つくり手の人たちが何をかっこいいと思ってるのかを知りたいから、そこに近づくために洋服を買って、気持ちやムードを共有しようとしているのかも。(大平)
ーファッションにおける流行って、いろいろなレイヤーがあると思うんですけど、皆さんが感じている流行やトレンドってすごく源泉に近い感じがするというか。
大平:音楽に近いんじゃないですかね。音楽をつくる人たちが聴いている音楽があって、その人たちがつくる大ヒット曲があったりするわけじゃないですか。デザイナーの人たちって私にとってすごく尊い存在で。つくり手の人たちが何をかっこいいと思ってるのかを知りたいから、そこに近づくために洋服を買って、気持ちやムードを共有しようとしているのかもしれない。だからその人たちが何からインスピレーションを得て、どういうアウトプットをしていくのかはすごく目を凝らして見ていますね。
UCO:どのフォトグラファーが撮影しているかとか、ショーでどんな音楽をかけてるのかとかも気になりますよね。
大平:うんうん! 難解であればあるほど「着ます!!」っていう気持ちになります(笑)。服って、まず視覚的に入ってくるものだけど、その裏にはブランドのストーリーやデザイナーの思想があって、映画、音楽、いろんなカルチャーが満遍なく宿っているんですよね。だからはまると楽しいんです。
ー今日、お話を伺っていても、ファッションって目に見えている部分以外での楽しみ方が多層的にあるんだなと、根っこの深さをあらためて感じました。最後にそんなファッションのシーンについて、いま皆さんが思うことをお聞きしたいです。
大平:今日ここにいる人たちはとにかくファッション界をめちゃくちゃ応援していますよね!
井田:僕、ファッション業界が落ち込んでると悲しくなっちゃうんですよ。
大平:ファッションを学ぶ学生が減っているとか聞くとね。井田さんはファッション業界への感謝の気持ちが強そうですね。
井田:めちゃくちゃ強いですね。洋服を好きになってから、そこに紐づくカルチャーや歴史についてのいろんな知識が入ってきて、それがいまの自分をつくっていると思う。それに、この仕事を始めてから自分がやりたいことを言い続けていると、周りの人がタイミングをくれることが多くて。もちろんそこで結果を出せないとだめなんですけど、意外とこの業界の人たちって、本気でやってる人には優しいんだなって。だからありがたいなと思っているっていう、個人的な話になっちゃうんですけど(笑)。
UCO:世の中的にサステナブルの流れがあるじゃないですか、ファッション業界でもそういったアプローチをたくさん見かけるようになりました。
ただ、大量生産、大量廃棄の問題は未だにあってわたし自身もファストファッションブランドのようなものをまったく着てこなかったわけではないんですけど……。過酷な労働条件で工場などで働く方がきちんとした賃金を支払ってもらえないというような話をsnsやネット上で今でも見たりしていて、
生産側のことを考えるとそれがどうしてその価格にになるのか、その裏側にある背景をちゃんと知るということが一番大事な事だなと思っています。一人一人がそういう意識を持ってファッションを楽しめるようになれば自然と良い方向に変わっていけるような気がします。
井田:サステナブルについては本気で取り組んでるところってどれくらいあるのかなって思っちゃうことがあって。「サステナブル」って書いてあるものの方が売れるから書いているような商品もあるらしいんですよ。そういうのを聞くとちょっと違うなと。キーワードとして今流行ってるからとかじゃなくて、本気で考えるようになったらいいなと思います。
UCO:そうですね。キーワードだけを切り取るのではなく。
井田:ファッションって、安易さや軽薄さを感じるものがいいと思うときもあるじゃないですか。でもその軽薄さについて、ちゃんと考えてアップデートしないと、本当にただただ軽いだけになっちゃう気がするので。
UCO:アップデートってすごく大事ですよね。
大平:いまってブランドの服を着た写真をタグ付けしてインスタにアップしたらブランド側がいいねしてくれたり、昔と比べてつくり手と買う側の距離が近いですよね。だからこそ、つくり方も含め、まるごといいと思えるような「自分の推し」みたいなブランドを見つけやすいタイミングだなと思うんです。トレンドを追うことももちろん楽しいけど、自分だけの大好きなブランドやつくり手をぜひ探してみてほしい。そうやってファッションの扉を開いてくれたらいいなと思います。
- 3
- 3