誰もが自分の人生の舵を取って生きていけるように/河村敏栄

花と女の人生がテーマの雑誌を作ったMAG BY LOUISE店主

2018年5月 特集:生活をつくる
テキスト・撮影:河村敏栄 編集:竹中万季
  • SHARE

「MAG BY LOUISE」で毎月開催している花のワークショップやレッスンは、
もはや私のライフワークになっています。
20代や30代の女性が多いのですが、年上の女性ももちろん、
様々な年齢の女性たちが集まる小さな空間に花があるおかげで、
初対面でも仕事や恋愛、育児や介護などいろんなことを優しい気持ちで話せる時間が楽しい。
彼女たちがつくることに真剣になっている顔も好き。

つくり終えたあとで、ここのバランスが悪かったとか、色の組み合わせが気にいらない、
なんて感想をよく聞きます。
自分がつくったものより隣の人の方が可愛く見えるらしいのです。
私が感じるに、これは半分、ほんとのことかもしれません。
だけど口ではそう言いながらも写真を撮っている彼女たちの様子を見れば、
自分で束ねたちょっと不細工な花束が
一番愛おしいと思っているのは一目瞭然で、
そういう瞬間が一番好きです。

結婚や家族のゴタゴタで悩んでいた30代、
たまたま読んだ本をきっかけにフェミニズムという言葉を知りました。
今まで当たり前だと信じていた価値観にちょっとずつ疑問が湧いてきていた当時の私は、
その答えがフェミニズムにありそうな気がしてワクワクしました。

フェミニズムのしんどいところは、勉強すればするほど、怒りに対して敏感になってしまうこと。
世の中には受け入れがたい悲しい事件が沢山あって、
一体私は誰と戦っているのか、そもそも誰かと戦わないといけないものなのか、
みたいな自分への問いが永久に続くことです。
フェミニズムが孤独から救ってくれたり、ズバッ!と人生の答えを教えてくれるなんて甘い考えだったのですが、
自分の意思で動き出したことには必ずご褒美がついてきます。
そしてそれは全く期待しなかったところからやってくる。

私にとってフェミニストとは社会学者の上野千鶴子さんだし
写真家の長島有里枝さんです。
幸運にもエネルギーと才能に満ち溢れた超かっこいい女たちに出会えたことで、
逆に私は私にしかなれない、とにかく自分のままで自分のフェミニズムを
つくっていきたいと思うようになりました。
40歳になった時、今一番怖いけど一番やりたいことを始めようと思いました。
私の場合それは結果を恐れず自分を表現することだったのですが、
そうして自費出版した雑誌『FLOWER』は、
花と女の人生をテーマに「誰もが自分の人生の舵を取って生きていけるような
ちょっとだけ新しい日本を夢みて」というコンセプトを掲げています。

『FLOWER』は当初、雑誌ではなく一冊の写真集を予定していて、
この壮大な(笑)コンセプトからはまったく想像できない
予算の少なさで一冊だけつくって終わる予定でした。
ところが撮影を始めてみると、表現したいことが思っていたようにうまく表現できなかった。
これは相当落ち込みました。どれだけ悔しいと泣いたって(泣いてませんが)、
私の実力は今までの積み重ねであって、急につくはずもなく……。
「実力がつくまではもっと経験を積みたい。
写真集ではなく不定期で発行する雑誌ならそれができるかもしれない」
急遽作戦変更し、『FLOWER』に「0issue」のテキストを付け足しました。
そうしてやってきた発売日。
ドラマのような展開はまったく起きませんでしたが、
今でも途切れることなく少しずつ地味~に部数を増やしています。

『FLOWER magazine 0issue』

そしてここでもまた思わぬご褒美がやってきます。
ある夜『FLOWER』を見てくださったスタイリストの近田まりこさんから連絡があり、
一緒にお酒を飲むことになったのです。
近田さんはセンスとユーモアの塊みたいな人で誰だって彼女を愛してしまう。
ファッション界の超かっこいい女なのです。
大先輩を前に緊張のあまり飲みすぎて失礼な発言をしたりしないだろうか。
楽しいと思ってもらえる話ができるだろうか。
といった不安もあったのですが、
カッコいい女になれる秘密が分かるかもしれない。
完璧に見える大先輩のダメな所が見つかって安心できるかもしれない。
とにかく好奇心の方がいっぱいで、めちゃくちゃ楽しみにしていました。

夕方から終電近くまで、6時間くらい飲んだでしょうか。
結論から言うと、
近田さんは子供の頃からかっこいい。以上!
飲み始めて速攻、3分くらいで「あー、私は私にしかなれない」と分かりました。
ヒントや秘訣なんて考えていた自分が、心底アホらしい……。
アホらしくなった私の頭は空っぽになり、ただただ楽しい時間を過ごしました。
帰りの電車の中で、私を取り巻く世界は何も変わっていないにも関わらず、
なぜだか急にワクワクしてきました。
昔も今も自分に自信を持てないままだけど、
この先弱気になって何もしない時期があったとしても
いつかはなんとか起き上がり、グダグダ文句を言いながらも
逃げずにやっていくんじゃないかと思えてきたのです。

私は今までずっと自分には何かが足りないと思って生きてきたような所があるので
今回のテーマ「生活をつくる」と言われると「自分以外の人間になろうとする努力」をしてしまいそうになります。
上野さんになろうとしたり、長島さんになろうとしたり、近田さんになろうとしたり忙しい。
そのどれもがトンチンカンな努力だということが、いい加減やっと理解できるようになってきたのですが、
ここにくるまでに40年以上もかかっているのです!(笑)
それでも私は私にしかなれないと心底納得した時のあの不思議なワクワク感は、
たぶん私の人生の道しるべであり、根っこになっていく。
そしてこの先も、ちょっと不細工な私をずっと勇気づけてくれる気がします。

PROFILE

河村敏栄
河村敏栄

MAG BY LOUISE オーナー・ FLOWER 編集長
代々木上原に店舗を構えるMAG BY LOUISE、2017年10月より
花のレッスンやワークショップに加え様々なイベントを行う場として
新たな形態での営業をスタート。インディペンデントマガジン『FLOWER』を2018年3月に創刊

INFORMATION

リリース情報
『FLOWER magazine 0issue』

価格:2,700円(税込)
花とアートと女の人生をテーマに、尊敬するアーティストたちの力を借りて インディペンデントマガジンを創刊しました。誰もが自分の人生の舵を取って生きていけるようなちょっとだけ新しい日本を夢みて、小さな一歩となりました。
LOUISE BOOKS

誰もが自分の人生の舵を取って生きていけるように/河村敏栄

SHARE!

誰もが自分の人生の舵を取って生きていけるように/河村敏栄

She isの最新情報は
TwitterやFacebookをフォローして
チェック!

RECOMMENDED

LATEST

MORE

LIMITED ARTICLES

She isのMembersだけが読むことができる限定記事。ログイン後にお読みいただけます。

MEMBERSとは?