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身体と別れる想像/佐藤麻優子

ネットは身体が選べるようになった未来の世界のβ版かも

2019年2月 特集:美は無限に
テキスト・撮影:佐藤麻優子 編集:竹中万季
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未来を想像するのが好きだ。
そのせいなのか、サイバーパンクや1960年代のレトロフューチャー、1990年代のサイバー感のあるファッションなどの世界観にとても弱い。
この場を借りて、そう遠くない未来、美の価値観がどう変化してゆくのかを、個人的な希望も含め想像していきたい。
自分は女性性としてここまで生きてきたため、一女性性の目線として書かせてもらおうと思う。

老いについて

これまで私は年をとることに強い恐怖を感じていた。日本にいると海外よりも年をとることが許されないという気分を感じる。日本の場合は特に、ティーンのような見た目の方が良しとされることが多く、年齢に関する会話をする場面も多い。そして若さが、まるで個人のアイデンティティやステイタスのようにメディアで紹介されることも多い。様々な要因はもちろんあるだろうが、これは日本人男性の女性に対する好みが強く反映された結果でもあるのではないかと自分は想像する。私が生きてみてきた限り、若く見えた方が女はモテるのだ。

そのためなのか、自分も含め若い容姿でいようとする人は多い。「モテ」を気にしていない人でも、無意識下に若い見た目であることが良いことだと思っている人は多いのではないだろうか。

「人からモテるため」をポリシーに若さを保持しようとする人も、「若い見た目の自分の方が好きだから」若さを保ちたい人も、逆に若さを求めない人も、自分の求める状態をキープすることは、現在のシステム(生身の身体)ではどちらにせよ難しいように感じる。

それを自由に手に入れられるようになるには、サイボーグやバイオテクノロジーの発達が不可欠だ。そう遠くない未来、『攻殻機動隊』や『カイバ』などのアニメ作品のように、自分の好きなボディを手に入れることが可能になるかもしれない。(もちろん賛否両論はあるだろうけれど)。

出産について

そもそも若さに魅力を感じるのは、健康な子孫を残せそうだからという、生物であるがゆえの生殖本能の影響は否めないだろう。

偏った意見であるとは思うが、個人的には将来、SF作品に出てくる出産ポッドのように、身体と切り離した別の方法での出産が可能にならないかなあと思う。もしくは男女関係なく、産みたい人が産めるというシステムになればいいのになと願う。出産は現状、残念ながら女性の生き方を決める上で大きく関わってくるのだ。

容姿と身体の自由について

正直、この世の設定では容姿は人生に絶対的影響を及ぼす。もしもこの世がゲームだとしたら、キャラの見た目がランダムガチャで決められてしまい、選択することも再度ガチャを引くこともできないというクソゲーだ。課金してカスタムすることもできるけれど、ゲームと違って身体的リスクを伴う。

わたしは無宗教だということもあり、個々が好きなボディを選べるようになることは豊かなことに感じる。サイボーグになることができたら、容姿だけではなく、怪我や病気に苦しむこともほとんどなくなるだろう。また、きっと人生を終えるタイミングも自分で選択できるようになるのではないだろうか。もしも顔が、身体が、スマートフォンアプリのカスタムキャストみたいに細かく選べるようになったとしたら。街行く人みんなが自分で選んだ顔、身体をしてることになる。人によってはファッションのように、気分に合わせて容姿を変える人もいるかもしれない。

もちろん、老化が進み、容姿の選択が縛られているからこそ学べることや、 豊かさや面白さがある部分もたくさんあるだろう。しかし、もしも容姿の印象に縛られることがなく、つまり男女の身体の違いにも縛られることがなく、個々がありのままの精神的状態で他人とコミュニケーションをとれるようになったら。それは、身体的な部分に影響をされない、ある意味とても精度の高いコミュニケーションになるのではないだろうか。

今は写真や画像、映像など、画面の中ではある程度自由に変身することができるようになった。声だって機械やソフトを通せば加工して変えることができる。もしかしたら今現在のインターネット上での人との交流は、身体が選べるようになった未来の世界のβ版のようなものなのかもしれない。

PROFILE

佐藤麻優子
佐藤麻優子

写真家
1993年3月7日 東京生まれ、埼玉県育ち
専門学校 桑沢デザイン研究所中退
第14回写真「1_WALL」グランプリ
個展に「ようかいよくまみれ」「生きる女」など
グループ展に「代官山フォトフェア2017」、「dix vol.3」など
主に人物を被写体とし、現実から数センチズレたような違和感を感じさせる作品を制作"

身体と別れる想像/佐藤麻優子

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