懐かしの花火、噴出花火、変わり種花火
・長谷川商店オリジナル「神炎」
今回花火を購入した「長谷川商店」では、卸だけでなくオリジナル商品の販売も行なっています。「神炎」は2018年の新作で、炎の噴出に緩急があり、鎮火するかと思うと再度激しく吹き上がるという運動を繰り返すことがめずらしく、見ている者は思わずはしゃぎ声を立ててしまうユニークな花火。噴出の高さや燃焼時間、音の大きさをパッケージに記載することで、花火をもっと身近なものとして手にとってもらいたいという店主の願いが込められています。
・「ニュードラゴン」
1949年から59年間愛されるも、安価な外国製品の登場や材料費の高騰により2008年に製造中止となっていた「ドラゴン」ですが、この商品を開発した花火メーカー「太田煙火製造所」のクラウドファンディングにより、2017年夏のみ限定50,000個で復刻を果たしました。
近年よく目にする大型の商品と比べると随分小ぶりですが、その見た目からは想像できない高さまで吹き上がる炎に驚かされます。それでいて、噴出花火でありながら上品な印象も。絶妙なバランスを目の当たりにして、多くのファンを有する理由に納得。
・台燈(パンダ電気スタンド)
中国でつくられた古い噴出花火で、灯篭のてっぺんから火花が噴出。透かし窓になっている部分があり、火薬が燃焼している間は灯篭に明かりが灯された状態となってぼんやり内側から光るのですが、意外な場所に遊び心を発見したことが嬉しく、心が温まりました。まさか噴出花火で「心が温まる」ことがあるなんて。線香花火などのいかにも繊細なものに比べ、噴出花火は火遊び的な側面の強い商品だと考えていた自分が、少々恥ずかしくなりました。細くなっている足元部分に抱きつくパンダも愛らしい。火花以外の細部までその全てが見どころという、なんとも贅沢な花火です。
・手持ち花火「たこおどり」
1本の足に点火した後、時間が経つとほかの4本の足がはじけるように広がり火花を豪華に散らす。持ち手部分とタコの頭との間にバネが付いていて、揺らして遊ぶとまるでタコが踊っているようです。視覚的な仕掛けのあるこの花火は、小さな子どものいる家庭では特に人気を博すのではないでしょうか。吊るされたタコのイラストの根元部分まで燃焼を続けるので、長時間楽しむことができる優れもの。
コーディネーターのいるバラ売り花火問屋、「長谷川商店」
今回これらの花火を購入したのは、東京・浅草橋にある問屋、「長谷川商店」。季節によって「ひな人形」「五月人形」「鯉のぼり」「クリスマス」などを扱っており、花火屋になるのは6月上旬から9月下旬のみというユニークなお店で、店内約500のバラ売りの花火を全て把握しているスタッフが優しくアドバイスをしてくれます。
花火を行う人数やシーンや予算を伝えると、まるで花屋の店員が花束をしつらえるかのように、一本ずつおすすめの花火を選んでくれるのみならず、町会やお祭りなど大人数で花火を行う場合、プログラムや火の付け方など効果的な演出のやり方をコーディネートして伝授してくれるのだそう。彼らの手を借りれば、自らミニ花火大会を開催することもできてしまう。
長谷川店主によると、コンビニなどで売られているパッケージの花火には燃焼時間の短いものや、こだわりに欠けるものが比較的多いそうですが、現在、市場に出回っている花火の9割以上が中国をはじめとする外国産で、原材料すら外国産に頼らない純国産花火は約2%とごくわずか。バブル時代のニーズに国内生産だけでは応えきれず、中国に製造を頼り品質向上のため技術指導を行ってきたものの、経済の変化や少子高齢化、場所の問題などから次第に花火の需要は減少。国産よりも安価な外国産が主流となり、純国産の花火ではコストが合わないことから、国内生産であっても海外の原材料を用いるメーカーも多く、なかには廃業する会社も多い状況です。そんな時世の中で「筒井時正玩具花火製造所」のように技術を受け継ぐことで未来に繋げようとしているメーカーや、「長谷川商店」のような存在は、たゆまぬ研究や努力を経てやっと成り立っている奇跡のような存在なのだと思います。
「長持ちする線香花火」を求める声に、「花火は落ちるもの、そこが色気だよ」とカラッと笑う店主は、古き良き江戸を思わせる粋な人、花火への愛情がある人でした。気軽なものには気軽なものの素晴らしさがもちろんあるけれども、よりどりみどりの魅力的な花火を一本ずつ選り抜く楽しみというものも、確かにある。自らの手でじっくり選んだ花火の数々は、途中で惰性が混じったりせずに最後まで夢中で楽しめるし、一本ずつ時間をかけて楽しむ時間にはきっと風情も宿るでしょう。
残りの夏は、友人や恋人と、お気に入りの花火をトレジャーハントしてみてはいかがでしょうか。そこには今まで知らなかった花火体験がきっとそこに待っている。この記事が、誰かのひと夏のハイライトをつくる力添えとなりますように。
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