若い人にはまず自分がいいと思うもの、好きなことを大事にして欲しい。それが見つからないなら、やりたくないことをやらないようにするだけで、結構楽しく生きていける気がします。(長島)
─男性主体だった社会から少しずつ変化し、いまは女性の中でもいろいろな価値基準が生まれていると思います。長島さんが写真集のインタビューにて「才能や能力があって、すでにいろいろ成し遂げてきたにもかかわらず、自分はとるに足りない人間だという考えを振り払えない、自分のような女性に作品を見てもらうことが重要です」と書かれていましたが、そうした女性へ向けて、メッセージをいただけないでしょうか。
長島:わたし自身は、言いたいことがあれば伝えたい性格なんです。やりたいことがあればやりたいし。ただ、こだわりややりたいことがたくさんあるわけじゃなくて、嫌なことだけは絶対にやりたくない。一歩を踏み出せない人がいるとして、その理由はわたしにはわからないけれど、お喋りな人がいれば寡黙な人がいるように、人それぞれの個性や得手不得手があると思います。たとえ自分で語らなくても、誰かに自分を勝手に語らせなければいいんじゃないかな。与えられたものをそのまま受け入れない、とか。
─疑ってかかってみる、ということでしょうか。
長島:たいてい「本当?」って、一回考えます。たとえば、「女性が輝く社会」って、なんで女性が輝かなきゃいけないのか、わたしたちは本当に輝くべきなのか、マットな質感の魅力だってあるんじゃないのか、という感じで。輝きたいかどうかはわたしが決めればいいことですから、まるでそれが理想の女性みたいに、知らない人に遠回しに押し付けられるのは嫌です。性別に関係なく、若い人にはまず自分がいいと思うもの、好きなことを大事にして欲しい。それが見つからないなら、やりたくないことをやらないようにするだけで、結構楽しく生きていける気がします。
若い女性に教訓を垂れてくる人は多いですけれど、本当に必要なのは、褒め言葉だけだと思います。(長島)
─好きなことを見つけなくてはいけないということばかりに目が向きがちですけど、「やりたくないことをやらない」って最高です。
長島:でしょう?(笑)。やりたくないことをやらされそうになったら、戦ってみてほしいと思います。戦うといってもまずは恋人とか、親とか、近しくて信頼できる人に伝えることからでいいと思う。自分の考えが相手の気分を害したり、怒らせたりするようなことかもしれなくても、伝えて悪いことはないと思うんです。身近な人とそういうコミュニケーションが取れるようになったら、外でも言えるようになるかもしれない。
─何でも話せる相手は、とても理想的ですが……。
長島:難しいですよね。でも、身近にいる人だからこそ、諦めたくないんです。我慢しちゃうと、取り返しのつかないことになりますから。突っ込んで話をすればその人が、たとえ考え方が違っても自分の声に耳を傾けてくれる人なのかどうかわかるし、わたしを一人の意思ある人間として認めない人とは一緒にいられないと、わたしなら思うから。
─本日お話を伺い、長島さんの本を読んだ後の「長島さんありがとうございます! よし、やるぞ!」という気持ちを思い出しました。
長島:それは嬉しいです。私も上野千鶴子さんの本を読むと、同じ気持ちになります! 若い女性に教訓を垂れてくる人は多いですけれど、本当に必要なのは、褒め言葉だけだと思います。一般的に女性は社会から内省を強いられることが多いので、彼女たちが健全な自尊心を維持するのに役立つ言葉をかけることで、世界はかなり素敵になる気がします。
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