ピンクが好きな娘とピンクをまったく着なかった私
/クロダミサト

娘は勝手に自分の好きなものを見つけ成長している

2017年11月 特集:ははとむすめ
テキスト:クロダミサト 編集:竹中万季
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「母と娘」について何か文章を書くことになった。もともと娘を産んだ日から娘という存在についてあれこれ考えていたので、とても嬉しかった。

さて書いてみよう……とパソコンの前に座ってみたが、意外と「これって娘じゃなく息子にも当てはまるんじゃないかな?」と思えるエピソードが多く、困ってしまった。とりあえず、私と母について考えてみることにした。

母は三重県の田舎で産まれ、高校を卒業し、すぐに地元の企業に就職、就職してすぐに紹介された父と結婚した。20歳で嫁入りし、21歳で母となった。花農家の長男に嫁いだ母は、朝早くから夕方まで働き、食卓には祖父母が好きなものを中心にいつもおかずがたくさん並んだ。お風呂は必ず一番最後に入った。若いのによく働く、とてもよくできた「嫁」だと近所からも親戚からも評判だった。

花という生きものを育てていたため長い休みは取れず、土日も仕事なことが多かった。そんな生活に不満を抱いていた母は、小さな頃から私に「結婚するなら次男にしなさい。土日が休みな会社員にしなさい」と何度も言った。

こうやって文章に書くと、まるで母親が嫁としての立場の辛さに病んでいる人のようにみえるが、母は優しく明るい人で、「次男と結婚しなさい」と言う台詞も、「できればそうした方が良いと思うよ」という言い方だったので、私自身さほど気にも留めてなかった。

しかし私は今の旦那さんも含め10人近くの人と付き合ったが、そのうち長男はたった1人で、残りは全員次男だった。結婚した相手も、もちろん次男である。

この結果は母のかけた呪いではないかと、私は大きくなってから恐ろしさを感じた。「教育」という言葉はそのまま「教えて育てる」と書くが、辞書で引いてみると「ある人間を望ましい姿に変化させるために、心身両面にわたって意図的、計画的に働きかけること」とある。怖い。怖すぎる。「教育」という言葉が急に怖く感じる。

そんな経験を経て、「人を育てる」こと(「教育」すること)を不思議に感じているうちに私にも娘が産まれた。私も「教育」する日が来たのだ。

周りの友人たちは、自分が好きなアイドルグループやディズニーのキャラクターなどを自分の子供にも見せまくり、それを笑って「洗脳」だと言った。しかし私は笑えない。ちっとも笑えない。自分の子供だからといって、自分の価値観を押し付けないようにしようと心に誓った。

子供を産む前から世間から聞いていたような、「自分の子供は自分の一部」とか「自分の子が可愛くて仕方ない」と言った感情は私にはあまり生まれなかった。調べてみると我が子を愛する感情はオキシトシンというホルモンの分泌によるものの影響だそう。私は子宮収縮の経過もあまり良好ではなかったので、このホルモンの分泌が少なかったのかも。

さて、そんなことを色々考えながら、子育てが始まり約2年が経過した。2年経て思うことは「教育って一体なに?」と叫びたくなるくらい、娘は勝手に自分の好きなものをどんどん見つけ成長している。音痴なので鼻歌すら歌わない私と違い、保育園のおうたの時間には一番大きな声でうたを歌い、女の子っぽいものが苦手でピンクなどまったく着なかった私が持つ買い物カゴに、ドサドサとピンク色の服を入れてくる。

教育だなんだと考える前に、私と娘は長い時間一緒に過ごす対人関係にあるのだ。影響しあって当然である。ピンク色の服を着こなす娘を見て、ピンクも可愛いなと思い、最近ピンクの靴を買った。私が彼女に教えられることも多いように、私が母に教えたこともきっと何かあるのだろう。

PROFILE

クロダミサト
クロダミサト

2009年、京都造形芸術大学 芸術学部 情報デザイン学科卒業。2012年、東京工芸大学 大学院 芸術学研究科メディア・アート専攻修了。
写真を中心に主に関東で発表、活動中。
自分自身の経験を踏まえ、自分の身近にあるものをモチーフとし、 “性”や“女性”のあり方、また“人の感情”をテーマに制作を行っている。
代表作に「沙和子」「沙和子 無償の愛」「HER」「美しく嫉妬する」など。

ピンクが好きな娘とピンクをまったく着なかった私/クロダミサト

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