小泉綾子:レコードと生きる
レコード屋に来るお客はたいてい人生を懸けた収集狂ばかりで、その執念たるやすさまじく、働いていた頃、私は日々気圧されながら仕事をしていた。
店を辞め自宅に仕事部屋を作ったが、店で働いていた頃と変わらず、一日中レコードをかけている。
こつこつ買い集めたレコードが棚に少しずつ増えていくのを見ると、嬉しくなる。
集める、そろえる、眺める、愛でる、はぐくむ。
一方的に愛情を注ぐことの楽しさが、最近になってやっと少しだけわかってきた。
物に対する愛情は、達成感と安らぎとして自分に返ってくるということ。
神保町の輸入レコード店で働いていた時に、初めて社割で買った旧ソ連のレーベル「MELODIYA」のレコード。
タルコフスキーの『惑星ソラリス』で印象的だった、バッハのコラール前奏曲。
しょっちゅう聴いている。
小学生の頃、命の次に大切にしていたサンリオカード100枚を、ある日突然、親にまるごと捨てられてしまった。
それ以来、手に入れた時の高揚感と失うのではないかという恐怖が、いつも隣り合わせにある。
雑多で無秩序なレコードの棚には、それなりの歴史と愛着があるけれど、コレクターには一生なれないだろうなと思う。
4月にあったShe isのイベント『お花見蚤の市』で買ったテンテンコさんのEP『なんとなくあぶない』はめちゃくちゃに最高です。
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