なんでもつくる 一緒につくる/郷田いろは

自分たちでつくり出したものは、不完全でも愛おしい

2018年5月 特集:生活をつくる
テキスト・撮影:郷田いろは 協力:野口翔平、小林舞衣 編集:野村由芽
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私は今、駅から遠くてちょっと古いけれど屋上のある小さな一軒家に、友人たちと3人で暮らしています。

私たちの生活は「家具を一緒につくる」ことから始まったように思います。
引っ越したての空っぽの空間で、毎日深夜まで(なるべく音をたてないように気をつけながら)木材を切り、ビスを打ち、ワックスを塗っていました。

一番最初につくった机と椅子です。晴れていたので、公園に持ち出して3人で写真を撮ったら、なんか愉快な写真になっちゃった

つくったものいろいろ

机と椅子。家にある時はこういう感じ

2×4の材(どこのホームセンターでも買えるポピュラーな規格の材木、およそ2インチ×4インチ)を突っ張ったところに棚板を渡しただけの簡単な本棚。3人ぶんの本となると、このサイズでは全然収まりきらないので結局各自の部屋とかに置かれてるのだけど、壁が棚なのっていいよね、好き

料理用の作業台。木材で天板をつくってそこにタイルを貼りました。脚はIKEAのやつ

家具をつくる過程で、自分たちが心地よく生活を送るために、どこにどういうものがどのくらい必要か、を考えて擦り合わせていきました。

家具の他にも、ジャムやラムレーズンなどの保存食、モルタルの鉢植えなど、なんでもつくっています。

モルタルでつくった鉢植え

人を招いてのパーティー。いろいろな料理をつくっておもてなししたり、みんなでつくったりする

先に挙げた例は、全部つくらなくたってどうにでもなることばかりです。

家具は、もっと便利で丈夫なものを手頃な値段で買えるかもしれない。ものづくりのプロじゃないから、つくったものがちょっと使いづらい時もあります。ジャムは、つくってみると分かるけれど、買ったほうがずっと安い。お家でのパーティーはお金で買えないけど、外食だって楽しい。

なんでつくるんだろう

誰しもに、自分の思う心地よい生活の基準みたいなものがあって、そのためにしているちょっとした工夫や実践があります。私たちの生活においてはそれが、「とにかくいろいろつくる」ことなのかな。自分たちでつくり出したものはちょっと不完全なところがあったって、それすらも愛おしく感じられたりする。
誰かの真似をして、お金とイメージを消費するだけの「ていねいな暮らし」はすぐに疲れてしまって続けられなさそうだけど、自分と周りの心地よい生活のために無理のない範囲で、必要なものを考えてつくってみることならできそうだな、と思っています。

100のささやかな実践

人の数だけ違う生活の心地よさがあって、そのためにそれぞれが行なっているささやかな実践が無限にあるから、一つ一つを挙げ始めるとキリがないのだけど、私は、そういうのに気付くたび、すごく嬉しくなってしまう。

例えば、近所に、靴を干す時必ず小さな花を隣に置いている家があります。これは、このお家の人が晴れた日にちょっといい気持ちになるためのささやかで愛すべき実践だと言えるんじゃないかな。

見かけると嬉しい

つくること、壊すこと、またつくること

つくった椅子や机は、自分たちでつくったから壊し方が分かります。だから、この小さな一軒家を出て違う場所で違う人と違う生活を始める時には、つくった時とそっくり逆の手順でバラバラにして、ただの木材に戻して……。
そうしたら、また新しいものをつくることができます。

気づけば、同居人と同居人として過ごした時間の方が、ただの友達として過ごした時間よりも長くなっていました。引っ越す時、私は一週間くらい泣いちゃうかもな。
でも、自分が手を動かして何かをつくれることを知っていること、そうしてできた完璧ではない何かを愛せること、一緒につくる他人のことを大切に思えること。
人とつくって、暮らしていく途中で得た、居場所や言葉やいろんな気持ちは、環境が変わっていってもずっと変わらないで自分たちの中に存在してくれると思っています。

PROFILE

郷田いろは
郷田いろは

1995年生まれ。
渋いギャル
「冷凍都市でも死なない(shinanai.com)」とかをやっています。夢はお店をすることです。

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