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家族にはじめてのインタビュー。7人が家族に質問した記録と記憶

燈里、植本一子、枝優花、後閑麻里奈、野村由芽、堀静香、吉野舞

2019年5・6月 特集:ぞくぞく家族
テキスト:野村由芽
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インタビューをされる人というのは「有名」な人であることが多く、多くの人は正式に「インタビュー」をされることはありません。それに、親やきょうだい、祖父母という近い関係であればなおのこと、彼女ら・彼らの過去に触れるのはどこか気恥ずかしいもの。

だけどふと、自分は親同士が初めて会った場所を知っているのだろうか? などという疑問が頭をもたげて離れないのです。いうまでもなく、ひとりひとりには語られていない物語がある。その断片を集めることで、受け継がれ、さまざまに枝分かれしていく家族のかたちの一端に、触れられるような記事をつくれればと、「家族へのインタビュー」記事を企画しました。

参加してくださった燈里さん、植本一子さん、枝優花さん、後閑麻里奈さん、堀静香さん、吉野舞さん、そして野村由芽は、この企画に自主的に手を挙げた人たち。

・家族の関係性をつくっていくなかで大切にしていること

・これからも家族である私へのメッセージ

という共通質問のほか、それぞれが自由に質問を考え、家族だと思う人にインタビューをしてもらいました。そこに存在したものが、いつかなくなるまえに。聞いてみたかったことを、聞けるうちに。

・p.1:燈里⇔家事の中で料理を担当していた父
・p.2:植本一子⇔「彼氏」でも「新しいお父さん」でもない同居人・ミツ
・p.3:枝優花⇔祖母
・p4:後閑麻里奈⇔文通や電話を頻繁にする仲の祖母
・p5:野村由芽⇔運命の友達のような祖母
・p6:堀静香⇔結婚して2年経った夫
・p7:吉野舞⇔仏教の話をする父

燈里⇔家事の中で料理を担当していた父

燈里さん

年末に定期的に開かれている高校の同窓会に行き、約10年ぶりに高校の同級生に再会しました。思い出話で最初に出た話題は私のお弁当でした。当時偏食が酷かった私は、友達にお弁当のおかずを色々食べてもらっていたのですが、そのおかずがいつも外れなく美味しくて綺麗だった、あれを食べないなんて燈里は本当に贅沢だった! ということでした。私のカラフルで手の込んだお弁当を作っていたのが父親だったという意外性もあって、友人達は印象深く覚えていてくれたようです。

私の両親は2人とも同じ職種でフルタイムで働いてきたので、家事は2人で分担し、家計も割勘しています。家事の中で料理は父の担当です。毎朝5時に起床して作ってくれたお弁当には父の料理へのこだわりが表れていて、彩りや栄養バランス、食材、味付けをよく考えてくれました。今でも週末は春日の市場まで魚を買い出しに行き、午後から時間をかけて夕食を作っています。特に日本酒との相性を考えた魚料理は絶品で、帰国の度に楽しみです。これまで2年間生活してきた台湾では生で魚を食べる機会があまりないので、父の料理を思うとホームシックになります。

お弁当:五穀米ご飯、鶏肉とピーマンのカシューナッツ炒め、さつまいもの甘煮、ミニトマト、卵焼き、八朔

ドライカレー半熟目玉焼き乗せ、エビチリ、サヤエンドウのバター炒め、イチゴ

五穀米ご飯、ローストビーフ、筑前煮、焼き空豆、サラダ

冬の午後にカレーを煮込む父とお腹が空いた妹。

台所を毎晩欠かさずピカピカに磨いているのは母です。

・家族の関係性をつくっていくなかで大切にしていること
私:パパが家族の関係性をつくっていくなかで、大切にしていること。

父:ご飯作ること。食って大切だもん。食で繋がるでしょう、家族って。今はパソコンがあったりとかゲームもあって、個々で生活しているけれど、ご飯を食べる時ってそれができないじゃない? だから家族に向き合える時って夕飯の時だからその準備をするっていうのは大切なことだと思っているよ。

私:それを聞いてパパが一番好きだって昔紹介してくれた詩を思い出したよ、誰だっけ、あの戦前生まれの女性の台所の詩……。

父:石垣りん。『私の前にある鍋とお釜と燃える火と』。

私:料理楽しい?

父:家事ってやっぱり家事労働なんだよね、労働なの。それが趣味だとか楽しみだとか言う人もいるんだけど、やっぱり基本的には家事は単純労働だと僕は思ってるの。家事労働は皆で分担しなくちゃいけない仕事だと僕は考えてるの。

誰かがやんなくちゃいけないんだよね、家事労働って、文化的な生活のためには。文化的な生活というのは、清潔に暮らす、ちょっと美味しいものを食べられる、それから清潔な服を着る、とかそういう生活を送るためには家事労働はどうしても避けて通れないよね。

僕が料理をするのはその中で比較的やりやすいからだと思っているよ。まあ実際料理以外も何でもやってるけどね。快適で豊かな生活をするために家事はできる人がやるのが良いんじゃないかなあと思っているからやっているよ。

私:家事が労働だという考えなら、最低限やれば手を抜いても良いでしょう、でもパパの料理のこだわりと質はすごいよ。お金も時間も全然惜しまないでしょう。

父:まあそれはこだわる性格だからね。納得できるまでやっちゃうの。

私:これからは何を作りたい?

父:今まで作ったことがないものに挑戦したいね。一般的に皆が作っているけれど僕が作れないものを作れるようになりたい。春巻作りたいの。揚げ物で言うと、コロッケとかメンチカツとか。もう少しバラエティ豊かに作れると良いんじゃないかなって思ってるよ。

私:台湾は5月に同性婚が可能になって、当日に500組以上のカップルが結婚したよ。私のゲイの友達もレズビアンの友達も結婚できたの。台湾で家族の概念はこれから確実に変わっていくと思う。パパは同性婚についてどう思う?

父:そのニュースは日本でも聞いたよ。それはその人の生き方だから。同性婚だけの話だけじゃなくて多様な生き方を認めるということで狭い範囲に限らないと思うよ。差別をなくすためには大きな意味があると思うよ。そう自由には生きられないでしょう、日本は。だからこそ自由に生きようとしている人達を応援したいよね。

・これからも家族である私へのメッセージ
私:パパから、これからも家族である私へのメッセージを。

父:お説教になっちゃうね……早寝早起きをしなさいよ、とか。ご飯ちゃんと食べなよ、とか。

PROFILE

燈里
燈里

1992年茨城県生まれ。台北在住。千葉とフィンランドで教育学専攻・現代芸術理論副専攻を経て、現在は台北教育大学国際修士現代芸術課程に在籍。2012年から忘れる記憶の記録のためにスケジュール帳を作る。

植本一子
植本一子

1984年、広島県生まれ。2003年、キヤノン写真新世紀で荒木経惟氏より優秀賞を受賞し写真家としてのキャリアをスタートさせる。広告、雑誌、CDジャケット、PV等幅広く活動中。13年より下北沢に自然光を使った写真館「天然スタジオ」を立ち上げ、一般家庭の記念撮影をライフワークとしている。著書に『働けECD わたしの育児混沌記』『かなわない』『家族最後の日』、共著に『ホームシック 生活(2〜3人分)』(ECDとの共著)がある。

枝優花
枝優花

1994年3月2日生まれ。群馬県高崎市出身。映画監督、写真家。映画のスタッフをしながら、監督を務めた映画『少女邂逅』が新宿武蔵野館を始め全国公開が決定している。第42回香港国際映画祭に招待される。またSTU48デビューシングル「暗闇」のMVを監督も務めた。そして今年の夏には山戸結希監督企画の映画『21世紀の女の子』で再びメガホンを取る。また雑誌「装苑」にてコラム「主人公になれない私たちへ」を連載中。

後閑麻里奈
後閑麻里奈

尾道在住。広島空港内にある、ヴィーガンミルクチョコレートファクトリー「foo CHOCOLATERS」工場長。女性・クィア・トランス・ノンバイナリーに向けたプロジェクト「GRRRDEN」を始動。不定期でzineの発行やDJイベントを開催している。アンダーウェア・プロジェクト「Kiss Your Grrrden」やzineなどの個人制作物を主に扱うミニショップ兼インフォスペース「Virgo Stingray」もマイペースに活動中。

堀静香
堀静香

1989年よこはま生まれ、よこはま育ち。歌人集団「かばん」所属。本州のはじっこで短歌をつくりながら、哲学者の夫と、そして最近うちに突然やってきたムーミンとともに、三人で楽しく暮らしています。twitterやnoteでその暮らしを綴っているので、読んでいただけたら嬉しいです。

吉野舞
吉野舞

1995年秋生まれ。兵庫県淡路島出身。この春、武蔵野美術大学空間演出デザイン学科卒業予定。
やりたいことをやりたいと思った時に、すぐにやらないと自分を裏切ったようで落ち着かないので、興味があることは、何でもやろうと思います。
書くことは、やりたいリストの一番上。座右の銘は「人生の大体の出来事は、自分のせいで人のおかげ」。肩書きはまだ、ないです。今、東京。

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