自分も含め、周りの子たちも、映画とか音楽とかインスタの写真にすごくすがっていて、それでどうにか気持ちをごまかしたり、日常を豊かにしようとしている。(枝)
ーさっき枝さんがおっしゃってましたが、みなさんはそれぞれ業界や職種を横断しながらいろんな人と関わりあっている感じがすごくします。
小林:それは多分SNSの影響が大きいと思います。気軽に連絡が取りやすい環境があるから、横の繋がりも広がった気がする。
塩塚:たしかに。いま、こういう状況だからずっと家にいるんだけど、この時代でまだよかったなって思ってる。
枝:これが10年、20年前だったらやばかったよね。サブスク(リプションサービス)がなかったら、家で観られる映画や、聴ける音楽も限られたものだけになるし。私はやったことないけど、オンライン飲みとかも流行ってるよね。
塩塚:めっちゃやってるよ。オンラインダンスパーティーしたりしてる。同時に同じ音楽流しながら、踊るの。
枝:さすがだな、楽しそう。あ、でも私オンラインでみんなでテラハを観たよ(笑)。「いっせーの」でそれぞれ再生して、ただただリアクションしてるだけなんだけどね。
ー自宅にいることが求められる状況の中での繋がりについての話になりましたけど、写真も映画も音楽も、今すごく影響を受けていると思います。そうした中で、自粛する文化施設への助成を求める署名活動『Save Our Space』の活動が話題を呼んだり、文化のつくり手やそこに携わる人たちを支えることの意味がすごく重くなっている状況だと思うんですけど、みなさんが今考えてることをお聞きしたいなと思って。
枝:こういう仕事をしていると、社会の役に立っていないんじゃないかなって思う瞬間があって。
小林:うん。
枝:不安になるんだけど、今みたいな状況になったときに、自分も含め、周りの子たちも、映画とか音楽とかインスタの写真にすごくすがっていて、それでどうにか気持ちをごまかしたり、日常を豊かにしようとしている。ちょうど、Amazonプライムビデオで『少女邂逅』が配信されたタイミングがコロナの流行と重なっていたこともあって、みんなが観て、感想をくれたりするんですけど、自分はそういうものをつくっている側なんだなっていうことに、変な言い方かもしれないけど、ちょっとほっとしたところがあった。自分も支えられてるし、支えてたんだなって。
同世代の演者やスタッフのチームでつくり上げた枝優花さんの映画『少女邂逅』はAmazonプライムで配信がスタート(AmazonプライムのWebサイトへ)
枝:状況としては、みんな苦しいですよね。クリエイターも現場がなくなっちゃったからお金がないし、配給会社も映画を上映できない。劇場もすごく大変で、ミニシアターはこの状況が1、2か月続いたら、潰れてしまうところが全国にたくさんある。自分たちは発信する側だけど、それを届けてくれる先が今危ない状況にある中、どうやって人と人との繋がりで守っていったらいいんだろうかって、最近、連日映画監督同士でチームを組んで会議をしながら考えています。
ー今後はどういう展開を予定されているんでしょうか?
枝:去年、空前のサウナブームでしたけど、「サウナイキタイ」っていう全国のサウナの情報が網羅されたサイトがありますよね。これから、そのミニシアター版をつくろうとしていて。いまどんなものが上映されているかや、どういう特典があるか、地方のミニシアターだったらその地域の出身監督の情報とかも見れるような。日本映画が衰退している状況で、このプロジェクトをきっかけにもう一回映画文化を再興させれたらと思っています。でも私も、みんなも素人だからわからないことが多すぎて。動き始めたものの、わからないことだらけで超不安ですけどね。
自分がちょっと声を出すだけで、こんなにたくさんの人が喜んでくれるんだって、そこで初めてリアルタイムにわかった。(塩塚)
ー塩塚さんはいかがですか?
塩塚:ライブが先月から5月くらいまで、全部中止になっていて。それに今羊文学は、配信とか通販とか、ちょっとでも人が外に出て動かなければならない作業があることは全部やめているんです。もちろん、みんなそれぞれのやりかたをすればいいと思うんですけどね。メンバーそれぞれ練習はできるし、私はパソコンで作曲することもできるんですけど、羊文学はアナログでやることに重点を置いてきたバンドだったから、自分ってミュージシャンとしてなんなんだろうみたいな気持ちになっていて。
そんな中で、これまではずっと、インスタライブって恥ずかしいなと思っていたんだけど、こないだ思い切って3曲くらい歌ってみたら、みんながすごく喜んでくれて。自分がちょっと声を出すだけで、こんなにたくさんの人が喜んでくれるんだって、そこで初めてリアルタイムにわかった。ちゃんとしたライブは今はできないけれど、こういうことは続けていこうと思えて、すごく感動した瞬間でした。
ー応援したいつくり手をお金の面で直接支援したり、行政への働きかけに賛同したりするのはもちろんすごく大切なことだけど、それが難しい状況にある人もいるであろう中で、インスタライブに反応を返すような行為も、力を分け与える方法になるんですね。
塩塚:すごくなります。業界としては、ライブハウスもやばいし、小さいレコード屋さんとかもきっと大変だと思う。いつかまたライブハウスに行けるときのために、ドリンクチケットをちょっとだけ安く買っておけるような動きが出てきているから、そういうものをチェックしたり、シェアしたり、ちょっとずつできることからやっていくのが大切かなって思います。
ー小林さんはどうでしょう。
小林:写真はSNSでも気軽に見れるものだけど、その一枚で人を癒すことができるのかもしれないなと思っていて。私の写真を見て、「自由に動けるときが来たら、こういう場所に行ってみたいな」って思ってもらえたら良いなと思ってます。この期間に自分のお気に入りの写真を載せ続けて、この状況があけたときに、仕事をもらえるように頑張りたいな。
塩塚:みんな、未来のことを考えているね。たとえば、さっき枝さんがミニシアターの話をしていたけど、ライブだったら、今まで無料で行われることが多かったライブ配信を有料にすることがこの機会にすごく進んでいたり、新しいライブの形が始まっていて。どうしても前向きになれない部分もあるけど、未来が変わる瞬間でもあると思うから、みんなで頑張っていきたいな。
- 3
- 3