仕事も人生のためにあるし、遊びも人生のなかにある。
すべての時間をバンドにかけていたMICOさんが、自分のための時間や新しい体験をする時間を大事にするようになったのはなぜなのでしょうか?
MICO:バンドが解散したあとに、これだけ時間を費やしてきた唯一のアウトプットがいとも簡単になくなることがあるんだって衝撃を受けたんです。それで、消えずに積み重ねられるものってこの世にあるんだろうかってすごく考えるようになって。そんななかでSHE IS SUMMERを始めて、人生で一番大きな基盤って、仕事でも遊びでもなく、人生そのものだと気づいたんです。
そこから、アウトプット先が「人生」っていう自分が持っている一番大きな器に変わりました。仕事も人生のためにあるし、遊びも人生のなかにある。お金のために働くとか、地位のためにがんばるとかじゃなくて、自分の人生が豊かになる仕事をしたいと思うようになったし、遊びや休息も全部同じ考え方になりました。
会社に勤めている人の多くは、週5日働いて2日やすむというリズムで活動しています。現代では、そんな日々を繰り返しながら長い時間をかけてキャリアを積み重ねていく人がほとんどと言っていいでしょう。そのサイクルが心地いい人がいるのはもちろん、好きなときに自由な時間が取りづらく、そのリズムに飲み込まれて、身も心もやすめていない人もいるかもしれません。MICOさんはそんな人に向けてこう話します。
MICO:会社で働いている方は積み重ねたものが評価されることも多いと思うんです。でもそれって日本に生きて、資本主義的な社会の価値観でいるからで。私はメキシコとか海外を旅したときにこれまでの概念がぶっ壊されちゃいました。人って、ただ人であるだけで、本当にいろんな感情やパワーを持っていて、すごく豊かな生き物なんだって実感したんです。ひとつの仕事をがんばり続けることとか、誰かに評価されるすごい作品を残すことってもちろん素晴らしいと思いますけど、価値観の変化を経て、私はそれだけのために生きたいとは思わなくなりました。
メキシコを旅したときの写真
日常で過ごしてきたすべての時間は、このためにあったんだと思えるような瞬間ってたまにある。
「バンドを解散した経験とその影響はすごく大きかったです」としみじみ振り返るMICOさん。その経験を経て新たな価値の基盤となった「人生」ですが、それつくりあげているのは日々の生活です。
油断していたらあっという間に過ぎてしまう当たり前の日常のなかで、MICOさんはなにを大事にしているのでしょう? 「日常のなかで、意識している時間がふたつあるんです」とMICOさんは教えてくれました。
MICO:ひとつ目は、なにも思わなかったら忘れちゃう瞬間。いまだって、もしおばあちゃんになった自分が見ていたとしたら「ああ、26歳の私はこんなふうにこんなことを喋っているのか」って思うような、すごく大事な時間だと思うんです。今は大事だと思えていない時間も、自分の手元からなくなった瞬間に、きっとすごく大事な時間になる。そういう瞬間をなるべく覚えておきたくて、なんでもないときに本当になんでもない写真を撮ったりします。たった1年前の写真でも、見返すと懐かしくてすごく大事になってるんですよ。
ふたつ目は、写真に撮らなくても覚えている時間。それをなるべく増やしたいと意識しています。新曲の“Darling Darling”も、そういう時間について歌っているんです。日常で過ごしてきたすべての時間は、このためにあったんだと思えるような瞬間ってたまにあって。そういう時間をどうやったらいっぱいつくれるのかなって考えています。
そんなふうに時間を旅するように日々を生き、やすみ、生きているMICOさんとつくった「がんばらないタンクトップ」には、MICOさんのこだわりが随所に散りばめられています。
MICO:やっぱり暑い夏にはタンクトップを着たいと思うんですけど、どうしても下着が気になるし、肩紐がない下着はちょっと心地悪くて。お洒落着としてかわいくて、生地が柔らかくてゆるく着られて、下着のことも気にしなくていい、パーフェクトなタンクトップってなかなかないので、それを目指してつくりました。
柔らかいながらも厚めの生地なので、胸元も気にならず、着心地もばっちり。肩のストラップの部分が太くなっているので、下着の紐も気になりません。「TRIP」というロゴのデザインもMICOさんがいちから手がけました。
MICO:「JOURNEY」や「TRAVEL」は私の中では遠出する旅というイメージがあるんですけど、「TRIP」はちょっとだけ都会を抜け出して自然のあるところでリラックスする感じというか、少し身近にある旅のかたちなのかなと思って。あと「TRIP」には、深呼吸したときみたいに少しふわっとするイメージや、水辺みたいな自然に触れて、知らない間に都会で蓄積されていたストレスが解消されるようなイメージもあって。だから、力が抜けたような水の波紋みたいなデザインにしました。