いまいる場所から、世界への視野を拡張しようとするとき、アートはその手がかりの一つになるかもしれません。そんなアートとの出会いのきっかけになるようなイベントが、9月18日から27日にかけて、渋谷PARCOの全館で開催された『SHIBUYA PARCO ART WEEK』です。館内の9つのギャラリーや、各店舗におけるアート作品の展示、限定商品の販売など、渋谷を拠点に、時代と共に文化に寄り添ってきた、渋谷PARCOならではのイベントが行われました。
今回は、そんな『SHIBUYA PARCO ART WEEK』を、アートに造詣の深い和田彩花さんと一緒に巡りました。この春、美術史を専攻していた大学院を修了し、アイドルという立場からアート、ひいては文化を伝えてゆくことに、強い信念を持つ和田さん。和田さんの視点から見た『SHIBUYA PARCO ART WEEK』の模様をお届けするとともに、和田さんがアートから受け取ってきたもの、美術史から学んだという、歴史をつくる一員としての感覚などについて、お話を伺いました。
<もくじ>
P1~2:『SHIBUYA PARCO ART WEEK』のレポート
P3~4:和田彩花さんのインタビュー
大竹彩子さんの新作個展『GALAGALA』/「写真と絵画の作品それぞれまったく違う媒体だから、想像がつかなかったけれど、観ていてすごく楽しかった」
まず和田さんが訪れたのは、PARCO MUSEUM TOKYOで行われていた、大竹彩子さんの展覧会『GALAGALA』。
ベトナムと香港で撮影された写真を2枚1組に並べた作品と、大胆な筆遣いで女性を描いた、鮮やかなペインティング作品によって構成されていました。作品を鑑賞後、当日在廊していた大竹さんに、和田さんから質問を投げかけます。
和田:写真と絵画の作品があると聞いて、それぞれまったく違う媒体だから、想像がつかなかったんですけど、観ていてすごく楽しかったです。写真作品の方は、一つの写真だけで完成するのではなく、二つを並べることによってバランスが際立って見えるのが、素敵だと思いました。二つの写真を並べるときは、どんなことを意識しましたか?
大竹:楽しかったと言ってくださって嬉しいです。展示空間に入ったときに、視覚から明るい気持ちになってもらえたらという気持ちがありました。
写真の作品に関しては、違う場所で違う時間に撮っていても、並べることでどこかしっくりくる二枚を一組にしていて、わかりやすいところでは色や形に共通点があると思います。
和田:絵画の方で女性をモチーフにしているのはどうしてですか?
大竹:ヴィンテージの本や、昔の女優さんのブロマイド写真、ピンナップ写真をコレクションしているので、そういうものからも影響を受けています。女性のメイクや、ヘアスタイルって自由にできる場所だと思うので、描いていると私がスタイリングしているような気持ちにもなります。
和田:わあ、だから女性の髪型がちょっと昔風の感じなんですね。じゃあ、最後にいま好きなことはなんですか? 私、この質問を作家の方にすることが多いんです。好きなものと作品が、どこかで繋がっているのかどうか知りたくて。
大竹:なんだろう……「なんでも」というと乱暴ですが、毎日常になにかしらに興味を持って生きています。日々街を歩くなかで、自分の目で見て偶然出会うものをすごく大事にしていますし、そうじゃなかったら見つけられなかったものがたくさんあると、今回並んでいる作品を見てあらためて実感しました。
和田さんが特に気に入ったと話していたのが、こちらの作品。
和田:切られた部分から見えている青がアクセントになっていて、対になっている写真も青いから、バランスが素敵だなと思いました。左の写真はどこかの街中にあるモチーフの一部分だと思うんですけど、それが拡大されて一つの面になると、もともとこういうデザインであるかのように見えて、面白いです。
MARCOMONDEのTakahiro Murahashiさんの作品/「こうした作品がファッションアイテムを売っているお店の中に置かれているのが、最大の素敵ポイント」
続いてはソックスブランド、MARCOMONDEのお店へ。今回、展示されていたのは、Takahiro Murahashiさんの作品。一見すると、古代の彫刻や土器などのように見えますが、実はさまざまなパーツのコラージュによって、現実には存在しないオブジェを形づくっているのだそう。店内にはこのほかにも、MARCOMONDEの好きなもの、クリエイションに影響を受けてきたもの、日常の中の景色から、MARCOMONDEが親愛の情を感じるつくり手のこだわりが詰まった作品まで、さまざまなセレクトアイテムがそろっています。
和田:コラージュされた元のモチーフがプリミティブな雰囲気を持っているから、プリミティブアートと一緒に置かれていることで素敵な空間になっているなと思います。こうした作品がファッションアイテムを売っているお店の中に置かれているのが、最大の素敵ポイントです!
ほぼ日カルチャん/「このグッズたちはいいところをついていますね! 私が悩んでいたことをばっちり解決」
都内で開催中の展覧会や演劇など、文化にまつわるさまざまなアイテムを紹介する、ほぼ日カルチャんでは、青山のTOBICHI2で開催していた『中原淳一のはじめての、ふろく展。』のコーナーなどが展開されていました。足繁く美術展に通う和田さんは、最近発売された、展覧会の会場内で便利なサコッシュやチケットホルダーといった、ほぼ日カルチャんのオリジナルグッズが琴線に触れたようです。
和田:このグッズたちはいいところをついていますね! 何度もチケットを見せる必要のある展覧会も多いから、サコッシュの外側にポケットがあってチケットを入れられるのはすごくいいです。それにチケットホルダーって、ポケットの上側が開いているものが多くて、中身がこぼれ出ちゃうから使わなくなっていたんですけど、これは私が悩んでいたことをばっちり解決してくれます。
デルフォニックス渋谷『福田利之 Toshiyuki Fukuda 2020 Small Exhibition』/「どんな技法で絵を描かれているのかも、気になります」
ステーショナリーや雑貨を展開するデルフォニックス渋谷に併設された、Rollbahn(ロルバーン)ショップ&ギャラリーで行われていたのは、イラストレーターの福田利之さんの展示『福田利之 Toshiyuki Fukuda 2020 Small Exhibition』。ドイツ語で滑走路という意味を持つノート、Rollbahnが10組の作家とコラボレーションした企画『My Favorite things Rollbahn by 10 Artists』に起用された作品の原画が飾られていました。福田さんのテキスタイルブランド、十布のアイテムも販売されていて、和田さんはその作風の広さに驚いた様子。
和田:絵画の方は絵本に出てきそうな柔らかいモチーフが多いけれど、テキスタイルの方はまた全然スタイルが違うんですね。どんな技法で絵を描かれているのかも、気になります。
sneeuw/「こういう風に作品を切り取って、お洋服としてデザインされているのも素敵」
雪浦聖子さんがデザイナーを務めるブランド、sneeuwでは、雪浦さんと親交のある4名のアーティストとのコラボレーションにより生まれたロンTや、「sneeuw fresh pack」と名付けられた、端切れをぎゅっと集めたセットを特別に制作。ファッションにアート作品が溶け込んだアイテムが販売されていました。
和田:絵画のイメージがそのままプリントされたお洋服はたくさん持っているんですけど、こういう風に作品を切り取って、お洋服としてデザインされているのも素敵ですね。同じ形のTシャツでも作家さんが違うと、印象が変わるなと思いました。
ウンナナクール×リトルサンダー/「同じアジア圏だから、通ずる部分もありつつ、だからこそ違いも見えてきて、面白かった」
香港のイラストレーター、リトルサンダーさんとコラボレーションしていたのは、アンダーウェアブランドのウンナナクール。二度目のコラボレーションとなった今回は、人気シリーズ「tokitomeBra」のシーズンテーマである「NIPPON」をイメージして、実際に女の子が商品を着用したイラストを描いてもらったのだそう。
和田:色の使い方が印象的ですよね。提灯や装飾などがどこか香港ぽい雰囲気で、作家さんの背景が窺えました。同じアジア圏だから、通ずる部分もありつつ、だからこそ違いも見えてきて、面白かったです。
和田さんとめぐる『SHUBUYA ART WEEK』、折返し地点も過ぎて残るはあと2箇所。お次は、大学在学中に2年間かけて日本全国にある1741の市町村すべてを廻り写真を撮ったかつお(仁科勝介)さんの写真展にうかがい、作家ご本人とお話ししました。
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