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蒼井優とタナダユキが語る結婚。自分が思う幸せを追求すればいい

蒼井優とタナダユキが語る結婚。自分が思う幸せを追求すればいい

『ロマンスドール』公開。結婚、母性神話、幸せについて

2020年1・2月 特集:これからのルール
インタビュー・テキスト:野村由芽 撮影:小林真梨子
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母性神話に負けないでほしい。それはやっぱり「神話」でしかない。生身の人間はもっと複雑なはず。(タナダ)

ー奇跡っていうのは、ほんとうに、そんな気がします。『ロマンスドール』では、一見いわゆる「良き妻」に見える園子が、「子どもなんて好きじゃない」というシーンが印象的でしたが、その言葉にはどんな意図があったのでしょう?

タナダ:昔なにかで読んだのですが、人間は子どもが生まれたときに、人から教わらなければ授乳ができないと聞いたことがあって、ほっとしたんです。「母性神話」みたいなものに苦しめられている人って多い気がしていて、「女性だから子どもが好き」とか。

ー「母親だから子育てができてあたりまえ」とか。

タナダ:そうじゃない人もいるし、ほんとうは愛したいけど上手く愛せないっていう人も絶対にいる。すごく好きなのに、表現が下手とか。そういう人たちがもしいるとしたら、母性神話に負けないでほしい。それはやっぱり「神話」でしかない。生身の人間はもっと複雑なはずなので、園子に「子どもなんて好きじゃない」と言ってもらうことで、すこしだけでも楽になる人がいたらいいなと。

「子どもが嫌い」ってネガティブなワードですし、言うのにためらうことってあると思います。だけどじゃあ実際に子どもを産むとなると、すごく大変なことですよね。好きな人の子どもであっても、なかなか決心はつかなかったり、はじめから父になろう、母になろう、と思っているわけではなくて、授かったからには一生懸命育てるという人もいたり、授かりたいけどなかなか授かれない人もいて。この映画に答えがあるわけではないんですけど、さまざまな背景をもつ人がすこしでも楽になるにはどうしたらいいんだろう? って。

『ロマンスドール』 ©2019「ロマンスドール」製作委員会

ー子ども嫌いの園子が「てっちゃんの子どもだったらいいかなと思った」という台詞はひとつの奇跡の形だなと感じました。「絶対に子どもを好きじゃなきゃいけない」とか「産まなきゃいけない」ということではないし、「子どもを産むのもいいかな」と思わなかった可能性も全然あったしそれでもいいけれど、目の前の人にたまたまそう感じたからということがさらっと言われているシーンにすごくハッとしたし楽になりました。蒼井さんはあのシーンを、あの台詞をどういうニュアンスで言いましたか?

蒼井:うーん、なんかこう……家族っていうものが、命を繋いでいくことだったり、やっと親のことがわかるようになったりとかっていうのは、妊娠しているわけではないけれど、結婚した今実感しているかもしれませんね。家族が繋がっていくっていうことがどういうことか、やっとわかってきてるというか。

ー想像しながら演じて、後から実感をともなった人生がやってきたというか。

蒼井:そうですね。作品ってそうかもしれない。

それぞれが自分に見合った、自分が思う幸せっていうものを追求するのがいい。(蒼井)

ーこの作品では、一見「奥ゆかしく」描かれている園子が持つ性欲への積極性を通して、女性の性欲も肯定されていると感じました。今回、She isでは「これからのルール」という特集をしていることもあって、お二人にとって、これからの夫婦の形やルールのようなものに関して、もしなにか感じていることがあればおうかがいできたら。

タナダ:なんだろう……わたし結婚もしてないからな(笑)。

蒼井:興味は?

タナダ:興味は……なんだろう。わたしね、年下の女子とかにはよく勧めるの、結婚を。

ーどうしてですか?

タナダ:機会があるなら、一回やってみたらいいじゃん、っていう。

ー別に離れてもいいし。

タナダ:全然違う環境で育ったもの同士なんだから、合わなくて当たり前じゃんっていう。合ったらラッキーくらいの気持ちでいればいいんじゃないの? ってすごい偉そうなこと言って(笑)。

一同:(笑)。

タナダ:それで何組か結婚しました(笑)。

ーすごい!(笑)

タナダ:なんというか……予期せぬいいことも悪いこともきっとあると思うんですけど、まあ人生長いし、一回くらい……やってみてもいいんじゃない? って。自分がそうなるかどうかはわからないけれど。絶対に結婚しないって決める必要もないし、絶対にするって決めなくてもいいし、80歳で結婚してもいいと思うし。

ーそうですね。蒼井さんはいかがですか?

蒼井:わたしは……新しいルールとかほんとうにわからない、ですね。

タナダ:その人たちによって、違うもんね。

蒼井:わたしは役所に届ける形の結婚をしましたが、いまは夫婦別姓も含めて、いろいろな形がありますよね。その人が選んだことなら、どんな形でもいいと思います。どんな選択であっても、他人のことをとやかく言うような人間になりたくない。

ーほんとうにそうですね。

蒼井:結婚してもしなくてもどっちでもいいけど、それぞれが自分に見合った、自分が思う幸せっていうものを追求するのがいいし、それをしてはいけないんですか? とは思います。

タナダ:そうなんですよね。

蒼井:それこそね……自分の考えに共鳴してくれる人が現れたら現れたですごく幸せだしね、でも現れなかったら現れなかったでまた別の素晴らしさがあるし、どのみち生まれてきたっていうこと自体が素晴らしいことなんだなって。

ーそうですね。

蒼井:それを喜んでいたいかな、と思います。

PROFILE

蒼井優

1985年8月17日生まれ、福岡県出身。01年に『リリイ・シュシュのすべて』(岩井俊二監督)ヒロイン役で映画デビュー後、『花とアリス』(04/岩井俊二監督)、『ニライカナイからの手紙』(05/熊澤尚人監督)、『フラガール』(06/李相日監督)などで主演を務め、『フラガール』で第30回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞、新人俳優賞をダブル受賞したほか、国内の映画賞を総なめにした。さらに17年に出演した『彼女がその名を知らない鳥たち』(白石和彌監督)では、第41日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞したほか、第42回報知映画賞主演女優賞、第30回日刊スポーツ映画大賞主演女優賞など数々の映画賞を受賞した。近年の主な映画出演作に、『家族はつらいよ』(16/山田洋次監督)、『オーバー・フェンス』(16/山下敦弘監督)、『アズミ・ハルコは行方不明』(16/松居大悟監督)、『東京喰種トーキョーグール』(17/萩原健太郎監督)、『斬、』(18/塚本晋也監督)、『長いお別れ』(19/中野量太監督)、『宮本から君へ』(19/真利子哲也監督)などがある。

タナダユキ

01年脚本・出演も兼ねた初監督作品『モル』で第23回PFFアワードグランプリ及びブリリアント賞を受賞。2004年劇映画『月とチェリー』が英国映画協会の「21世紀の称賛に値する日本映画10本」に選出された。2008年脚本・監督を務めた『百万円と苦虫女』で日本映画監督協会新人賞を受賞し、その後も映画『俺たちに明日はないッス』(08)、『ふがいない僕は空を見た』(12)、『四十九日のレシピ』(13)、『ロマンス』(15)、『お父さんと伊藤さん』(16)や、TVドラマ「蒼井優×4つの嘘 カムフラージュ」(08/WOWOW)、「週刊真木よう子」(08/テレビ東京)、「昭和元禄落語心中」(18/NHK総合)、配信ドラマ「東京女子図鑑」(16/Amazonプライム・ビデオ)、「夫のちんぽが入らない」(19/Netflix)など数々の話題作を世に放ってきた。またTVCM第一三共ヘルスケア「ミノン」洗浄シリーズの演出や、高橋一生が出演した資生堂ショートムービー“スノービューティー ホワイトニング フェースパウダー 2017”ショートムービー『Laundry Snow』の脚本・演出もつとめている。

INFORMATION

作品情報
『ロマンスドール』

2020年1月24日(金)から全国公開

監督・脚本:タナダユキ
原作:タナダユキ『ロマンスドール』(角川文庫刊)
音楽:世武裕子
主題歌:never young beach“やさしいままで”
出演:
高橋一生
蒼井優
浜野謙太
三浦透子
大倉孝二
ピエール瀧
渡辺えり
きたろう
配給:KADOKAWA

映画『ロマンスドール』公式サイト

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