その香りが「好き」であることが、大切な要素
歯磨きや洗剤など、生活に身近な製品を生み出し続けているライオン。そのなかでも、香りに特化している香料科学研究所で柔軟剤などの香り開発を担当している高橋さんに、眠りにつく前の時間を過ごすためにぴったりな香りを提案していただきました。
「『この香りには、こんな効果がある』といった情報が、世の中には多くあると思います。でも実は、一般的な効能だけでなく、実際に香りを嗅いでみて「いいな」と思った香りを使うことも大切なんです。その香りが好きであることと、快適な時間を過ごすことには相関があるからです。とはいえ、膨大な香りの中から、効果があって、なおかつ好きな香りを見つけ出すことは大変なので、例えば心を落ち着かせたいというときには、鎮静効果があると言われる香りを数種類嗅いでみて、その中から自分の好きな香りを探すのもいいと思いますよ」
眠りたいからリラックスできるものを、という効能だけではなく、「好き」と感じられる香りであることも大事という高橋さん。しかし「『好きな香り』と一概に言っても、けっこう複雑なんです」と続けます。
「好きな香りには、いろんな要素が絡み合っています。じつは、好きなファッションや好きな色などとも関係性があります。ピンク色が好きな人はフローラル系の香りが好き、というように、無意識のうちに色と香りが相関している人の割合が多いことがデータにも出ています。今回は、それらの要素の中でも、夜眠る前にどんな時間を過ごしたいかというムードや気持ちと、香りのタイプをリンクさせていくといいと思います」
眠りにつくときのムードに合わせて選びたい、さまざまな香り
・一日を振り返るような時間を過ごしたいとき
たとえば「眠る前の数分間、恥ずかしかった出来事を思い出して『アー』と唸ってしまう」という藤原麻里菜さんや、「今日の私を肯定し、明日の私を励ましてもらう」という前田エマさんのように『一日を振り返るような時間』を過ごしたいのであれば、森林浴のときに出会うような香りがぴったりだそう。
「例えば、パインニードルの香りが挙げられます。パインニードルは森林浴をしたときの『清々しさ』を思い起こさせる香りで、一日にあった出来事を気持ちよく浄化します。また、今日起きたことは一旦忘れて、リラックスさせてくれる香りもいいと思います。代表的な香りに、ラベンダーがあります。ラベンダーは人によって好き嫌いがあるので、自分の好きな香りとラベンダーを掛け合わせるのもオススメですね」
こんな気持ちのときにオススメのアロマリッチ
・想像の世界に入り込みたいとき
「夜に幼い私や大人になった私、お婆さんになった私のことをぼんやり考えるのが好き」だというMICOさんのように想像の世界に入り込みたい人には、お花畑を想起させる香りがおすすめ。
「お花畑の香りは、非日常の情景をイメージさせてくれるものが多く、想像の世界のような、ワクワクするような香りといえます。例えば、ローズやジャスミンを組み合わせた香りがオススメです」
こんな気持ちのときにオススメのアロマリッチ
・一息つきながら自分をゆるませたいとき
また、エロをモチーフにしながらも、ピューっと爽快な風を感じさせるような漫画を選んだたなかみさきさんのように、一息つきながら自分をゆるませたいときは、キンモクセイの香りがオススメだそう。
「記憶と香りの研究の中では、懐かしいと感じる香りや、いい思い出をよみがえらせる香りは、気持ちを解放させてくれることがわかっています。キンモクセイの香りは、季節を感じ、多くの方にとっていい記憶や懐かしさに結びついている香りなんですよ」
こんな気持ちのときにオススメのアロマリッチ
・物事を深くじっくり考えたいとき
「せめて暗くなってからは、自分の想像の及ばない範囲にも手を伸ばしたい」という西加奈子さんのように夜の時間に物事を深くじっくりと考えたい人には、柑橘系の香りがおすすめ。
「シトラスやグレープフルーツなどの柑橘系の香りは、いい意味で緊張感を与えると言われています。物事をじっくり考えたいときにはぴったりですね」
こんな気持ちのときにオススメのアロマリッチ
カスタマイズも楽しい。一番身近な香りの選択肢、柔軟剤
Girlfriendsの選書を見て「眠る前の時間というからには、のんびり、ゆったり、といった香りのタイプしか出てこなさそうだなと思っていたので、それぞれ過ごし方がこんなにも異なるのは意外でした」と高橋さん。Girlfriendsからいろんなタイプの本があがってきたように、眠りにつくときに心地よく感じる香りもムードによっていろいろなタイプがあるのです。
一番大事なのは、自分の好きな香りをどのように香らせるかということ。アロマディフューザーやお香、スプレーなど、たくさんの方法がありますが、「柔軟剤を自分好みの香りにするというのは、日常に取り入れやすい、とても身近な選択肢なんですよ」と高橋さんは語ります。
「寝具にスプレーで香りをつけようとすると、手間が多くなってしまいますよね。柔軟剤であれば、日頃から行う『洗濯』という行為のなかで、自分の好きな香りをほどよく、長く香らせることができます。また、まくらカバー、布団カバー、ルームウェアなど、色々なアイテムに手軽に香りをつけることもできます。私が担当しているアロマリッチの場合は、混ぜ合わせてもいい香りとなる設計なので、自分の好きな香りをベースに、気分に合わせてカスタマイズしてもらえたらと思います。
たとえば『甘い香りが好きだけど、今の時期には重すぎるな』という人もいると思うんですね。そういうときは、ベースは甘い香りにしつつ、少し爽やかな香りを足してあげることで、そのときの自分にぴったりくる香りにすることができます。アロマリッチは気分で香りを変えたい人にも、自分好みに組み合わせることで、そのときどきの気持ちにフィットする存在でありたいと強く思っています」
柔軟剤を変えることで、アロマオイルを選ぶよりもずっと簡単に自分の好きな香りに包まれながら眠りにつけるかもしれません。元気なときも、ちょっと落ち込んでいるときも、今日がんばった自分にご褒美をあげるように、気分にぴったりの本を読んだり、好きな香りをまとったり、自愛の時間をつくってあげてみてはいかがでしょうか? 今日を大事に終えられれば、きっと、いつもより素敵な明日を迎えられそうな気がします。
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