偶然出会うものに興味を持って見てみるのは、素敵なことだなと思うんです。
─今日はいかがでしたか?
和田:楽しかったです! 服や雑貨をお買い物しに来る場所にアートがあって、お店の世界観とコラボしていたのが素敵だなと思いました。全体を通して、文化というものがすごく大切にされている感じがしたんです。例えば、ほぼ日カルチャんで展覧会の図録やグッズを売っていたのも嬉しかったし、MARCOMONDEのように靴下屋さんなのにプリミティブなアートが置かれている環境も素敵だなと思いました。美術館に行くことが身近じゃない人たちも来る場所で、文化というものを紹介してくれていることが、日々美術を発信している私としてはすごく嬉しかったです。
─確かに美術館やギャラリーにはそもそも関心のある人しか行かないけれど、こうした場所にアート作品があることで、アートに関心を持つきっかけになるかもしれません。和田さんご自身は、駅に貼ってあったマネの展覧会のポスターを偶然見かけて足を運んだことがアートに出会ったきっかけなんですよね。
和田:私にとっては出会えて本当によかった偶然で、私みたいにちょっとしたきっかけが、のちのちの人生に大きな影響を及ぼすこともあるから、偶然出会うものに興味を持って見てみるのは、素敵なことだなと思います。
─和田さんは美術のどんな部分が特に面白いと感じていますか?
和田:私は近代の絵画と、現代アートが特に好きなんですけど、絵画って人がつくっているものだから、誰かが手を動かした筆の動きの跡や選び取った色、関心を持ったモチーフや主題があるじゃないですか。そういったものを見るのは、癒しでもあるし、何より心の充実度が高くなるんです。私は芸術家をすごく尊敬していて、芸術家の方たちが向ける目線には多くの人に気づけない発見があると思っているので、芸術家の方たちが選び取ったものを大切にしたいと思っています。
─自分の視界だけでは見えてこないものの存在を、作品を通して知ることができるのはアートの大切な役割ですね。
和田:自分の世界が広がるし、自分とは違う感覚の人がいることを知ることができるから、それが一番素敵なポイントだと思います。
美術史を学んだことで、これからの未来を自分はどう生きればいいんだろう? と考えるようになりました。
─和田さんはこの春修了された大学院で美術史を専攻されていましたが、歴史という観点から美術を見ていくことにはどのような魅力がありますか?
和田:美術史では、歴史の中で美術がどんな風に扱われてきて、どんなものを表現していたかを学ぶんです。例えばマネであれば、都市のカフェで働く女の人の姿を描いた作品があるのですが、いまであればそれはごく普通に見かける光景かもしれないけれど、歴史を踏まえて見ていくと、マネがその作品を描いた頃はカフェが誕生した「近代」という時代で、その歴史が、いまカフェが普通にある時代に生きている自分たちにもつながっているということに気づくんですよ。
だから美術を歴史から見るというのは、歴史を振り返ることでもありつつ、そこからもたらされた影響や、変化を知ることでもあります。歴史というのは、いま私たちが生きている時代につながっているものなんだという感覚を、私は美術史を学んだことで持ちました。
─歴史はいまと無関係なものではないし、自分もまた歴史の渦中で生きている一人であるという意識を持たれたんですね。
和田:歴史的な出来事や、偉大な英雄って、自分とは遠いようにも感じてしまいますけど、美術史を学んだことで、自分も歴史というものの枠組みに入っているんだと思えて嬉しかったです。それに、だからこそこれからの未来を、自分はどう生きればいいんだろう? と考えるようになりました。