うようになりました。

今日マチ子「ゴミ捨て」(作品用のラフスケッチより)

ーたしかに。

今日:Facebookをのぞくと、世代的にも結婚して子どもがいる人は多いんですけど、独身だったりずっと仕事を続けて充実している人もいるし、自分と近い人も一見遠い人も、みんなそれぞれ楽しそうにしていることって励みになります。Facebookもあながち罪ではないですよ(笑)。

ー関係性を気にするより、自分がいまの生き方を楽しめているかどうかのほうがずっと大事なのかもしれませんね。

今日:人の目を気にしたところで、みんな噂レベル以上には他人の人生に興味は持っていないし、だったら自分が楽にしていたほうがいい。そう思ったら、急に焦りがなくなりました。

辛酸:私も気にしないようにしてるんですけど、この前、団塊ジュニア世代がすべてのチャンスに恵まれず、収入も低いし、仕事もなくて、結婚もできず、出産もできず、子どももつくれない……みたいな内容の「アラフォー・クライシス」と題された恐ろしいテレビ番組を観ちゃって、番組を観た人たちのコメントも熟読して共感して、うっかり引きずり込まれそうになったんですよ。

でもそれって、自分をますます惨めな気分に持ち込んで、そのサークルのなかで傷を舐め合っているだけだと気づいて。自分を「かわいそう」と思わず、卑下しすぎず、なんでもいいから誇りを持てるようにしないと、引きずり込まれるぞと。ちょっとでも税金を払っているとか、今日募金したとか、小さいことでいいんです。とにかく平和な波動を出して、まわりの人とかにいいバイブレーションを感じてもらえるようになれれば……。母性とか慈愛を、世の中全体に対して出せるようになりたいです。

ー辛酸さんは、これまでさまざまな人の生き方を取材して、ひとりひとりの声を集めることで大きな潮流に抵抗してきたと思うのですが、それでも飲み込まれそうになったということですよね。

辛酸:はい。カテゴライズにはパワーがあるので、意識的に逃れないとだめですね。あと以前、有名な高齢の占い師に取材に行ったら、いきなり私が子孫をつくらないことを先祖が悲しんでるから、今日外に出て、誰でもいいから子づくりしろみたいに言ってきて、半年ぐらい落ち込みました……。そういう言葉を受けると人と比べ出してしまうモードに入るんですけど、普段は本当に平和です。たまにそういう人が出現するので、気をつけないといけないんですけど(苦い顔)。

PROFILE

今日マチ子
今日マチ子

東京都生まれ、漫画家。東京藝術大学美術学部、セツ・モードセミナー卒。2004年から毎日ブログにて綴った1ページ漫画『センネン画報』が注目され2008年に刊行。2006年、2007年「センネン画報」(ウェブ)、2010年『cocoon』、2013年『アノネ、』が文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選出。2014年『みつあみの神様』他で第18回手塚治虫文化賞新生賞、2015年『いちご戦争』で日本漫画家協会賞大賞を受賞。著書に『みかこさん』『U』『吉野北高校図書員会』『ぱらいそ』『猫嬢ムーム』他、多数。「今日マチ子のセンネン画報」

辛酸なめ子
辛酸なめ子

漫画家・コラムニスト。東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。近著は『大人のコミュニケーション術』(光文社新書)『おしゃ修行』(双葉社)『魂活道場』(学研)など。

INFORMATION

書籍情報
書籍情報
『センネン画報 +10 years』

2018年5月10日(木)発売
価格:1,728円(税込)
発行:太田出版
Amazon

『女子校育ち』
著者:辛酸なめ子

2011年3月9日(水)発売
発行:筑摩書房
Amazon

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