山崎まどかが語る「ロマンティックであることは生きる力であり希望」

山崎まどかが語る「ロマンティックであることは生きる力であり希望」

86歳の米最高裁判事ルース・ベイダー・ギンズバーグの魅力

2020年1・2月 特集:これからのルール
インタビュー・テキスト:飯嶋藍子 撮影:佐藤麻美 編集:野村由芽
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「ロマンティック」なものを、古い「女性らしさ」の象徴として否定しないこと。

つけ襟に関しても「ロマンティック」という言葉を使ったように、山崎さんは「ロマンティック」という感覚と長く向き合ってきました。あらためて、山崎さんが生きるうえで「ロマンティック」という感覚を大切にしているのはなぜなのでしょうか。

山崎:希望や生きる力ということとロマンティシズムってすごく結びついていると思うんですよ。作家の田辺聖子さんは「ロマンティック」について、「そういう気持ちをてこにして生きる力を取り戻すという意味を、ロマンティックという言葉につけ加えたい」と言っています。あまりにも素晴らしい言葉だから、私も何度も引用しているんです。

弱いものや甘いもの、柔らかいものや優しいものなんてなくていいっていう人もいるかもしれないけど、「パワー」でなにかを動かすのとはちょっと違う「ロマンティック」が動かせるものもきっとあると信じているし、とても必要なものだと私は感じています。夢見がちであるとか楽天主義であるとか、そういう柔らかいものが好きだという気持ちを「てこ」にして、生きる力を取り戻せることってあると思う。

山崎まどかさん

山崎:今、多様性や新しい女性という言葉がよく使われていて、それは素晴らしい。でもその流れの中でロマンティックなものが、古い「女性らしさ」の象徴のように言われたり、否定されたりすることもある。ただ、そういうことをただ古いものとして捨てるのではなく、新しいものとして捉えなおす文化が、常にフェミニズムのなかにあったと思うんです。

たとえば、その大部分を女性が担ってきたお裁縫を否定するのではなく、これはDIYの文化に連なっているというふうに捉え直す、女性のクラフトを尊ぶ考え方が第三次フェミニズムにあった。「女性の役割に対する偏見だ」ではなくて、「お裁縫は多くの女性が育んできたすごい文化」だと肯定する。言ってしまえば、船やビルを建てることと「つくる」という行為においては変わらないかもしれない。そういう捉え直し方をすることで、自由になった価値観って、これまでにもきっとたくさんあったはずです。

歴史のなかで女性が育んできた文化をすばらしいと思うから、それを今の時代に合う形で捉え直すことをしていきたい。

「最近、手仕事がリスペクトがされるようになってきたのは本当にいいことだと思います」と山崎さん。愛読するアメリカのフェミニズムマガジン『BUST』にも「家政学の見直し」という特集があり、それがとても好きな考え方だったのだそう。

山崎:10年くらい前に読んだ特集記事だったんですけど、家政学って、化学をはじめとするいろんな要素が入っていて奥深いんです。家事としての料理は女の人が当たり前にやることと思われていて、シェフの仕事のように尊敬されていなかった面があるけれど、差し迫った時間や予算内で完成させる必要の中には経済学やタイムマネジメントの要素もあって、すごく複雑で豊かな行為であると肯定的に捉え直すことができる。眼から鱗でした

女性文化は、いろんな制限のなかで花開いてきたんですよね。もちろん、その制限自体を肯定しているわけではありません。たとえば、女の人が科学者になりたいとか飛行機を設計したいというときにそれを邪魔するものがあっては絶対にいけない。でも、飛行機をつくったり政治の世界を変えたりすることだけが立派なのか? っていう疑問は常にあります。そういうものだけを業績としてよしとする風潮自体が、これまで男の人が中心となってつくってきた社会や文化基盤を育んできたんじゃないの? と。私は歴史のなかで女性が育んできた文化をすばらしいと思うし、そこに思い入れもあるから、その文化を今の時代に合う形で捉え直すことをしていきたいですね。

PROFILE

山崎まどか
山崎まどか

15歳の時に帰国子女としての経験を綴った『ビバ! 私はメキシコの転校生』で文筆家としてデビュー。女子文化全般/アメリカのユース・カルチャーをテーマに様々な分野についてのコラムを執筆。著書に『オリーブ少女ライフ』(河出書房新社)『女子とニューヨーク』(メディア総合研究所)『イノセント・ガールズ』(アスペクト)共著に『ヤングアダルトU.S.A.』(DUブックス)翻訳書にレナ・ダナム『ありがちな女じゃない』(河出書房新社)等。

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