誰かの生きる姿勢や活動を見て、思わず応援してしまいたくなってしまったことは、ありませんか。その相手は身近な人だったり、手の届かない距離で輝く存在だったり、さまざまだと思いますが、応援したり、されたりすることは、お互いに少なからず力を分け与えあって、日々の足取りを軽やかにしてくれる糧になるもの。
She isと“キットカット”によるコラボレーション企画<わたしが応援するあの人たち。そこから生まれる景色。>では、She isのGirlfriends8名が、応援したいと思う個人を紹介。それぞれが、同じ時代に、共に頑張りたいと思える人たちと対話を行なっていきます。
写真家として、また、キャスティングや展覧会のキュレーションを通して、個人の魅力を伝え続けている小林真梨子さんが紹介してくれたのは、映画監督の枝優花さんと、バンド・羊文学のギターボーカル、塩塚モエカさん。分野は異なれど、同世代のつくり手として、互いの活動を讃えあい、日頃から交遊を深める三名。ものづくりについての思いや、つくることを通して世界が広がってゆくことについてどのような意識を持っているのでしょうか。
そして、新型コロナウイルスによって多くのつくり手が多大な影響を受ける最中、オンラインで行われたこのインタビュー。誰かを支えるということの意味が大きくなっている状況において、彼女たちが考えていることを伺いました。
ライブをやったときに来てくれて初めて会って、「これが噂の小林真梨子か」って。(塩塚)
ー小林さんから、「応援したい人」として紹介いただいた枝さんと塩塚さんですが、みなさんはどのように出会ったのですか?
小林:大学生の頃から表参道のROCKETでバイトをしていて、2017年に展示の企画を頼まれて。私は1993年生まれで、もうすぐで25歳というタイミングだったんですけど、25歳は私の中で「大人になる歳」というイメージがあって。大人になる一歩手前のこの時期に、それまでそれぞれが過ごしてきた環境で感じたことを集大成として作品にしてほしい、24年間同じ年月を過ごしてきた同い年の人たちとものづくりがしたいと思ったのがきっかけで、いろいろなジャンルで活躍している同い年のクリエイターの子たちを集めて、一緒に展示をやることにしたんです。それで、1993年生まれの人を探していたときに、ちょうど映画『少女邂逅』が公開されて。友達のモトーラ(世理奈)ちゃんが出てるから観に行ったんですけど、チラシを見て、監督の枝ちゃんが同い年だって知ったんです。
塩塚:その話、初めて聞いた。
小林:私が観に行った日にちょうど舞台挨拶があって、そこで直接、枝ちゃんに話しかけた気がする。そうやって知り合って、『1993』展の宣伝用のムービーを枝ちゃんにつくってもらったりして。
2018年1月に開催された『1993』展の宣伝用ムービー。参加アーティストは小林真梨子、枝優花、UMMMI. 苅田梨都子、草野庸子、中田みのり、櫻木大悟(D.A.N.)ほか多岐にわたる。
枝:もともと真梨子ちゃんの存在は知っていたんだけど、話しかけられたときには顔と名前が一致していなくて。その後、「あ、この人か!」っていろんなことが繋がった。
小林:モエカとは、『HIGH(er)magazine』のharu.がきっかけだよね。
塩塚:haru.さんから、「モエカには絶対に真梨子を紹介したい」ってずっと言われてて。下北沢のBASEMENT BARでライブをやったときに来てくれて初めて会って、「これが噂の小林真梨子か」って。仲良くなれてよかったね。
小林:ほんとだよ。家も近かったんだよね。
塩塚:そうそう。枝さんもだよね。
枝:うん、めっちゃ近かった。塩塚とは真梨子ちゃんから繋げてもらって知り合ったね。「絶対好きだから」って言われた(笑)。同時期にほかの人からも同じことを言われて、その人からは羊文学のCDまで渡された。それで聴いてみたら、すごく好きだったんです。ちょうどそのときに、監督していた『放課後ソーダ日和』の主題歌を誰に頼むか考えていたんですけど、羊文学がいいなと思って、繋げてもらったんです。
放課後ソーダ日和【第1話:特別な時間のはじまり】(YouTubeで観る)
それぞれの良さを知ってる人たちを合わせたら、絶対に良いものが生み出せる気がするっていう自信があって。(小林)
ー小林さんはカメラマン以外にキャスティングのお仕事もされていたり、人と人を繋げることへの熱意をすごく持ってると思うんですけど、それってなぜなんですか?
小林:単純に、自分がコラボを見たいなって思う人たちを繋げているんです。それぞれの良さを知ってる人たちを合わせたら、絶対に良いものが生み出せる気がするっていう自信があって。枝ちゃんとモエカに関しては、それぞれの作品が私は好きだし、枝ちゃんがつくる映像と、モエカの歌声がフィットするなって思ったから。
ー小林さん自身もつくり手ですが、そこに自分が加わりたいという思いはないんですか?
小林:全然。私は見てる側でいいです。でも、あとから、私がきっかけだって言ってもらえたら嬉しいっていう気持ちはある(笑)。
ー(笑)。じゃあ、いまこうして二人が意気投合してるのは、小林さんにとってすごく嬉しいことなんですね。
小林:嬉しいですね。
塩塚:真梨子さんより枝さんに会ってるもん。
小林:ちょっとずるいよね(笑)。
ー何かをつくり出すことで繋がったみなさんだと思うのですが、表現することでこうして人との繋がりができていくことについて、どのような思いがありますか。
塩塚:めっちゃ面白いですね。何かをつくって繋がっていくって、ちょっと大袈裟だけど、人間の根本的なものを感じるというか。パンをつくる人と、野菜をつくる人がいて、その二つが合わさってその日のご飯ができるみたいな。そういう光景が思い浮かんで、すごく幸せ。
小林:音楽をつくっている人って、たとえばMVをつくるために好きな映像監督にもお願いできるし、ジャケットをつくるために好きなカメラマンにお願いできるし、いろんな人たちを巻き込めるのがすごくうらやましいな。
塩塚:そうかもね。最初はものをつくる人として仲良くなるけど、その後、一緒に遊びに行ったりして、どんな人かわかってくると、つくったものに対しての愛着がさらにヤバくて。本当に大切なものになる。
小林:映画はどう?
枝:ドラマと映画とMVでは、全部段取りが違うから、チームをつくるときに私が口を挟めるときもあれば、既に決まっていることもあって。作品によっていろいろではあるんだけど。でも、基本的には作品を良くするためにスタッフを組みますよね。このカメラマンはこういう画を撮るのが得意だから、今回一緒にやりたいなとか、日常に落とした服を集めるのがうまいスタイリストさんだからぴったりだな、とか。
小林:監督だと、スタッフの人が決まった状態ってやりにくかったりはしない? それがカメラマンだったりすると特に。だって、通じ合わないと一緒につくれないよね。
枝:そういう場合は、ほかの人たちに「この人ってどんな性格ですか?」とか聞くかな。技術は良かったとしても、うまが合わないと大変だから。性格を把握しておかないとコミュニケーション取れないしね。
小林:自分が選んだカメラマンの人じゃない場合でも、思い描いているイメージをちゃんと汲み取ってもらえるの?
枝:汲み取ってもらえるの。いつもすごいなって思う。「ここは青っぽくふわっとした感じがいいです」とか私が言うと、5秒くらい止まってから「はい」って言って、30分後の撮影でもうできてたりする。現場に入るまでに、めちゃくちゃ資料とか渡してイメージを共有するんだけどね。
塩塚:でも逆にさ、自分では思いつかなかったけどこういう風に撮るのもいいなって、なることはないの?
枝:あるある。それが一人でやらないことの良さだなって思う。
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