We are healthy soldiers!!
の合言葉のもと、「ホワイトレオターズ」 活動を、去年からはじめている。どんな活動かというと、自分なりの視点で、世に広めたい健康情報をぽつりぽつりとInstagramやFacebookにあげていくという、ただそれだけのことである。
見所は、白いレオタードを着たダンサー、後藤ゆうの肉体そのものの美しさを余すところなく写しながら、運動が苦手な人、普段身体を動かすことに積極的でない人でも、ちょっとやってみたくなる、真似したくなる簡単なエクササイズを紹介している動画だ。撮影をしてくれているのは、写真家の黑田菜月。
営利目的ではない。だれが、どんなふうに見てくれていてもいいから、もしこれを見て少しでも身体を動かす気になって、辛いと思っていた体の不調が良くなるなんてことがあったらいいなという、本当にボランティア的な気持ちではじめている。もちろん、やっぱり白いレオタードを着た後藤ゆうを撮りたいから撮ってる、というわたしの勝手な欲望もあるだろう。撮りたい欲望と、世に広めたい健康情報が、かけ合わさって、Instagramという誰に見られるか全くもって未知な場で、普段絶対に関わることのないかもしれない人の、あの筋肉、あの筋を、少しでも楽にしてあげられるなら、それってうれしいな! と心から思う。
ちなみに、わたしはダンサーとしても活動しつつ、基本的には映像作品をつくることをメインに行っている。映像をつくることと、踊ることには共通するものがある、なんて勝手に思っている。もともとは小6の頃から突如ダンスに目覚めて自宅で踊りはじめ、親に泣きついて地元に唯一あったダンス教室に通わせてもらい、ビヨンセの後ろで踊るようなダンサーになりたいと本気で願い、上京し、レッスンに明け暮れる日々を送っているような、体育会系女子だった。漫画『ガラスの仮面』が大好きで、ああいう血反吐を吐きながら、泥団子を食べながら自分の芸の道を極める姿に本当に憧れていた。だからたくさん訓練したし、身体もこき使って、汗もだーだーかいてきた。そういう生活習慣に、わたしの身体は慣れていた。もっと遠くに、もっと美しく、もっともっと! 自分の身体技術をより高めていくことばかりに、気を取られていた。というかそれしか考えることができなかった。
けれども、大学2年のころあたりに映像表現の面白さに気づいてしまった。で、いろいろあって今に至り、「ダンサー・映像作家」なんていう肩書きで自分のことを人に紹介するようになった。ダンスに明け暮れていた少女時代に、まさか自分が映画を撮ったり、映像作品をつくったりするなんてことは夢にも思っていなかったけれど、現に今は、映像表現を追求するのが面白くて仕方ない人になってしまった。
触覚映画《Grand Bouquet / いま いちばん美しいあなたたちへ》(ICCで2019年3月10日まで展示中)
米津玄師“Lemon”のMVではダンスを担当
さあそのシフトチェンジが、実は身体的にとても大変だった。というか今も大変なのだけれど、わたしの身体は、たぶん長時間座ったり、頭を傾げて本を読んだり、ものを書いたりするのに適していない身体だ(人類みんなそうなのかもしれない、でもわたしの場合特にひどい、きっと)。高校のときから授業を受けるだけで肩こりがひどかったし、一時間同じ場所に座らされているだけで言い表しがたい苦痛があった。なんと言ったらいいのか、休み時間になったらすぐに起立して、筋肉が痙攣するほど伸びをしなければ気持ち悪くてしょうがなかった。
そんな自分が、映像の編集のために集中して長時間パソコンの前でずっと同じ姿勢で作業をし、撮影がはじまったらはじまったで、不規則な食事、生活を余儀なくされる道を選んでしまった。ずっと健康的に汗をかいてきた身体はどれだけ驚いたことだろう。すまん! ってかんじだが、こればっかりはどうにもならない。
何年か経って、さすがに身体と精神の不調を感じ始めた頃に、ありきたりな展開だがヨガをはじめた。すっかりはまってしまって、ヨガに関する本や資料も読み漁って精神面からヨガに浸ろうと考えた。そこで行き着いたのが『骨盤にきく』(片山洋次郎著)だ。実は、片山さんはこの本ではヨガについてなどなにひとつ書いていなくて、主に骨盤の弾力を高める重要性について書かれている。弾力がある骨盤というのは、力をいれたらぎゅっと縮み、力を抜くと、同じ分だけきちんとゆるむことのできる骨盤のことだ。力を入れることばかりしていても、抜くことばかりしていてもだめ、どちらも同じバランスで、骨盤が伸び縮みし、身体全体が深く呼吸できるようにする大切さを説かれた本だった。
なにに感動したかというと「ゆるむこと」の大切さである。それまで自分の身体能力を高めることばかりに気を取られていたわたしにとってそこは全くの盲点だった。ヨガの話に戻るが、そもそもヨガや瞑想などを行うときのモチベーションに、「健康になりたい」とか「綺麗になりたい」とか、目的を持つこと自体がナンセンスなのだそうだ。目的を持たずに、ただ自分の基準で、自分のバランスを整えること。移ろいがちな感情や思考を一旦フラットにする時間をつくること、ただそれだけである。
わたしはこれまで、うまく身体を動かせるようになりたいとか、なにか目的をもって身体を動かしてきてしまった気もする。成長しない未来なんて、ありえない。そんな恐ろしい思考だったのかもしれない。片山先生曰く、重い病気で死ぬ間際にある人の骨盤は、整えるよりも、ただゆるめる方向に調整していくのだという。そのほうが、死ぬ前の体でもずっと楽らしい。死ぬことにあらがうのではなくて、死、老いを受け入れて、痛みや苦痛や不調も全部受け入れて、それとどう付き合っていくのかを考えることも生きることの積極的な意味につながるのだ。
そんな当たり前のことを知って、ああ、この情報、いろんな人に知ってほしい、と強く思った。世の中に健康情報なんてもうゴマンと溢れているんだろうが、それでもわたしは片山さんの本を読むまで知らないことがあった。気づけないこと、実感できないことがあった。だから、純粋に本の内容やエクササイズを広めたい、という気持ちでホワイトレオターズ活動を始めている。
思うのだが、身体というのは、生まれてから死ぬまでずっと息をしているのに、きっと一度だって、同じ呼吸はできない。全く同じように肺をふくらませて、全く同じ空気量を同じ時間吸って吐くということは、人間には無理なはなしだと思う。これは、わたしが踊りをやっているから強く実感することでもある。仙人みたいな人ならできるのかもしれないけれど……。でも普通の人は、だからこそ、調整が必要なのだと思う。調整の基準は、人ではなく自分で。これが一番難しいけれど、日々自分の身体に気を遣っていれば、調子のいい日、悪い日も見えてくる。その自分の身体に自分でちょいちょいとツッコミをいれられるようになって、短い時間でも労ってみる。ああ首よ、二の腕よ、骨盤よ。ありがとう。
そう思えるかもしれないシンプルなエクササイズを、「ホワイトレオターズ 」にて広めています。これからも、続けていきます。よろしくお願いします!!!
※注:12月特集「それぞれのヘルシー」のメインビジュアルにもなっているこのエクササイズは、訓練を受けたダンサーが行なっています。安易に真似をするのは危険なので、絶対にやめましょう。