今すぐモテるテクニック4選/垂水萌

恋愛市場はひっくり返して、新しい国をつくろう

2018年11月 特集:モテってなんだ?
テキスト・撮影:垂水萌 編集:竹中万季
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初めましての方は初めまして、垂水と言います。予めお伝えしておきますが、この記事を読んでいただいてもモテ力の向上は一切お約束できませんので、ご了承ください。さて今回は「モテ」に苛まれ、頭を抱え続けてきた人間として、その戦いの歴史について書いてみたいと思います。

1.モテテクニックは神頼み

そもそも私は「モテたい」と思ったことなんかないし、モテとかわかんな〜い! とか言って、いきなり顰蹙を買い占めて市場を騒然とさせるところだったんですが、胸に手を当ててよくよく思い出してみたところ、全然「モテたい」って思ってました。思ってたどころか毎晩寝る前に神様にお願いしてました。家族の安全や世界平和や周囲の人々の幸福とかそういうのと並列して「神様、わたくし破茶滅茶にモテたいです」と祈りを捧げておりました。実感として神頼みはマジで効くので、正直これにかなうモテテクはないんじゃないかと思ってますが、それにしても私、なんでそんなにモテたかったんだっけ。

見てくださいこの凄く力になってくれそうな感じ

私が「モテたい」って神に直談判していたのは中学〜高校の頃で、今よりずっと「モテ」というのが人生の中の重要課題だった。中高生ぐらいの恋愛事情は「勝者総取り方式」みたいな感じで、要はモテると「モテる」ということで更にモテる。聖書におけるタラントンの喩え通りじゃん。

だれでも持っている人は更に与えられて豊かになるが、持っていない人は持っているものまで取り上げられる。この役に立たないしもべを外の暗闇に追いだせ。そこで泣きわめいて歯ぎしりするだろう。

『新約聖書』「マタイによる福音書」 25章29-30節

これを読むと、「モテる」=「持ってる」なのかな? という気配がしてるけど、それにしても追い出すことはなくない? 慈悲が無。とにかく「モテる人」にならないと、好きな人の好きな人になれない! 外の暗闇に追い出され、泣きわめいて歯ぎしりすることになる! と言う危機感が私をモテへと走らせた。激走した。

とは言え、努力が実って(あるいは神の恩寵によって)モテたらモテたで困ったことが出てくる。「モテる」というのは一般的に、複数の人/より多くの人から好意を向けられる事象のことを指しますよね。漁に喩えるなら底引き網漁のようなもので、目的としていない生き物をとってしまったり、海底環境を破壊したり、生態系にダメージを与えてしまうこともあります。これは倫理的に由々しき事態で、良心が痛む。イエス・キリストは「あなた方を人間をとる漁師にしよう」とか言ってたけど、底引き網漁はちょっとどうかな? ねぇ神様、私一本釣りがしたい。

2.モテテクニックはマス・マーケティング

モテコーデにモテヘアー、モテメイク、果てはモテる振る舞い・性格まで、「愛される女になる💝」ための指針は色々とありますよね。でもそれって「広範囲のユーザーに対して画一的な施策を行う」マス・マーケティングのようなものだし、それこそ底引き網漁だと私は思った。その上、とりあえず外の暗闇に追い出されない程度に無難にモテようとすれば、同じようなコーデ・ヘアー・メイク・振る舞い・性格の女子が大量生産されているから、ネットでは「量産系www」とか馬鹿にされる始末。えっ そりゃマス・マーケティングは大量生産と大量販売がベースにありますから、「モテ」と「量産系」は切っても切り離せないでしょうが。ふざけるんじゃないよ。こんなのやってられない、モテ工場をボイコットしよう。こうして私はモテストライキに突入していきます。

大学に入りモテのストライキに入った私は、変な服を着て、華やかな女子グループから距離を置き、一人でドストエフスキーを読み、地道にポケモンに努力値を振る日々。全然モテない、安心安全・悠々自適の生活である。読みたい本も観たい映画も大量にあるし、一人でいるの滅茶苦茶楽しい! そんな感じですっかり「モテ」を神に祈ることも無くなっていきました。だってモテとか恋愛のことばっかり考えてる女って馬鹿みたいだし、フン。とかスカしつつも、ラブストーリーは突然に。恋はするものじゃなく落ちるものとはよく言ったもので、『不思議の国のアリス』ばりにある日突然びっくりするほど落ちる。あれっ地球の裏側に出るかな? ってぐらい落ちる。

さて、恋に落ちたアリスは慌てて机の上にあった「Drink me!」と書かれた怪しい薬を飲みます。それは、「モテ」という名の薬。だって今のままだとそこにある恋という扉を通れないっぽいから、ここで再度、謎の薬に手を出すのです。でもどうしてでしょう? 「モテ」の薬を飲んだはずなのになんだか世界がチグハグです。ドアが全然開かないんですけど? 話が違くない?

3.モテテクニックはターゲティングとブランディング

冷静に状況を整理したところ、要するに私は需要と供給がマッチしていない。好いてくれる人のことは好きになれず、好きになる人には好いてもらえない! これが人類に課せられた罰なのか? アダムとイブがエデンの園を追い出されてからというもの、みんながみんなグルーチョ・マルクスのジョークに倣って「どうか私の退会をお許しください。私のような者を会員として迎え入れるようなクラブに、私はいたくありません」と泣いているのだろうか? 多分そうではない、何かがおかしい。おそらく、私に必要なのはターゲティングとブランディングだ。

①狙うべき市場はどこなのかを明確化する
②顧客は誰なのかを定義し、インサイトを深く理解する
③顧客の本質的ニーズ(顕在&潜在)はなにかをつかむ
④顧客のニーズを満たす価値(機能的、情緒的、精神的、社会的)ソリューションを創造する
⑤価値を持つコンテンツ(商品、サービス)の競争力、独自性を見極める
⑥競合対象、代替対象(同or異カテゴリーの商品、サービス)を確認する
⑦最適な提供価値を適切なタイミング、方法で伝達する
⑧マーケティング全体のシナリオ、仮説を顧客視点で描く
⑨シナリオに基づいたKPIを設定しPDCAを回す
⑩顧客に寄り添い、人間的な思いやりや気配りを大切にしてアプローチする

宣伝会議編集部編『マーケティング基礎』(宣伝会議:「デジタル時代のマーケティング担当者が守るべき10ヵ条」)

これ、そのまんまモテテクニックに転用できると思いますので、優秀なマーケターは大変モテるんじゃないでしょうか。モテたい人は是非マーケターを目指してくださいね。まぁ要するに、大切なのは「ターゲットを明確にして、その相手のことを考える」ってことっぽいですね、10か条のうち半分ぐらいは「とにかく相手を理解することに努める」って言ってるし。大切なのは顧客をよく理解するためのインサイト。……インサイト?? ちょっと落ち着いてほしい。インサイトが滅茶苦茶得意な……某少年漫画の……テニスが凄く上手な……バレンタインにチョコレートを62837個もらっていた某キャラクターのことを思い出しますね?

見える! 見えすぎるぜ!! キサマの『絶対死角』がな!! スピード・柔軟性・視野・反応速度などで死角を消そうとも関節や骨格が対応できない『絶対死角』を狙うことでキサマは反応する事すら出来ない そうこれが俺様の世界ーー跡部王国(あとべキングダム)

許斐剛『新テニスの王子様(5)』Golden age44 タイブレークへ(集英社:p123)

モテといったらやはりこの人

新しい国が生まれた……!!

4.モテテクニックは建国

直前に言ったことを即座に否定するような形になりますが、実は「恋愛市場」とか、モテや恋愛を市場原理や経済的なものに喩えるのは個人的に凄く抵抗がある。人間は売り物じゃないし、そういう視点で考えるのが癖になると、まるでモテる(=需要が高い)ことが人間の価値みたいに思えてしまうかもしれないから。そんなことで人間の価値を決められてたまるかと思う。それにそもそも恋愛って相互的な関係なんだから買い手と売り手が厳密に分けられるものではないのに、マーケ的な視点でモテ施策を進めていくのはなんだか「買われる対象」に自らなりに行くみたいで、凄くよろしくない感じがする。

家父長制と資本主義の悪魔合体みたいな「恋愛市場」はひっくり返していきましょうよ、もう、ね。そして新しい国を作ろう。「モテテクニック」の範疇を超えてきた気がしますが、恋とか愛とかに真剣に向き合うならそれぐらいのスケールで考えないと真摯じゃない気がする。だって人と人とが出会って、お互いを知り合って、関係性を作っていくんだもの。そんなの死ぬほど難しいに決まってる。

というのも、世界はそのつど新しい世界であるからです。用意された言葉やレトリックは、この不断に更新される世界を前にしては無力です。少なくともそこで人心を動かすことはできません。ただこれは「待ったなし」の対応ですから、それなりに場数を踏んでいないとうまくできません。失敗を恐れるとかならず失敗するし、逆に疑念を抱かなければいいというわけでもない。けっして簡単ではないんですね。でも自分を信頼することです。ふるいにかけられた知識や技法はかならず回帰して援軍となってくれます。だから肩の力を抜いて、世界を抱擁するような気持ちで、真正面から、「驚くこころ」をもって世界と向き合ってほしいですね。

大浦康介『誘惑論・実践篇』(晃洋書房:p221)

私もあなたもそれぞれ独立した国であり世界であって、どんどん更新されて変わっていく。だからマーケティング的な考え方も、巷にあふれるモテテクニックも、役には立つかもしれないけどそれだけで完結することはできない。

ひとまず私の現時点での「モテ」に対するひとつの見解としては、「とにかく目の前の人と真摯に向き合っていくしかない」ということ。恋愛は毎回相手が違うから前回得た教訓だって活かせないことも多いし、どんなに恋愛のことを考えたって毎回「その恋」は初めてで、結局いつまでたっても初心者だ。一般的な「モテ」という概念に対して私がなんとなくポジティブな気持ちになれないのは、多分あんまり「目の前の人のためのもの」っぽくないからなんだと思う。「その人」とするのが恋愛なのに、「その人」のことが抜け落ちたテクニックなんて何の意味があるんだろう。漠然とした不特定多数からのモテなんて気にしないで、安心して目の前の人のことを考えて、その人のことを大切にしていきたいものですね。

PROFILE

垂水萌
垂水萌

よく本を読みます。どうやら人生のテーマが愛のようなので何を考えていても大体愛を巡る話になるし、モテに関して人生を通じて苛まれ続けています。また、読書好きなことによって合コンでアドバンテージを取れた試しが無いことを気に病んでいます。「書を捨てるな、合コンに行くな」を標語に掲げ、安易なモテに流されず、よく本を読みよく学び、真実の愛をなんとかしたいものだなぁと思っています。

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